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江戸と京では文化が違います。
特に食べ物がそうです。
新選組の皆さんはそれぞれ出身国が違うため、京の味付けに馴染めず苦労している人は少なくはありません。
永倉さんは立ち食い蕎麦を食べに行くたびに「京の蕎麦は味気なくて食った気がしねぇ!」と言いながらおかわりを何杯も…単にたくさん食べたいだけかもしれませんね(笑)
私は白味噌の味になかなか馴染めずにいます。
たまに食べるにはいいのですが、とにかくお味噌汁が甘くて…白味噌のお味噌汁が出た日は心の奥底で
『今こそ隣の永倉さんと平助君は激しくおかずの取り合いをすればいいのに。肩がぶつかって私がお汁椀を思いっきり飛ばしたとしても、お味噌汁全部を畳にぶちまけたとしても、土方さんに煩いと怒鳴られたとしても泣く事なく、「食事中は静かにしてね」とそこそこ笑って済ませられるのに』
なんて事を考えてしまいます。
そう上手くは行かないのが世の常で、好物の豆腐となめこのお味噌汁の時に限ってあの二人が大暴れをして…あぁ、お話が日記のねたからかけ離れてしまいました(苦笑)
京の食べ物の中で、美味しくて感動したものが一つあります。
桜餅です。
江戸の桜餅は、桜の花びらのような薄い皮に餡を巻き込んだものです。
京の桜餅は道明寺という、もち米を粗く挽いたものを蒸し、この中に餡を入れます。
見た目が私の知る桜餅とまったく違うため、最初に口にした時は酷く躊躇しました。
でもぱくりと一口口に入れると…

「美味しい…」
「でしょ?遠慮しないで、好きなだけ食べていいよ」
いつも私に意地悪な事を言う人は、この日は珍しく優しい言葉をかけてくれました。
「…私を太らせて食用にするおつもりですか?」
「うん、良くわかったね」
「沖田さんこそしっかり食べて、肉を付けた方が良いのではないですか?」
「僕は今のままでも十分役に立つけど、君は何をしたって役に立たないじゃない?君が僕らの役に立つにはどうしたらいいかって聞いて来たから、だったら食肉になると良いんじゃないって答えたんだけど?」
「くぅぅぅ…」

言い返したいけどこれ以上言葉が浮かばなくて、苦々しい思いでいっぱいなのに口にしている桜餅は甘くて…
悔しくて悔しくて睨み返した先にいるその人は薄く笑っていて…悔しいけれどその笑顔が桜の花みたいに綺麗だと思ったのでした。