いろんな意味で衝撃の最終回!だったので、なかなか書く気になれず(笑)書き始めたら、長いです!!


間野京子をついに抱きしめてしまった杉村。「あれはちょっとしたハプニングに過ぎない」杉村は、自分の心のなかの間野との距離を確かめるように、そうつぶやく。バスジャックが引き起こした偶然であるのだと。


けいちゃんが引き起こしたバスジャックのせいで、彼の動機=「詐欺やマルチに関わったやつはおれも含めて、みな罰しなければならない」、の原因となった「羽田からの慰謝料」の存在が明るみに出て、警察にお金を返す人質たち。

既に辞表を出しており、会社への損害を最小限にとどめたという点で、杉村にはやはり、先見の明があると言うべきだろう。警察は納得しているが、ネットの世界はそうはいかない。

柴野は休職、めいちゃんは動画を晒され、迫田さんにいたっては、日商フロンティアの元会員にまで責められる始末。羽田の御厨殺しを黙っていた早川多恵についても、追及の手が伸びる。羽田光昭がこれらを知ったら、自分が引き起こしたバスジャックの顛末に、どんな言葉を吐くだろうか?


警察で間野とすれ違う杉村。「ぼくもみんなもあなたを信じています」と、弁護士と対峙するよう声をかける。そこで「バスのなかで、どうして菜穂子の名前を?」と問いかける杉村。

「多分、羨ましいと思っていたからでしょうね……」寂しそうにそう答える間野だ。杉村は、間野の気持ちをここではっきり知っただろうと思う。


橋本と菜穂子の別れのシーン。ここ、とても、わかりづらく感じた。

菜穂子はここで既に橋本との別れを決めている。それは父・嘉親が倒れたことがきっかけになっているのだと思う。

自分の後ろ盾がいつかいなくなることをはっきりと悟る菜穂子。あの腹違いの社長夫人の姉が、菜穂子を追い出すとは思えないが、菜穂子は父が亡くなった後の世界で自分がどう生きるか、に思いを馳せているように思える。

「ももこを強く育てよう」「父は私を一人で生きていけるようにはしてくれなかった」「私、今までと違う自分になりたいんです。だから……」これらの台詞から、父が死んでもきっと乗り越えてみせる、という決意がにじむ。


しかし、それでは橋本とは菜穂子にとってなんだったのか?


このシーンは、視聴者のほとんどが菜穂子と橋本がまだ精神的に少しつながっているだけ、と思っているのだから、どうにも納得のいかないシーンになってしまったと思う。以下の橋本の台詞。

「わかってます。最初、私には打算がありました。私は本来、そういう男なんですよ。でもすぐに足元をすくわれました」そう言って、菜穂子の顔を見ることなく、橋本は去っていく。

ここの意味。ちょっとわからなくて考えてしまったのだが。

「足元をすくわれる」=「卑怯なやりかたで出しぬかれるさま」

ということは、これは井手の「脅迫」をさすのだろうか?

そして打算があったというのは、菜穂子と恋仲になれば、自分に何かチャンスのようなものが回ってくるという意味?

井手は確かに以前、「菜穂子のお守りまで大変だ!」と橋本に声をかけている。だから、それを脅迫ととってたとして。

橋本は、本当にそんなに計算高い男だろうか?この部分は、菜穂子が自分と別れることがたやすいように、わざと言っている気がする。というか、そう思いたい。

それにしても、あんなに橋本のことを思いつめていたように見えていた菜穂子が、父の重病を前に、こんなにもつきものが落ちたようになる。そのこと自体をとっても、私自身、「名もなき毒」の頃から今までの菜穂子をいかに買いかぶり過ぎていたかを知ることになった。

菜穂子はややもすると利己的で、愛に溢れているように見えながら、実は肝心なものを見失いがちな、どこにでもいそうな弱い女性だった、ということに今さら気づかされた。杉村が選んだ伴侶だから、余計に買いかぶっていた(苦笑)


広報室のメンバーの睡蓮でのシーン。あの秘書室のやたらハイテンションな女性なんだけど。この人の存在、特に邪魔ではなかったが、最終回に盛り込んで欲しい要素が盛り込まれていない!と思っている私にとっては、カットしてほしいシーンになってしまった!テッシーが編集長?と舞い上がるためには、シーナちゃんとの会話だけで十分。

「ちょっと待て!誰が辞めるって言った?いや、このグループ広報室が軌道に乗るまでやめるにやめられないよ!ねえ、マス(ター→切られたw)」

テッシーには、続編があれば、広報室から杉村を援護する役をしっかりと努めてもらいたい(笑)


