シルクロードの朝美絢の話をしよう | ひとりっ子のひとりごと ほぼ宝塚

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感じたことを正直に。
悪気はないけど毒はある、かも?

fffでは英雄でも天才でもないひとりの普通の「人間」の代表のような人物ゲルハルト・ヴェーゲラーを少年時代から包容力のある「太陽のようなあたたかさ、木のようなぬくもり」を感じさせる大人の男性まで見事に演じ分けて、静かに大きな成長を見せてくれた朝美絢さん。

音楽は誰のものか?という主題に対する「すべてのもの、人間のもの」というひとつの答えに照らし合わせてみれば、ゲルハルトや民衆たちこそが影の主役とも言えるかもしれません。

観る人がその度に、違う視点や感想を抱ける不思議な作品でした。


今日はショー、シルクロードの朝美絢さんについて溢れる想いを語ります。
興味がない人は回れ右してください。
完全なネタバレなので、嫌な人は回避してください。
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もちろん読んでくださるだけでもありがたく嬉しく思っています。


オフホワイトのアラビア風の装束、みなさんお似合いでとっても素敵ですラブ

かねてから朝美絢さんはお顔の造形が2次元、作家さんでいうと清水玲子さんや樹なつみさんだと私は思うんですが、この、手も宝石も使わずにただ顔だけで勝負する美形の使い方、セルフプロデュースが最高だと思います!(カメラマンさんもグッジョブです)

このお衣装ではキャラバンから盗賊と宝石登場に続いて娘役の砂たちの群舞の後に登場し、ちょいワルのヤンチャさを全開にまさに暴れ回ってくれています。
蹴りやターンの多い振り付けで砂漠での盗賊たちの乱闘や騒動を思わせて、とってもカッコいいラブ

ゲルハルトの慈愛と気品に満ちた優しい笑顔とは一転して、オラオラと煽るような目線、口元も尖らせたり不敵に口角を上げたりして、財宝を盗むことよりもむしろ、それを奪い合うことを愉しんでいるようなその表情に、観ているこちらのハートが盗まれています!

この時は舞台上で絡む娘役は彩みちるさん。
2人の並びは幼馴染のようでもあり、恋人のようでもあり、とてもお似合いで安心感があります。

その後テーマ曲のシルクロードの銀橋歌い継ぎ場面がありますが、この時は綾凰華さん、縣千さんの後夢白あやさんと2人で下手花道から登場します。
このコンビが恐ろしく美しいドキドキドキドキ
どちらも自分の美形をわかっててやってらっしゃるとしか思えない、仕草や表情、目の使い方、お互いの距離感やポージングなど、まさにハイスペックモデルコンビ✨✨
目を奪われました!とても素敵💖

夢白さんが宙組から組替えで雪組に来た時には、誰とお似合いだろう?と思いました。
彩凪さんも朝美さんも美形ですが、美形と美形を並べたら必ずしも成功するとは限りません。
が、朝美さんと夢白さん、美形×美形による美の相乗効果が倍増どころではなく何倍も増加していました。
れい華コンビが華さんの退団を控え、今後の宝塚では朝美夢白コンビが美形コンビとしては優勝じゃないでしょうか?
異論は認めます(笑)

盗賊が去り、宝石を妻乞いに送る過去の幻想(彩風咲奈さん、朝月希和さん)が蜃気楼に現れては消え、再び宝石を求めて今度はスリ(望海風斗さん)が現れキャラバン男(彩凪翔さん)に捕まります。

その後物語は千夜一夜のシャフリヤール王とシェヘラザード(真彩希帆さん)にと移ります。
シャフリヤール王に侍る美男美女はすべて彼の美しい宝石のコレクション。
囚われた美しい盗賊(望海風斗さん)も、そのひとつに加えようとしてシェヘラザードに邪魔をされ…

この、シャフリヤール王、またの名をジャファー(アラジンのヴィランズです)が朝美絢さま✨✨
多くの男役さんが言われるように、以前から悪役をやりたいと仰っていましたが、めっちゃ悪い!!
そしてカッコいい!!色気が!!すごい!!
赤と黒のアラビア王衣装、艶々のストレートロング、紫色のひとふさの髪が顔にかかればそれを指先であしらう仕草も蠱惑的で目が離せません。

