誰よりもきっと 【SSL】 | 千歳日記

千歳日記

この先にある未来を…

たとえどんな未来でも私は見届けてみせる

最後まで…必ず

日本で一番かっこいい人 ブログネタ:日本で一番かっこいい人 参加中
本文はここから



今回の日記はSSLのため現代口調となります



今日は変わった宿題が出た。

【日本で一番かっこいい人】は誰か?八百字以内にまとめよ

「………」

まるで小学生の作文の課題みたいって思ったのは私だけだろうか?

でも出されたものは提出しなくてはいけない。

しかも提出期限は今日。

だから私は放課後の教室で一人頭を抱えていた。

「千歳、まさかお前…補習を受けさせられているんじゃないだろうね?」

顔を上げると冷たい視線を向ける薫と目が合った。

「あっ薫、違うよ。これは宿題。【日本で一番かっこいい人】は誰かってテーマで作文を書かなきゃいけないの。かっこいいの意味をどう捉えるか…それが難しくってね…」

「ふっ…そんな簡単な課題で悩むなんて、本当にお前は馬鹿なんだね。お前に一番良くしている人の事を書けばいいだけじゃないか」

目の前でふんぞり返る薫を見つめて、また頭を抱え直した。

(薫は「兄が日本で一番かっこいい」って書いて欲しいんだ。どうしよう…確かに良くはしてもらってるし、兄らしくかっこいい時もごくたまにあるけど【日本で一番かっこいい人】じゃない。それに薫は【かっこいい】より【かわいい】部類だし…)

「愚兄が目の前に居ては正直な答えが書けぬ。南雲、邪魔だ、どけ」

今度は見慣れない白い制服が目に入った。

ここはコスプレ会場だったのだろうか?そんな考えが過ぎったものの、自慢げに笑うその顔を見て納得がいった。

「えっと…生徒会長の風間さん…ですよね?私に何か御用ですか?」

「用も何も、お前が書き上げた恋文を受け取りに来ただけの事…なんだ?まだ白紙ではないか?」

風間さんは不満げに机の上の作文用紙を指差している。

「恋文?なんの事ですか?私は【日本で一番かっこいい人】を課題に作文を…」

「その【日本で一番かっこいい人】がわざわざ来てやったのだ。早くお前の俺に対する熱い想いの内を書け。」

(風間さんに対する想いの内を書けって…。土方先生と同級生って本当ですか?くらいしかないんだけど…)

「ふん…風間、みっともないな。千歳の中の【日本で一番かっこいい人】は実兄であるこの俺なんだ。お前の事なんて【年中婚活中の白ガクラン野郎】としか思っていないに決まってるじゃないか。宿題と称してしかラブレターももらえないとは…ふっ…モテない男の考えそうな事だな」

(え~薫、なんでわかったの?って…この宿題出したの風間さんなの?)

「南雲…貴様の目は節穴の上に腐っているらしいな。千歳の【日本で一番かっこいい人】はこの俺しかいるまい。貴様の事など【素直になれない超シスコン野郎】と思っているに決まっている。ふっ…貴様こそ実の妹に対して強要しないと感謝の言葉も得られぬとは…不憫な男だ…」

(ちょっ…ちょっと…風間さん、何故私の考えてる事がわかったんですか(汗)でも言いすぎです。ちゃんと薫には感謝してます!)

二人はひとつも譲る気はなく、私のそばから離れる気配もない。

私が作文用紙に文字を書き出す事を今か今かと待ち侘びている。

(困ったな…実は『お医者様として第一線で働く父様』って書こうとしたんだけど、それすらブーイングを食らう可能性特大。特に薫…『仕事第一でお前を放っておくようなハゲのどこがかっこいいんだ?』って絶対に文句言う)

私はそっとため息をつきながら校庭へと視線を走らせた。

校庭では部活動に勤しむ男子生徒で賑わっている。

その男子生徒達に交じって、ある人の姿が見えた。

(あっ…)

「わかった!この宿題の趣旨は【日本で一番かっこいい人】へ手紙を書くって事なんですね」

「やっと気がついたのかい?千歳、いい子だ」

「想い人が目の前にいては手が震えて書けぬだろう。しばらくの間だけ背を向けている。用紙がたった2枚で足りなければ、残りはその口から直接聞かせてもらおう」

「大丈夫です。2枚に収めます。よしっ…書くぞ」

激しく勘違いしている二人を余所に、私は作文用紙にペンを走らせた。










「先生!」

校庭で佇む人影に向かって私は声をかけた。

その人はゆっくりと振り向いて、優しい笑みを私へと向けてくれる。

「千歳君、どうした?」

「近藤先生、今日【日本で一番かっこいい人へ手紙を書く】という宿題が出たんです。それで書き上げたのでお渡ししたくて…」

「俺に?」

驚く近藤先生に、私は書き上げた作文用紙を差し出した。

「私がこの学園で楽しく過ごせるのは、先生方や先輩達のおかげです。それは校長先生である近藤先生の細やかなお気遣いがあってこそだと私は思っています。生徒一人一人へクリスマスプレゼントを配ったり、気さくにに声をかけたり…個性的(過ぎる)な先生方を束ねていけるのも近藤先生が優しくて気遣いの出来る人だからこそです。私はそんな近藤先生が【日本で一番かっこいい】と思います!」

近藤先生は困ったような顔で頭を掻いている。

「ご迷惑…でしたか…」

「いや…なんだ…面と向かって褒められると照れくさいものだな。迷惑なんて事はないぞ。この歳になって女子から文をもらうとは思わず…しかしこれは恋文以上に嬉しいものだ。千歳君、ありがとう。皆が今以上に喜んでくれるよう、さらに力をつくさねばならんな!」

そう言って照れながら笑う近藤先生はなんだか可愛らしくて、それでいてやっぱり【日本で一番かっこいい人】だと思えるのでした。










あっ…

薫と風間先輩を教室に置き去りにしてきちゃったけど…大丈夫だよね?