リスト「半音階的大ギャロップ」1 | 心と体をラクにするピアノ奏法

心と体をラクにするピアノ奏法

ピアニストでピアノ講師の荒井千裕が
ピアノの奏法、呼吸法、身体の使い方をお届けします。


突然のレッスンだったので、レッスン前の練習模様を録画する時間がありませんでした・・・

というわけで、レッスンから帰ってきて録画しました。
レッスンでの注意事項はまだ生かされていないです。
まーもうボロボロですよ。譜読みして1週間です。

リスト「半音階的大ギャロップ」初レッスン直後の練習

つまり今日のレッスンはこれだったわけですが・・・

「今日はバッハじゃないなら何?
 グリーグのコンチェルト?」

と仰られ・・・

いえあの・・・リストの「超絶10番」か「半音階的大ギャロップ」を・・・楽譜を開くと・・・

「大ギャロップ」の楽譜を広げた瞬間


ぎゃっ!


と叫ばれた先生でした(笑)。

それでこれに決定(笑)。

「なに?ペンネ、今年はリスト・イヤーなの?
 リストづくしね。」

はい♪そうなのです♪
大ギャロップは、サマーコースが終わった晩に、突然弾きたくなったのです・・・

「え?サマーコースが終わってから練習始めたの?」
(そんな短期間の練習でレッスンに持ってきたってわけ?)


で、通しでお聴き頂き・・・あまりに悲惨だったので

「すみません・・・」と最後の音打鍵と同時に叫んだワタクシ。





まず、まだまだ遅いわね(笑)。

なんかもうね、ペンネはピアノを愛していてたまらないって感じよ。
それでペンネ自身がエキサイトしすぎ。

だから、音をよく聴けていない状態ね。

いくら、練習を始めて間もない、まだ流暢に弾けないという状態でも、最初から音楽を作っていくのは大事だよ。

ただ一生懸命音を拾って、見境なく陶酔してる感じね。

動きすぎ。

一つ一つ打鍵するたびに頭が前に行ってるよ。
動かないで、よく音の響きを聴いてごらん。
速い曲だけどね、一つ一つの重音はずっと空間に広がっていって、戻ってくるんだよ。

   ってこれはサマーコースでも注意されましたね。


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まずね、ペンネは、一つずつを強調しすぎ。
全てが個別に成り立っていて、フレーズになっていない。

まず、2小節単位よ。
前奏も2小節ワン・フレーズで取る。

その次もね、ペンネは左手の拍頭=1拍、2拍が同じように出てしまう。
違うよ。2小節単位で、その始めの1拍目だけだよ。
右手も同じ。一つずつじゃなくて、とにかく2小節ワン・フレーズ。



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この赤○の中の音ね、ペンネは一つずつ<押して・押し付けて>弾いているんだけどね、それじゃ、その瞬間に音が死んでしまうよ。
そうじゃない、もっと空間に広げてあげる。
そのために、打鍵と同時に肩・背筋をリラックスで腕を放り投げる。肘から上がっていく。そして落ちてきて次の重音を打鍵する。

でね、その時ね、ペンネは一つの重音打鍵のたびに頭が前に行くんだよね。
そうすると、一個ずつ切れちゃうでしょ。
動かないっ!押さえてるからね!

  と先生、私の背後で肩を押さえて・・・出た!
  大リーグ養成ギブス(笑)。



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ココはやはり2小節単位でね、最初はすごく遠くを見ているんだよ。
ほら、立って!