間野の過去について、くしくも橋本にヒヤリングをしてしまう杉村。

「今は間野京子のことよりも、奥様のことを!!」深々と頭を下げる橋本だ。何も気づかない杉村……。


広報室に出社してくる間野を、微妙な空気で迎えるメンバーたち!間野は、自分の過去を語り始める。

ストーカーだった元夫の相談に乗ってもらった弁護士が、実はストーカーだったと。だが、弁護士だと警察もろくに取りあわないのだという。

お金を借りていたので、今まで逃げていたという間野。

「強くならないと!私、お母さんだから!」

間野も菜穂子も、強くなろうとしているところは同じ。

「一緒に戦おう!」と励ます園田編集長の温かさがにじむ。


クラステ海風で幸せそうな森元常務の妻。森との会食にのぞむ広報室の面々。

「彼女は今12歳なんだ!」という森。テネシーワルツが好きだったという。

恋人の心を親友に奪われてしまった心情を歌った歌だという。(杉村たちのことを暗示しているようにも思えるが)森の妻にも同じ体験があり、それを慰めて彼女を射止めたという森だ。この年齢になっても、妻を思ってやまない、老年期の男性の深い想いが伝わってくる。

何故か、杉村を見つめている森だ。


田中を訪ねる杉村。けいちゃんを迎えるまで、この会社はつぶせないと張り切っている田中だ!いっそのことお金はいらない、とらしいことを言っていた柴野運転手や、けいちゃんに面会にゆくメめいちゃんのシーンに顔がほころぶ。

田中自身も息子と力を合わせて再スタートしたのだから、人質の新たな出発が明るいものであるよう、祈らずにはいられない。田中は、1話から考えたら、本当に株を上げた(笑)彼にとってのバスジャックは、むしろ深い意味を持つものとなったと思う。


杉村宅。その顛末を聞きながら、「もうお金が戻ってこない方がよさそうね。却ってわたしたち、前に進めるというか」と吹っ切れた様子の笑顔の菜穂子。すぐ前に、赤い靴をゴミに捨てるシーンが挿入されていたが。


そこに悪魔の電話がかかってくる。井手からの、森の自宅への呼び出しだ。

そこでは森が妻と無理心中を図って、既に亡くなっていた。

「おれが立ち直るのを見たい」井手に森はそう言ったが、自分への遺書がないとやるせない井手だ。警察を呼ぼうとする杉村に

「こんなの認められるかよ!隠すんだ!どっか行ってしまったように見せるんだ!」と狂気の井手。

「どんな最後であろうと、森さんのことを本当に尊敬してたなら、尊重すべきです!」と応じない杉村。

井手が最後に頼りにしたのが杉村、というのがなんとも言えない皮肉だ。そして、そんな風に呼び出しておきながら、井手は杉村に最後の猛毒をまき散らす。

この井手という男。もちろん最低最悪、であることに違いはないのだけど。森をこよなく尊敬していたという一点だけは、愛すべき部分なんだろうと思う。そして、苦々しいけれど、彼はいつも、「真実」とそう遠くないところを徘徊し、猛烈な悪をふりまき続ける哀しい性を持っていると言えるのではないだろうか?

井手のしかけた罠にやすやすとははまらない杉村だが。

「あんた、いつでもそうだな。きれいごとばっかりだ!あれから、間野とどうした?あんたが今多コンツェルンにいられるのも、会長の娘をたらしこんだおかげだもんな。でも、あんたも終わりだ!気づいてないだけだ。証拠があるんだよ。さすがの俺も腰抜かしそうになったよ」

杉村はカメラを確認する勇気がなく、逃げ帰る。が、井手は携帯にまで、写真を送りつけてくる。杉村を巻き添えにしたくてたまらないようだ。自分だけが、世界から取り残されたように感じているだろう、井手の弱さが伝わってくる。


ここまで来て、菜穂子と橋本はやはり不倫関係だったのか!と思い至った視聴者は私だけではないだろう(苦笑)菜穂子が橋本と手をつないだり、肩にもたれる写真は衝撃すぎた!まさか、あの夜に、いきなり関係を持っていたとは思えなかったので!

