本殺し 半殺し | 千歳日記

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好きなおやつか…迷います(笑)

基本的に小豆を使ったおやつが大好物なので、大福、おまんじゅう、それからぼたんもちですね。

ぼたんもちは【おはぎ】とも呼びます。

春は【ぼたんもち】で秋は【おはぎ】という説もありますが、お住まいの地域により多少の違いがあると思います。

こしあんが【おはぎ】で粒あんが【ぼたんもち】だとか、大きさの違いで分けるとか。

双方を漢字にすると【牡丹餅】と【お萩】、どちらも小豆の粒を季節の花に見立てた事が名前の由来となっています。

小豆以外にも、きなこや胡麻をまぶしたぼたんもちがあります。

これが日蓮聖人が処刑されるための護送中に、桟敷の尼が最後の供養にときなこと胡麻をまぶした牡丹餅(あんこを作る時間がなかった)を作り献上したという事が発祥のようです。

そして処刑が執行されようとしている時、死刑執行人の刀に雷が落ち、執行人も役人も倒れてしまい、日蓮聖人は死刑を免れ、後日佐渡へと流刑となったそうです。

ぼたんもちでこんなにすごいお話があるなんて…。

でも胡麻をまぶしたぼたんもちなら、きなこの方が断然美味しいと思うんです。

そして中はあんこ入りの方が絶対に美味しいです!










勝手場から沖田さんと島田さんの声が聞こえてきました。

(沖田さんと島田さんの組み合わせって珍しいかも。あ~甘いもの好きって共通点があるからかな?)

「沖田さん、駄目ですよ。それでは【本殺し】です。これは【半殺し】にしないと」

「僕は十分加減してやってるんだけど?」

「全然加減出来ていませんよ。もっと優しく…」

「くす…これ相手に優しくも何もないんじゃない?」

(本殺し?半殺し?かっ勝手場でなんてことしているの!?)

「やめて!沖田さん!お願いします。助けてあげてください!」

慌てて勝手場に飛び込んだ私が目にしたものは…

「…なんですか?それ?」

沖田さんと島田さんは刀でも包丁でもなく、お鍋と擂り粉木を手にしていました。

「見てわからない?単なる蒸したもち米だけど。もち米を助けろなんてさ、君とうとう頭がおかしくなっちゃったんじゃない?あはははは…元々ぼーっとしてるし、さほど変わらないか!」

「沖田さんに任せたら、全部のもち米を本殺しにされてしまいそうなんです。それでは餅になってしまいます。やはりぼたんもちは半殺しにしないと。ですよね、雪村君?」

「半殺し?本殺し?なんですかそれ?」

「あれ?知らないんですか?世間一般的な言葉だと思っていたのですが。【半殺し】と【本殺し】というのは…」

島田さんの言った半殺しと本殺しとは、【死ぬくらいまでの状態に痛めつける事】と【死に至らしめる事】ではなく、【もち米の粒が残るくらいにすり潰す事】と【もち米の形がなくなるまですり潰す事】でした。

無知…無知故の恥…・

穴があったら入りたいくらいですが、島田さんが「こんな物騒な言葉お菓子作りに使うとは、可笑しな話ですね」と駄洒落で場を取り成してくれたので、私も笑って忘れる事にしました。

さて、私は一向に笑いが収まらない沖田さんを無視して、ぼたんもち作りのお手伝いをする事にしました。

出来上がったぼたんもちを振舞う頃には、何故か先ほどの話が皆さんの耳に届いて…私は感謝の笑顔と失笑を同時に浴びる事となりました。





補足ですが

【本殺し】は【皆殺し】とも言うそうです。

これは「勘違いして恥掻かねぇように憶えとけ」と、笑いを堪える土方さんに教えていただきました。

聞くは一時の恥

聞かぬは一生の恥

でも、掻いた恥は長きに渡り笑い話にされるのです(苦笑)