これはフィクションです。


新年度に当たって所属する品質保証部のミーティングが
あった。本年度の方針についての説明会だ。
FMEA、PDCA、DRが何とやらと横文字も多い。
前年度はこれこれこうで悪くはなかったが良くなってい
る訳ではないという話だった。
こういうところがこうだったがそこのところをこうして
ああして...、とか言っている。色々施策が列挙されてい
る。

『私たちの目標は不良流出ゼロが基本です。』

『またか』と思った。
前任者もその前の人も同じ思いでやって来ただろうに。

私には不良はゼロには出来ず、従って流出もゼロには出
来ないという妙な確信がある。

良く管理された工程から生産される製品の品質は正規分
布に従うと言われている。
正規分布の曲線はX軸と交わることが無く、従って理論
上ゼロにはならない。
そこを語らずに他の事ばかり淡々とされる説明には虚し
さを感じてしまう。

いつも施策ありきなんだよな。

品質の目標は着荷品質を0.3%にすることを目標とし、そ
れに向けて社内品質を管理することを当面の目標とすべ
きというのが私の意見である。目標達成のためにあらゆ
る手段を講じるべきで、決して施策ありきではいけない。

0.3%という目標値には意味がある。計算によって顧客ク
レームから目標と現状の乖離が明確に分かる。
実力が足りていないのか、顧客との間の取り決めに曖昧
さがあるのか見極めることが出来る。
これらのことは目標を0としたのではほぼ分からない。

またこの値は工程能力指数の1.0を表している。十分では
ないがまずまずという評価。勿論気を抜けば即不十分に
陥る危うさはある。しかし顧客満足にしてもまずまずと
思う。極端に悪い印象は与えない値。

工場がこの値を維持できていれば結構順調に稼働してい
ることになる。値で工場の状態を推察できる。正確な数
字で管理されているか見極め出来る。

不良率が凄くいいのに製品の停滞やクレームが絶えない
というのは不良率の算出について調査する必要がある。
値と状態は連動している。片方が良くてもう一方は良く
ないということはない。
この会社では評価が正しく行えていないと思う。だから
方針に鋭さがない。

私の頭の中は持論の素晴らしさに陶酔している。
『しょうがない、質疑の時間に教えてやろう。』
40分ほど経過して説明は終わった。いよいよだな、
『それではこれで新年度方針説明会を終わります。』





説明会は一方通行であった。