ほんの数時間前まで、あんなに明るかった菜穂子の表情は別人のようだ。

おそらく、橋本に井手が連絡をしたのか、腹違いの姉に井手が連絡をしたのか、間接的に菜穂子は、杉村が自身の不倫を知ったことを知らされたのだろう。


「わたし、橋本さんと罪を犯しました」

杉村同様、茫然(!)なんど振り返っても納得いかないので、ほぼ全ての台詞をどうぞ(笑)


「なぜ?」「わからない」「愛してるの?彼を?」「わからない」「でもあなたとももこほどは」「じゃあ、なに?腹いせ?僕がももこの発表会を抜けだして探偵きどりだったから?」こう聞く杉村も杉村だ(!)そんなことで不倫するわけないのに。


「不安だった!いつかあなたがこの生活から逃げて行ってしまうんじゃないかって!」「それが君がしたことの理由?言ってることおかしいよ!彼も彼だよ!自分がやったことわかってんのか!あいつ!」「橋本さんが悪いんじゃないの!悪いのは私。ごめんなさい。私はね、いつだって私は、何をするにも心臓が、体がって。私にも夢があった!思いっきりスポーツしたり、バリバリ働いたり。私がわがままを通したのは、ももこを生んだ時だけ!」「それとこれは全然違う話だろ!?」「でも私のなかではつながってるの!自分を変えたいというのと、犠牲を払っているあなたを解放したい、っていうのと、全部つながってるの!あなた、私を許せる?私はあなたを裏切った!そんな私を許せる?」「わからないよ!僕は君を一度も裏切ったこと……」「そうよね。あなたはそんな人じゃない。私だけが罪を犯したの」「いや……」ここで間野のことを思い出す杉村だ。「間野さん?あなたは踏みとどまれたのね?私にはそれができなかったの。お互いの人生を取り戻しましょう。ごめんなさい、あなたを傷つけて。私のこと憎んで。恨んで。さげすんで。でも一つだけ言わせて。あなたは教えてくれた。人は自分で生きなきゃいけないということを。誰かにおんぶされたままじゃ、どんない恵まれていても、幸せになれないということを。ごめんなさい。ほんとにごめんなさい……」

もう何も言えない杉村だった。朝になって、ももこの髪にキスをする杉村がなんとも悲しい。


この菜穂子の言い分……到底納得できない!!!

菜穂子はどうして、このタイミングで杉村と別れることにしたのだろう?最後、自分の足で生きなければ幸せになれない、強くなりたい、ともっともらしいことを言う菜穂子だけれど。それなら、橋本と別れてすぐ、どうして杉村に自らの罪を告白して、謝罪しなかったのだろう?謝罪して、杉村とともに今多の家をまず出て、それから、杉村にこれから自分とどうしたいのか聞くならまだしも。井手の術中にはまらなければ、菜穂子は杉村に本当のことを言う気はなかったのだ。橋本のことだけなしにして、やり直そうとしていたのだ。なのに、まるでこの結婚がはじめから間違いだった、とでも言わんばかりの菜穂子に、腹が立つ。これは、ずるいという他ない。


「名もなき毒」をごらんの視聴者は、いつも探偵のごとく危ないことに首をつっこむ杉村を、心から心配する菜穂子を見てきた。そして、今多の家を出ていきたいと思っている杉村の気持ちを察して、いつか杉村がいなくなってしまうのではと不安だったという菜穂子の気持ちはわかる。だが、杉村は自分の親と半ば縁を切って、気に入っていた絵本編集者の仕事を投げ打って、菜穂子を選んだのだ。杉村の菜穂子への愛は、いつも深い。だから、その杉村が選んだ菜穂子を、私は少し買いかぶりすぎてしまった。簡単に言うと、もっと素敵な女性だと思っていた。

それに、杉村が教えてくれた「人は自分で生きなければ幸せになれない」というのは、彼らの結婚生活のなかで、どの部分をさすのかが、さっぱりわからなかった。


菜穂子は、自分と、ももこがいつも、杉村の興味の外に置かれているように感じてしまったのかもしれない。「あなたは今多家から出ていきたいのでしょう。本当は探偵をやりたいのではないの?」だからそれが「杉村を解放する」と言う発言になってしまうのだと思う。菜穂子は寂しく、そして弱かった。

残念ながら杉村に罪がないかと言えばそんなことはない。杉村は甘かった。彼は、自分のテリトリーの中にいた菜穂子に油断していた。自分の周辺に巻き起こる様々な事件で関わった人々、彼らの心の奥底を覗かないではいられないある意味では業の深い杉村であったのに、彼は妻の心の底を覗けなかった。気づけなかったのだ。杉村の性格が引き起こした、究極の皮肉な状況とも言える。



最終回で一番好きだったシーンは睡蓮のマスターとのシーンだ。菜穂子を憎みきれない杉村だが、涙だけはとめどない。

マスターが何も聞かないところがまたいい^^あたたかいポトフを作ってくれるマスターの名前。「水田大造」というらしい^^ここで笑ってしまった。もう、この喫茶店は賃貸契約が切れるから、杉村の次の働き先に近いところに店構えようかなぁ、なんて言う水田さん(微笑)

