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今の時代は家を出れば近くの『こんびに』で、いろんな食べ物が簡単に手に入ります。
有名な菓子職人との共同制作・監修の洋菓子や、一人分に個装されたお団子など、手を伸ばせばなんでも手に入る。
私は洋菓子も和菓子も大好きなんです。
洋菓子の『くりーむ』と呼ばれるモッタリしたものの甘さも好きですし、『ばたー』という熱を加えると香ばしい香りのする油脂も好き。
小豆を丹念に炊いて作り上げた餡は極上の味ですし、練りきりと言われる白餡に求肥を混ぜた菓子は季節の草花の形を模して、私の目もお腹も満足させてくれます。
…『洋菓子』か『和菓子』今の気分はどっち?が質問内容でしたね。
今の気分はどちらかと言うと『和菓子』です。
具体的に言うと、どら焼きが食べたいです。
どら焼きはそのお店によって、生地の食感も餡の味も違いますよね。
秋になれば栗の入ったどら焼きがお目見えしますし。
それがまた楽しみの一つなんです。
先日、東京浅草にある老舗の菓子屋さんのどら焼きを購入し、賞味いたしました。
ここのどら焼きは生地に気泡がいくつも入ったふんわりとした食感で、口に入れるとまるで綿か雲のようなんですよ。
そして中の粒餡は体に沁みるほどすごく甘く、旨みの凝縮されたとても美味しい味なんです。
そのどら焼きの賞味期限は『本日まで』でした。
(…明日の楽しみにしよう。昼餉の後もお団子を頂いたし、今日は我慢しよう。)
その日は真夏のような暑さでもないので一日くらい大丈夫だろうと、私は誰にも見つからないように棚の奥にどら焼きを隠しました。。
そして翌日、私は棚に隠してあったどら焼きとともに熱いお茶を手にして自室へと戻りました。
(やっぱり美味しそう…あれ?)
マジマジと眺めていましたら…わずかですが黴がついています。
「………はぁ…」
私の考えが甘かったのです。
大きなため息をつきながら、そのどら焼きは処分しました。
あのどら焼きを手に入れるには、浅草まで行かなくてはいけません。
しかし、そんな自由な時間など私にはありません。
いかし手に入らないと思う気持ちが、ますます食べたいという気持ちを募らせていきます。
この気持ちを『誰かを想う気持ちと似ている』と言ったなら…
あなたは私を笑いますか?