五色月の夜空を見上げる | 千歳日記

千歳日記

この先にある未来を…

たとえどんな未来でも私は見届けてみせる

最後まで…必ず

今日から五月です。


五月の別名は皐月、稲苗月、雨月、五月雨月。


古来は【五月】と書いて【さつき】と読んでいたそうです。


五月の別名はまだまだあります。


写月、橘月、そして五色月(いろいろつき)。


何故【五色月】と呼ぶのかはわかりません。


もしかして、この国の文化には五色に関わる事が多いからでしょうか?


五色は古代中国の陰陽五行説に由来します。


陰陽五行説とは、『万物は【陰・陽】のニ気、と【木・火・土・金・水】の五行で成り立ち、これら陰陽五行の要素でこの世は回っているという思想です。


これら五行を色で表すと


木=青

火=赤

土=黄

金=白

水=黒


となります。


染料や色彩認識の関係で青は緑に、黒は紫に表される事もあります。


また五行は方角、季節、人の徳目を表す五常(五徳)、感覚を表す五官(五つの器官)など、いろいろなものに割り当てられます。


五常(五徳)とは儒教で説く五つの徳目。


儒教は武士道を形成するにあたり、深く関わっているものの一つです。


五徳と色を合わせると


礼(礼儀)=青

仁(慈愛)=赤

義(正しい道)=黄

智(知恵)=白

信(信頼)=黒


となります。


自分の中でより高めたい徳に割り当てられた色を身につけるのも、ご利益があっていいかもしれませんね。


………


五月とはまったく関係のない話になってしまいました(汗)






昨日腹を立てたまま就寝し、朝から大きなため息をつきながら仕事にあたりました。


しかし仕事についてから半刻ばかりで、何故か屯所に呼び戻されました。


理由は今日が月初めで、月初は細かな雑用が多いからでした。


呼び戻された事により昨日揉めた原因の一つが消え、ある意味すべてが解決しました。


屯所に戻りいつも通り雑用をこなしていると、一人の隊士さんが笑いながら近づいてきました。


「やあ、雪村君。戻ってきたのかい?昨日ぷんぷんになって怒った甲斐があったね。」


「与えられた仕事が不満で怒ってたんじゃありません!」


「あぁ、わかってる、わかってるさ。」


その隊士さんは笑いながら仕事へと戻って行きました。


(ぷんぷんって…私が怒ってたところ…見てたんだ…)


ふぅ…


やっぱり怒っても良い事なんてありませんね(苦笑)






五月の始まりの日。


夜空は厚い雲に覆われています。


目を凝らしても、昨日は綺麗に見えた月は見当たりません。


星も見えなくて…また大きなため息をついてしまいました。


霞んでいてもいいから月が見えれば、『今日もいい日でした』と言えるのに。


でもやっぱり諦めきれなくて、部屋をそっと抜け出し庭へ出てみました。


四方八方をぐるりと見渡し、また大きなため息を一つつきました。


(あ~ぁ、やっぱり見えない。雲の影からでもいいから、ほんのちょっとだけでも見えたらよかったのに)


くるりと背を向け、とぼとぼと部屋へと歩き出しました。


(でも…やっぱり…)


もう一度空を見上げると、雲の向こう側に鈍い光が見えます。


(もしかしたら!)


じっと見つめていると少しずつ雲が動いて行き、やがて鈍く光る月がゆっくりとその姿を見せ始めました。


「…今日も…やっぱり今日もいい一日でした!」


私はそう独り言ちると、誰にも見つからないように静かに部屋へと戻りました。