「マスター水田大造氏は、さよならではなく、よろしく、と言った」

味のある睡蓮のマスターに、何度助け船を出されたかわからない杉村だ。最後に、睡蓮の絵についての描写が欲しかったと思う。


自宅に荷物を取りに行く杉村。腹違いの姉の「お妾さんの子ね」という言葉を、取り消せ!と激高する杉村だ。

その後の菜穂子とももこのシーンがまた謎。菜穂子が犬を飼おうか、というと「お父さんの代わりに?」とももこは言う!!これは、なんなんだろう?独り立ちするのに、まず犬を飼おうと言い出す菜穂子も菜穂子だけど、父親を犬と同列に並べるあたり!!これが原作通りだとすると、かなり怖い。


嘉親と杉村の別れのシーン。

嘉親は、若い菜穂子に「富を生み出すのには様々な人の労力があることを実感させられなかった。だから、君を通して、それを実感してもらいたかった。君には自分がいなくなった後の菜穂子の城壁になってほしかった。だが菜穂子は城壁の外で暮らしたいという。」

わかるけど。あまりにも菜穂子よりの父親だ。

「寂しくなるな」この言葉が杉村には救いだったろう。杉村にとっては、いつも圧倒的な存在感を放っていた義父。彼との別れは杉村にとっても寂しいものだったろうと思う。彼との、数々の名シーンがよぎった。

橋本は自ら秘書室を去り、彼なりのけじめを示したのだろうと言う。


広報室では「いいコンビなのか?いいチームなのか?」論争を巻き起こしながら、杉村が爽やかに旅立つ。園田とテッシー、シーナちゃん、ホストくんとも、しばしのお別れ。


そして。並木道で。間野は杉村を待っている。杉村はそれに気づいて、少し歩みを遅くするが。

間野と目を合わすことなく、旅に出る。

間野は、それを予測していたかのように、微笑んで背を向ける。旅立つ杉村に

「好きでした。ありがとう……」と無言でも伝えたかったのだろうと思う。

思えば、間野ほど、無意識の罪深い女性もいない。結局、杉村夫妻の別れの遠因となった薄幸の間野。彼女は今度こそストーカーときちんと対決するのだろう。


「人が一番幸福なのは笑ってる時じゃない。僕が好きな青い鳥の一節だ。ぼくは今幸福か?もちろん幸福だ。多くを望んではいけない。人生は毒と苦渋と理不尽、そしてほんの一匙の美しいもので成り立っているのだから」

杉村のモノローグは、一人旅の電車の車内で終わる。


10話まで。ペテロの葬列には本当に楽しませてもらった。

だけど、この最終回、残念ながらどちらかというと失敗ではないかと思っている。だから、冒頭「いろんな意味で衝撃」となった。


まず、一番の原因だと思うのが。

最終回に「ペテロの葬列」についての解釈が出てこないのは、どうにも片手落ちだと思う。自らペテロ・悔い改めたと思い自死した羽田光昭の起こしたバスジャックが引き起こした悪について、杉村が語るシーンがないのは、どうにも納得がいかない。また、この物語でペテロとなっていった人々への、杉村の想いを聞きたかった。「悪は伝染する」それは十分に見せてもらった。それについて、最後に語る杉村が見たいのだ。

また1話で、菜穂子が杉村にペテロの絵について語るシーンがあったが、果たして菜穂子はペテロなのか?原作通りなら仕方ないと思うけど、最終回の菜穂子は、全くもって魅力を欠いた女性に成り下がってしまった。悔い改めた、とはほど遠い印象だ。

それに絡むが、前半、あんなに絵からの暗示シーンがあったのに、後半は絵にふれることがなく、せっかく最終回も睡蓮のシーンがあったのに、それについてふれることもなかった。

あんなに世の女性に人気の出た橋本の引っ込め方も、もう少し味わいのあるものにして、残念がらせることができたのではないだろうか?

菜穂子との別れのシーンが中途半端だったと言わざるを得ないと思う。


また細かいことでは、慰謝料の額の疑問も残る。三悪人についても、あと一押し欲しかった気がする。


救いだったのは。

杉村が赤い自転車に乗って旅立てたこと。

そして……

to be continued……


これって、杉村三郎がいつかブラウン管に戻ってくること?調べたら、宮部みゆきさんが、このクレジットを入れるように言ったとか。

なら、来年かさ来年。また杉村三郎に会える?おそらく探偵の?


物足りなかった最終回は、次に続く楽しみの始まりだと捉えればいいのだ!

「そう、多くを望んではいけない(笑)

このドラマを見れて、私ももちろん幸福だった^^」