※今回の日記はSSL設定のため、口調などは現代仕様になっています。
2012年2月3日金曜日、今日は節分です。
節分は各季節の始まり(立春 立夏 立秋 立冬)の前日の事です。
節分は『季節を分ける』ことをも意味しています。
今は主に2月の最初にある、立春の前日を指す場合が多いです。
だから節分と言えば豆まきです!
節分の日には年の数の豆を食べて、無病息災を願うならわしがあります。
豆大好きな私としては、年の数とは言わずもっと食べたいところです…が
「豆まき?そんな子供じみた事するわけないだろ?まぁ、千歳が掃除するんだから豆まきくらいしてもいいけど…その代わり鬼はお前だからね。」
薫の黒っぽい笑みに嫌な感じを覚え、豆まきは断念する事にしました。
(でもせっかくだから、二人で何かしたいな~。煎り豆だけ買って豆ごはんにしようかな~。)
学校の帰り道のスーパーで買い物をしていると、あるものが目に入りました。
「恵方巻き…あっ!そうか、恵方巻きって手があった!」
恵方巻きというのは、節分に食べると縁起が良いとされる太巻き寿しの事です。
別称「丸かぶり寿司」「恵方寿司」「招福寿司」。
起源は大阪船場の若旦那衆が始めた…えっと…あまり大きな声で言えないような大尽遊び説(遊里で派手に遊ぶ事)、豊臣秀吉時代の家臣が巻き寿司のようなものを食べて大勝利を収めた説、大阪の商人達が始めた厄払い説などがあります。
また『巻く…福を巻き込む』『切らずに食べる…縁を切らない』『海苔巻きを鬼の棍棒に見立てて鬼退治』といった意味もあるようです。
全国への普及は某コンビニエンスストアによるもののようですが…いまや円柱状だけが共通点のロールケーキにまで恵方巻きの影響は広がっています。
これ全部…薫が帰ってくるまで少し暇だったから、インターネットで調べて知り得た情報です(笑)。
残りの時間で宿題を済ませていると、ようやく薫が帰ってきました。
「何?これが晩飯?ずいぶんと手抜きだね。お前は疲れて帰ってきた兄さんに、買ってきた巻き寿司を食えって?しかも切らずに?」
「えっ?薫、知らないの恵方巻き。私も食べるのは今年初めてだけど。その年の恵方を向いて丸かじりしたら幸せが訪れるんだよ。えっとね…今年は北北西やや右、こっちね!あと食べてる間は絶対に無言、少しずつ食べなきゃ駄目なんだって。」
「…要するに食事中に無駄口を叩くな。卑しくガツガツ食べたら喉に詰まるぞ。無駄口叩きそうになったら妄想してろって事か。」
「えっ?あっ…そっそんな感じ?かな?」
(全然違うような…ちょっと合ってるような…)
いつもは向かい合わせに並んでいる椅子を横に並べ、私と薫は黙って巻き寿司を口にしました。
(薫は何をお願いしてるのかな…私は…)
元々食事中に会話が弾むわけでもなく、でも今日はいつも以上に静かで…それがなんだかおかしくて笑いが込上げてくる。
その笑いを堪えつつ、私は黙って巻き寿司をほお張りました。
「ねぇ薫、薫はどんなお願い事をした?」
巻き寿司を食べ終え、お味噌汁を一口口にしたところで薫に声をかけてみました。
「願い事?そんなの決まってるじゃないか。『千歳が留年しないように』だよ。」
「ぐっ…そんなに酷い成績じゃないもん…。」
「赤点を免れれば良いってもんじゃない。お前が無能だと、この俺が恥を掻く。」
(聞かなきゃよかったかも)
「千歳、お前は?」
「私は『来年も薫と仲良く過ごせますように』。」
「それ以前に今をどうにかした方がいいんじゃない?」
(ううっ…『薫が素直になりますように』の方が良かったかも)
「…まぁまぁ美味しかった。でも来年は出来合いを買ってくるなんて手抜きは許さないよ。二人分の巻き寿司くらい、お前一人で作れるだろう?巻き簾で巻くだけなんだから。」
「うっうん。じゃあ来年は七福神に見立てて七種類の具を入れた巻き寿司を作るね。」
「不味くなければなんでもいい。」
薫の調子は相変わらずだけど、少しだけ歩み寄れた気がする節分の日でした。
明日は立春。
まだまだ寒くて雪の降る日もあるけれど、春はもうすぐそこまで来ているのかもしれません。