月組時代1789の新公で演じたアルトワ伯は、本役の美弥るりかさんがあまりにもハマり役だったため、まずはひたすら真似をすることを意識したと話していましたが、それも東京で上演の時には朝美色に染め替えるという、役に対する情熱と真摯な姿勢がうかがえました。

真似は大切で、それが出来ることも技術があってのこと、そこからさらに自分なりの考察を加えて唯一無二の役作りをするためには努力、才能、そして舞台への強い思いが必要だと思います。
新公は経験を得るまたとないチャンスなので、早く再開できるといいなと思います。

あの、美弥さんから学んだ色悪なアルトワ伯を演じていた朝美さんが、立派なヴィランになっている…
トップスター望海風斗さんを欲に誘い蹴り飛ばし、トップ娘役真彩希帆さんが諫め邪魔をされれば平手打ち。
この場面を作った生田大和先生、ひかりふるでもロべスピエールをサンジュストがバックハグするシーンを作ってイケナイ妄想を抱くファンを喜ばせましたが、今回も、大感謝です。

千夜一夜の寝物語が終わり、場面はインドの神々の饗宴、中詰めとなります。
スタートを切るスーリヤ(太陽)綾凰華さん、チャンドラ(月)縣千さん。
ロケットを引き連れての場面に続きインドの神々の名前を冠した雪組スターたちが華やかに踊ります。
極楽鳥を思わせる、カラフルでアジアンチックなお衣装も、音楽と振り付けも好きラブ

朝美さんはシヴァ。
紫のがかった青の衣装、頭の飾りとヘアスタイルもとっても素敵です。
盗賊ではヤンチャな感じ、シャフリヤール王は色悪、シヴァはいつも中詰めのダンスで見せるキラキラ笑顔満開の、楽しそうで可愛い朝美さんです💕
鳥のように舞う指先や姿勢のオリエンタルな動きが、ふんだんなギャザーを寄せた袖、長めの丈のお衣装を美しく活かしています。

もし客席降りがあったら、このお衣装を着ている朝美さんを目の当たりにできたかも…いやいや、席や場所もあるし、どちらにせよ、な話ではありますが。

盗賊のお衣装とターバン姿も、どちらも素敵で、殿堂での展示が楽しみです。

その後宝石の旅は中国を経て人々が争う世界の終端へとやって来ます。
この場面は軍服のようなデザインの衣装、争う人々はどの国というより人類悪の象徴。

男も女も何かに突き動かされるように争い、悲惨な破滅へと向かう姿は砂漠の盗賊たちの生きる力を感じる奪い合いとは違い、目的を見失ってなお争うことをやめない人々への絶望を感じます。 

この場面で朝美さんは、3つに分かれて踊る真ん中のグループにいて、ターンを使って縣千さんと入れ替わるような振り付けのタイミングも合っていて、朝美さんも縣さんもとてもカッコいいです。

バトンのように持った武器を振り回し、時に隊列を組むように、時にそれを奪い合うように対峙する相手と睨み合うのが、薄暗い場面で盆も回り、動きも早いので追いづらいですがとてもカッコいいので要チェックです。

世界が暗闇に落ちて争っていた人達もみんな倒れ横たわり、回る盆の上で亡者たちを嘆く宝石の叫び。
ここはサンホラとかシンゴジラとか、そんな世界観を連想しました。
人類はどうしようもなく愚かです。
では、希望はないのでしょうか?

すっかり忘れていましたが、あの盗賊(望海風斗さん)が再び登場して、宝石と出会い、世界は希望の光を取り戻します。

倒れていた人々も立ち上がり、生まれ変わった新しい世界に驚き、その新しい光を浴びて命、希望を取り戻す。

この時の朝美さんの、何が起こったのか分からない、というような虚な表情から、徐々に人間らしさを帯びていく様子の変化が、素晴らしい。

手を携えて歌う盗賊(望海風斗さん)と宝石(真彩希帆さん)、新しい世界を告げる二羽の白い鳥(彩風咲奈さん、朝月希和さん)
この場面では奥の真ん中、世界樹の根元に透真かずきさん、真那春人さんの間に立つ朝美さんの姿があります。
倒れていた人々が立ち上がり、集い、また手を取り合う。

