「後見人になっているが、いざというときどうしたらいいんだろう」
以前に書いた記事のうち、もう一つ考えられるケースです。
もし、後見人ではなく、年老いた母親の将来のために「任意後見契約」を結んでいる状態であったとしたら・・・。
その場合、まず考えられる「いざ」というときの最初の一歩は、お母様の判断能力が低下したときから始まります。
士業等の専門職で任意後見契約を結ぶ場合は、その前から事前に委任契約を結んだりして、認知症等ではないけれど、なんとなく不安・・・になってきた状態のときにも事務を代理してもらったり、見守り契約によって電話や訪問してもらうということも可能です。
親子で任意後見契約を結んでいる場合には、不安だったら一緒に銀行窓口に行くこともやっているかもしれませんし、互いに時々、電話をしたり、親の家の覗きにいったりしていることもあろうかと思います。
お母様が判断能力が低下したら、まず任意後見契約を結んでいる子供は、家庭裁判所に対して「任意後見監督人選任の申立」をしなければいけません。
これをしないと、任意で結ばれた後見は開始しないのです。
法定後見の場合は、監督人がつく場合もありますが、つかなくても後見開始の審判が確定されれば後見は始まります。
法定の場合は、家族であっても、審判の申し立ての段階で家庭裁判所が「この人は後見人に適しているかな」と審理します。
もし、私の母が認知症になり、(法定)後見の審判申立書の「後見人候補者」欄に私の名前を書いたとします。
しかし、家庭裁判所が調べた結果、
「お母さんの話を聞いたり、面倒を見たりすることは得意な娘だけど、なんと財産管理は全くダメでこれではお母さんの預貯金の管理はおろか、食いつぶしてしまうというような浪費家だ」
と判断した場合、恐らく、いくら私が一人っ子だといっても、家庭裁判所は後見候補者から外してしまうでしょう。
法定後見の場合は、ようするに後見人を決める審判の中で、家庭裁判所のチェックがあるので、監督人がつかない場合もあります。
しかし、任意後見は、なにせ、本人がしっかりしている間に契約をしている人です。
公正証書で契約は作成されますが、どんな適任者がなっているかは疑問です。
本人が「この人!」と思って契約をしたので、その思いを尊重しながらも、監督する人を付けてもらう・・・監督人を選んでください・・・と申し立てるのが、任意後見においては、最初の一歩となります。