乳房の解剖 乳がん | 扶氏医戒之略 chirurgo mizutani

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身近で関心は高いのに複雑・難解と思われがちな日本の医療、ここでは、医療制度・外科的治療などを含め、わかりやすく解説するブログです。

乳房のしくみ
乳房は、女性の出産、授乳期に乳汁分泌の役割を持つ皮膚の付属器官で、乳腺と呼ばれる腺組織と脂肪組織、血管、神経等で成る。乳腺組織は、乳汁をつくる乳腺細胞が10-100個集まり最小組織の腺房が形成され、腺房がたくさん集まり小葉に、さらに小葉が集まり腺葉という房状の組織になっている。腺葉は乳頭を中心に放射状に並び15-25程度あり、それぞれから乳管が1本ずつ出て、小葉や腺房と連絡し合い、主乳管となって乳頭に達する。この組織をまとめて乳腺と呼ぶ。
思春期になると卵巣から卵胞ホルモンが分泌され、月経の開始をみると黄体ホルモンも作用して乳管や腺房が発達する。
妊娠すると、胎盤が卵胞ホルモンや黄体ホルモンを盛んに分泌するようになり、乳管の枝が増え、腺頭も急激に増える。乳汁は脳下垂体で分泌する催乳ホルモンによりつくられるが、出産後、胎盤がなくなると盛んに出るようになる。さらに乳児が乳頭を吸うと、脳下垂体からオキシトシンというホルモンが分泌され、平滑筋を収縮させ、乳汁が絞り出てくる。

乳がんとは
乳がんは、乳腺組織に発生したがんで、乳腺を構成する乳管や小葉の内腔の上皮細胞から発生する。乳がんには、非浸潤がん、パジェット病がある。
乳がんの多くは、乳管の基底膜の上皮細胞が増殖して発生する乳管がんである。
小葉から発生する小葉がんも5-10%の割合で発生する。乳がんは乳房内のリンパ管に侵入しやすく、がん細胞がリンパ節に入ると、骨、脳、肺、肝臓、皮膚等に転移するおそれがある。
日本では、乳がんの死亡率・罹患率が増加しており、毎年約3万5千人が罹患する女性に最も多いがんである。八勝のピークは30歳代後半-40歳代後半だが、最近では高齢者にも増加傾向がみられる。
乳がんの増加の背景には、食生活の欧米化、非婚傾向、高齢出産が関与していると考えられている。また母親、姉妹等家族に乳がん患者がいると発症リスクは増す。
乳がんは早期発見、早期治療が有効ながんで、毎月の自己診断、定期検診が重要である。特に乳房専用のエックス線、マンモグラフィーは、触診ではわからない小さなしこりや、石灰化した微細な乳がん発見に効果的である。また超音波検査は、乳腺の密な若い人の診断に有効である。
乳がんの治療法には外科的手術、放射線、抗がん剤による化学療法、ホルモン療法等がある。

・乳房の構造…乳頭には平滑筋繊維、色素、知覚神経が多く分布している。
・浸潤がん…がん細胞が乳頭や小葉を包む基底膜を破って外に出ている。
・非浸潤がん(乳管内がん)…がん細胞が乳管や小葉内に留まっている
・パジェット病…非浸潤がんが乳頭に達して湿疹のような病変ができている。
・乳がんのセルフチェック
①上半身をうつす鏡に向かい、両腕を下げた状態で色、形、向き、引きつれをチェック
②両手を上げて、①と同様にチェック。
③乳輪から外に向け円を描くように乳房を4本の指でチェック。
④乳首をつまんだり、乳房を絞るように分泌物をチェック。
⑤あお向けになって片手を上げ、片方ずつ乳房全体から脇の下まで円を描くようにチェック。
⑥あお向けになって腕を脇につけた状態で⑤と同様にチェック。

※乳がんは1年で2倍の大きさになるといわれ、月に1回の自己診断が重要である。自己診断は生理が終わったら4-5日後が適しており、閉経した人は毎月日を決めて行うとよい。
マンモグラフィー検査で発見される石灰化した乳腺は、カルシウムの集まりで、乳がんだけでなく、40-50歳代に多い乳腺症や良性の腫瘍でできることもある。
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