市場の失敗と医療 | 扶氏医戒之略 chirurgo mizutani

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身近で関心は高いのに複雑・難解と思われがちな日本の医療、ここでは、医療制度・外科的治療などを含め、わかりやすく解説するブログです。

市場の失敗
では、どんなときに市場は失敗するのであろうか。
市場の失敗は、「公共財や費用逓減産業、あるいはその財が、外部性や不確実性や情報の非対称性を持つとき、分配のときなどに起きる」という。これだけではよくわからないかもしれないので、一つ一つを解説していこう。

公共財
世のなかの多くの財は私的財である。私的財とは、排除性、競合性を持つ財であると定義される。排除性とは、その財の使用対価を払うことによってその消費から他者を排除できることをいい、競合性とは、多くの人が同時にその財を使用できないことをいう。例をあげると、排除性とは、それまで無料であった公園に門をつけてお金をとることにして料金を支払わない人の入場を禁じた場合、競合性とは、混雑するがゆえに乗りたい人全員が乗れないような満員の通勤電車の場合などがそうである。
現実の経済では、財の消費にあたって直接対価の受け払いがなされず、したがって市場機構を経由しないで需要・供給がなされている場合がかなり多く見られる。医療の場合も、医療費がまったくかからなかった1973年から83年の70歳以上の高齢者などは完全にこの状態であったといえよう。
このような財の場合には、私的財の持つ性質である排除性、競合性がなくなる。このような性質を持つ財を公共財という。この公共という定義は、経済学に独特なもので、一般にいう「公共」や「公共的」とは異なる用語の使い方であることに注意されたい。
さて、ここで公共財とはどんなものかを具体的に確認してみよう。
経済学ではよく例に出されるのは灯台である。確かに、通行する船に光で航路を示すという灯台の機能は、往来する船のうちお金を払っていないものには航路を示さないということはできないし(非排除性)、常識的にいって、混雑のために灯台の明かりが見えないということもない(非競合性)。
灯台ではわれわれの暮らしに関係ないのではないか、という疑問もあるかもしれないが、公共財にはダムや国防などの例もある。
それでも、やはりわれわれの日常生活からは遠いものである。純粋な公共財というものはさほど数が多いものではない。しかしながら、公共財の要素を部分的に持つ財、あるいはルールによって公共財になっているものは多い。日本の医療はこれにあたる。すなわち公的な医療保険によって、価格による排除性をなくし、医学部を多く作り、多くの医師を養成することによって競合性をなくそうとしたものである。

費用逓減産業
ついで、市場の失敗をもたすものには費用逓減産業といわれるものがある。
電力、都市ガス、水道、地方の鉄道などは、ある場所で同じサービスを提供する企業が複数存在せず、一社のみによってサービスが提供されていることがほとんどである。その理由としては、複数の企業によって供給すると非効率性が発生する、あるいは自由競争の結果として一社しか生き残れない、といった点があげられる。市場が独占的になる状況を自然独占という。
右にあげたような産業は、いずれも、生産規模の拡大に伴い生産の平均費用が逓減する産業であるため費用逓減産業という。このような産業においては、価格を提供者が決定できるので市場による資源配分は効率的ではないとされる。
なお、新たに他の企業がこの産業に参入することは事実上不可能である。なぜならば、新規に参入しようとしても膨大なコストがかかるため、他の企業は、現在この産業で操業している企業よりも有利な条件で参入することが一般にできないからである。

不完全な競争
不完全な競争しか起きない市場、すなわち不完全競争市場あるいは独占的市場は、非効率的な資源配分をもたらす。これは、不完全競争市場においては各企業は価格支配力を持ち、そのような企業が自らの利潤を最大化するため、価格を限界費用から乖離させてしまうためである。限界費用とは、一つに組織において、設備に変化がないとし、生産量をわずかだけ増加させたとき、総費用がどれだけ増加するかを考えたときの、その増加分を指す。
不完全競争による社会の損失を回避するために、政府部門がなんらかの形で市場経済システムに介入することが必要となる。もっとも根本的な解決法として、市場を競争的にするということが考えられる。政府部門の役割は、そのための法律や制度の整備ということになろう。
実際、そのような役割を担っている法律として独占禁止法が存在している。しかし、法律や制度改革による市場の競争化は、常に有効であるとはかぎらない。前述した自然独占の場合、多くの企業による競争市場化はむしろ社会に大きな損失を与えることになる。この場合、市場を競争的にするのではなく、自然独占の状態のまま、独占企業の行動に政府部門が規制を課すほうが望ましいとされる。
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