  と立たされ(ピアノのイスの後ろ一面が窓なので)外を
  遠くを見させられ・・・

最初はあの向こうのビルを見てる。
次に少し手前のビルを見る。そしてもっと近くのビルを見る・・・というように。

遠くのものが近づいてくるイメージ。




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赤○の重音はね、裏拍になる音は音数が少ないでしょ。
それはlessという意味ではないんだよ。
同じだけのエネルギーを持って打鍵する。
そしてね、実際は速いんだけれども、あえて、一つずつをよく聴くためにゆっくり弾いてごらん。
まず第一の重音を打鍵→手を振り上げて→そのハーモニーが広がるのをよく聴いて→それが自分に戻ってくるのを確かめて→そして次の音打鍵・・・

もう一回・・・もう一回・・・もう一回・・・


   と何度も弾かされて・・・

そう、そしたらそれを少しずつテンポ・アップして。

そしてイン・テンポで。

よく聴いてっ!



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ペンネの弾き方だとね、「シファ」で終わり。
「ファ|ソシ」で終わり。

そうじゃないでしょ。
「シファーソ|ソシーミ」って続くわけよ。
だから、赤○の音打鍵と同時に腕を使う!
そして音を広げる。



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ここはね、視界がどんどん広がっていく。
最初は本当に目の前の少しの幅しか見えない。
次は少し視界が広がる。次はもっと・・・
そして最後はパノラマになる。



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ココもペンネは押し付けで音を殺してる。
そうじゃない。ここも腕を使って。




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ここは音の波(山)を感じて弾く。
ただ一個ずつを同じように弾かないで。
どこに向かっていくのかを見据えて。



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ここも、どんどん視野が広がっていくんだよ。
最後は全てが見えるようになる。

そして最後の二つの重音は、腕を十分に使って。

   あ、この弾き方は「マゼッパ」の最後と同じだわ。



ま、難しい曲だけどね、テクニカルなことはペンネが練習すればすぐ解決できることだから。
用は<歌>よ。

小さな2小節単位のフレーズは、<丘>なのよ。
一つ目の丘があって、次の丘があって、また次の丘があって、
それらが連なって山になる。
ヒマラヤ山脈と同じよ。



  ぎゃ!いきなりデカイお話に・・・(笑)


というわけで、あわよくば「超絶10番」もレッスンしていただけるか?と思っていたのはやはり甘く、これだけで1時間越えてしまったので、終わり。

途中、ヘレン先生から電話が入ったりして

「あらペンネ!もう頑張っちゃってるの!
 で次のコンチェルトは何?チャイコフスキー?
 リサイタルが開けちゃうわね~」←おだてすぎ。

うん、この時、思ったんだ。
ヘレン先生とエレノア先生、教え方の根本は同じなんだけど、強さというか性格というか、それが完全に違う部分があるんだ。

エレノア先生は、ちょっとやそっとじゃ褒めない。
ご自分の基準に満たなければ絶対に譲らないというものをお持ちだ。
(だからサマーコースでも、「こんなじゃ話にもならないわ」
 というレベルだと、マスタークラスの話もコンサートの
 話にもならない。)

だけど、ヘレン先生は、ちょっと優しい。
何ていうのか、失礼ながら私は今エレノア先生に師事できていることを心から感謝する。
ヘレン先生は、こう仰る。
「ペンネは家庭人だし、仕事も持ってるのによく頑張ってる」と。

つまり、極端に失礼な言い方をすれば、あるラインで私は分けられているということ。

もし、ヘレン先生に師事したら、
「こういう状況の中頑張ってるんだから、このくらいで
 いいんじゃない?」と仰ることはないだろうけれど、
そうやって線引きされそうな気がしてしまうのだ。

エレノア先生なら、
「よく頑張った。でも、まだまだね。」
となる。

ま、いいけども。


あぁそうそう。
私の「半音階的大ギャロップ」の楽譜ってね、本のタイトルが
「メフィスト・ワルツ」とでっかく書かれていて、その下に小さく「&他の作品たち」と書かれているわけです。

なので、今日初めに先生がこの本を見たとき

「まさかっ!メフィストじゃないわよねっ???」

と叫ばれた(笑)。


ち~~が~~い~~ま~~すぅ♪

来週は木曜日、またしても朝9時からのレッスンです。