秋と刀と魚 | 千歳日記

千歳日記

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私は早くないと思う派!

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長月も半分以上が過ぎました。

今日は汗が出るくらい暑い日でした。

それでも夏とは違い、照りつける陽射しは少し柔らかく、汗ばむ首筋を涼しい風がそっと撫でて行きます。

今年も残暑が厳しいとの声もありましたが、気候はすっかり秋ですね。

なかなか残暑が和らぐ事無く過ぎた昨年の秋に比べ、今年は通年通りに秋が訪れたように感じます。

ぼんやりしていては風邪をひいてしまいます。

お天気が続いている間に、少しずつ冬支度も始めないといけませんね。

市場には所狭しと秋の味覚が立ち並んでいます。

秋の味覚を楽しむなんて贅沢は出来ないので、私は目と香りで秋を楽しんでいます。










「雪村さんじゃない?」

声をする方を振り向けば、笊を持った伊東さんが上機嫌で立っていました。

「うふふ…秋刀魚を手に入れたのよ。今から七輪で焼くと・こ・ろ。雪村さんも一緒にどう?」

「いえ、私は遠慮しておきます。それよりも近藤さんをお誘いしてはいかがですか?ちょうど外出から戻られた様子ですし」

「そうね~そうしようかしら♪」

(秋刀魚か…。大好物なんだけど、贅沢出来る身分じゃないし。そうだ!煙が上がる前に洗濯物を取り込んでしまおう。煙の匂いがついちゃう)

洗濯物を取り込み終えたと同時に、秋刀魚の焼ける香ばしい香りが立ち始めました。

隊士さん数人が秋刀魚の香りに気づき、ざわざわと騒ぎ始めるものの、秋刀魚を焼いているのは新選組の参謀である伊東さんです。

お相伴にあずかりたくても出来るわけがありません。

(あ~秋刀魚美味しそうだな~。でも無視!無視!無心になれば気にならないはず!)

「…」

無心でひたすら洗濯物をたたんでいると、気のせいでしょうか?誰かに呼ばれた気がしました。

「土方さん…かな?」

廊下に出ると、やはり誰かが私の名を呼んでいます。

「あっ…もしかして私…大切な頼まれごとを忘れてたとか?」

急いで声のする方に駆け出すと、私を呼ぶ声は叫び声に変わりました。

「雪村さーん!たったっ助けて頂戴!」

「伊東さん?」

(秋刀魚を焼いてる火が着物に燃え移ったとか?急がなきゃ!)

途中で会った隊士さんに桶に水を入れて持ってきてもらうよう頼んだ私は、大急ぎで伊東さんの元へと駆け出しました。

「伊東さん、落ち着いてください!」

「落ち着いてなんていられないわよ!嫌!嫌!い~や~ね~こ~」

「ねこ?」

顔面蒼白の伊東さんの側には一匹の猫がいました。

猫は七輪の上の秋刀魚に手を伸ばし…しかしすぐに熱くて手に取れない事に気がついたようで、伊東さんの持つ笊を狙い始めました。

「私は美味しくなんか無いわよ~」

「伊東さん、秋刀魚です。その笊にある秋刀魚を猫は狙っています。笊を手放してください!」

「なんですって!獣に食べさせる秋刀魚なんかなくってよ!しっ!しっ!あっちへお行き!」

当然の事ですが、伊東さんの台詞が猫に届くわけもなく…

しゃーっ!

「きゃー!」

飛びかかった猫に驚いた伊東さんは笊を放り投げ

ぺちっ

「あっ…秋刀魚が!」

地面に落ちた秋刀魚を横から別の猫があっという間に咥え

「お待ちなさい!この…泥棒猫!」

次の瞬間には、伊東さんを狙っていた猫もあっという間に居なくなってしまいました。

「…」

「…」

(煙にまき 刀及ばぬ 秋刀魚かな…)

やはり秋の味覚は食さず、遠目に眺めているくらいがちょうど良いみたいです(苦笑)



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