退団と新生雪組を感じさせる、感動的な場面です。

キャラバン隊の彩凪翔さんはこの公演で退団されるので、特に見せ場が多く餞となっています。
じゃあね、と美しい去り際の姿からフィナーレが始まります。

娘役群舞に包まれる望海風斗さんの美しい黒燕尾があり、大階段に並ぶ娘役が迎えるようにして、男役が階段を降りてきます。
朝美さんは彩風さんを挟み下手の先頭、彩凪さんとのシンメも今回で終わりだと思うと切なくなります。

飾りのない、シンプルな黒燕尾、大好きです。
綺麗に固めたオールバック、いつもの豊かな表情は封印して、クールに踊ります。
とてもカッコいい。
黒燕尾はそれぞれの男役のこだわりや、育った組の血が流れているのを感じて、それもまた感動的です。
望海風斗さんはやっぱり花組の、花男の美学が至るところから感じられます。
そのためか、この黒燕尾の男役群舞全体に、花組テイストがあるような。

その中で朝美さんのダンスには、月組で培ったクールさ、霧矢さん、龍さん、美弥さん、ファンであり繰り返し見ていた花組、春野寿美礼さん、初めて見た宙組姿月あさとさん、そして雪組で背中を追った望海風斗さんから学んだものが流れているのを感じます。

燕尾の裾捌き、ターン、姿勢、指先まで、足の先まで研ぎ澄まされた動き、視線、顔つき、すべてが美しく、揃ったかけ声に、思い入れが込められています。
トップスターの役目を青い薔薇の花に擬えてそれを望海さんから彩風さんに渡す場面、退団者のダンスを見つめる場面では、そのさびしさと、退団者への尊敬が滲み出ている表情に、見ていて心が震えます。

黒燕尾が終わり、男役たちが捌けていき、彩風さん、彩凪さん、朝美さんの3人だけが舞台に戻ってきます。
それぞれが真彩希帆さんと最後のご挨拶をするように2人で踊り、彩風さんとはリフトもあり、それが終わると、とうとう望海風斗さん、真彩希帆さん最後のデュエットダンスです。

この時の満足そうな幸せな表情が、とても素敵で好きです。

エトワールは歌がうまくて可愛く、これからの活躍と抜擢が期待される有栖妃華さん。
いつか真彩希帆さんのような娘役に育ってくれると嬉しいです。

そこからテーマ曲のシルクロードを歌いながらの階段降りがあります。

今回、退団する彩凪翔さんか、次期2番手が予想されている朝美絢さんのどちらか、または2人ともが3番手の羽根を背負うのではないか?とも思っていました。

結果はどちらも羽根は無く、順番も今まで通りのパレードとなりました。

朝美さんが階段を降りながら歌う歌詞は、

追いかける 俺の
腕をすり抜けて
逃げ出そうとも 最後は
俺のものになるさ

と言うものでした。

組替え前月組最後の本公演、グランドホテル/カルーセル輪舞曲の時は、稲葉太地先生が書いたパレードの朝美さん用の歌詞に

胸が躍り始め
希望に溢れて
輝く世界へ
あなたと出会うため旅立とう

とありました。

朝美さんは育った月組を離れ、雪組で新しい上級生や仲間に巡り合い、自分の新しい面にも出会って大きく成長されました。
この歌詞が現実と重なったように、シルクロードの歌詞もまた、その予感が秘められているような気がします。

下級生時代からその魅力で見る人を惹き付けてきた朝美さん。
けして順風満帆ではなかったこれまでの歩みの、不器用で遠回りだった道で得た、ひとつひとつの大切な出会いやだからこそ見れた景色、感じることができた思い、舞台の隅の暗がりから学んだ経験、すべてが糧となり、素晴らしい宝石となっていま、朝美さんをより輝かせていると感じます。

人事は謎や大人の事情があり、常に納得できるものではないこともありますが、これからの朝美さんがその魅力や実力を正当に評価されることを願っています。

それと同時に、たとえどんな決定があっても、これからもずっと、朝美絢さんを応援し続けたいと思っています。