(標題) 寒梅  新島襄作

 

(起句)庭上の 一寒梅

(承句)笑って風雪を 侵して開く

(転句)争わず 又 つとめず

(結句)おのずから百花の さきがけを占む

 

令和5年を迎えました。ここ数年は新型コロナに翻弄されて生活環境が一変しましたが、今年こそいろんな面で良い方向に向かうように願いたいものです。この漢詩は五言絶句ですから、承句と結句に「灰」の韻目の中から「開」と「魁」の韻字を押韻に用いています。さらに、五言絶句と同様に起句にも「梅」で押韻していますが本来は不要のものです。

 

意味は、「庭先の一本の梅が厳しい風雪に耐えて、まるで微笑むかのように花を咲かせている。いちばん咲きを競うでもなく、また特別に努力したこともない。ただ、自然体に任せて自ずと先駆けとなったのである。(人の生き方もこのように謙虚でありたいものだ)」

 

大晦日になると、この漢詩が思い浮かびます。中国の盛唐時代の詩人、高適(こうせき)の「除夜の作」です。意味は「侘しい旅館の一室、ものさびしい灯火の下で寝付かれずにいる。旅の憂いはどうしてこんなに寒々とした気持ちになるのだろうか。大晦日の夜、故郷にいる家族は遠く離れた私のことを想っていることだろう。夜が明ければ白髪の年老いた身にまた一つ歳を重ねるのだ。」

 

読み下し文を下記に示します。

(標題)除夜の作  高適

(起句)旅館の寒灯 独り眠らず

(承句)客心(かくしん)何事ぞ うたた凄然

(転句)故郷今夜 千里を思う

(結句)霜鬢(そうびん)明朝 また一年