高圧系統用蓄電池のジャンク品がこれからたくさんデビューしそうな勢いだ。

高圧はHV。系統用蓄電池はBESS。

 

太陽光発電、風力、バイオマスは系統への垂れ流しで送配電会社にFIT売電あるいはアグリゲーターに売電(その先はJEPXなど)でkWhを稼ぐビジネス。夕方の売電はタイマー仕掛けでもよい。

だが、BESSは違う。充電するための電気は無料で買えないのでJEPXから安いときに電気を買って充電する必要がある。

巷では出力制御時の0.01円/kWhで買って、夕方の電気代が高いときに売るアービトラージ(鞘取り)で儲かるわかりやすいトークだが、その出力制御時の0.01円/kWhの期間は需要閑散期のせいぜい10日から九州では数十日に限られる。

原発が再稼働したら出力制御が発生する0.01円/kWhの期間が増えるかもしれないが、高圧系統用蓄電池(HV-BESS)に出力制御指令がかかれば動かないのでどうにもならない。
BESSの宿命として稼働率を高めるため毎日充放電しなければならないし、JEPXのkWh取引だけでは投資回収するのが難しく、容量市場と、あまりボリュームがないが需給調整市場で大きく稼がなければならない。

 

その毎日の稼働だが、BESSは市場やアグリゲータとの安定的な通信が必須となる。

光回線接続は必須だろう。だが、EMSのメーカによってはゲートウェイ装置にLTE回線内蔵の物がある。送配電会社の出力制御に対応が主目的らしい。

そこで、光回線費用をケチろうとする事業者は4Gまたは5G LTEでアグリゲーターと通信をたくらむ。

光回線がない田舎の地域もある。

通信が肝と書いたが、雷サージ対策も必須で、統合接地かつ電源線と通信線の出入り口すべてにSPDを設備しない限り、すぐ雷サージでやられて動かなくなりBESSは単なる張りぼてになる。

低圧太陽光および500kW未満のミドル高圧しかやってない業者は雷対策の知識は皆無だ。知識を持つのは誰も知る高名バンカブルな特高EPC業者に限られる。でも特高EPCはHV-BESSはスケールが小さすぎてやらない。


2025年時点では需給調整市場の一次調整力(FCR)は参加者が少なく19.51円/30分でウハウハ儲かる状態だが、この需給調整市場に参加のためのEPRXテストの合格が難しい現実がある。特高EPCは知識を集積してやりきるが、零細EPCはできない。アグリゲーター担当の言語が理解できない可能性がある。

 

また、恐ろしいことに、HV-BESSは24時間連続稼働に耐えられないものもあるらしい。それは受変電設備のリレートリップなどいろいろな要因バグが絡んでいると思われ、高度なトラブルシューティング能力も問われる。

 

一方で蓄電池セルの分譲預託を用いた小口分譲型のHV-BESSは出資者から小口の資金を調達し、張りぼてのBESSを作るものであるが。張りぼてを作れば運用できなくても詐欺罪から逃れることはできるが、預託商法の違法性から逃れることはきない。 いわゆるPonzi scheme(ポンジ・スキーム)である。預託等取引に関する法律(預託法) | 消費者庁

 

なので、「動かないコンピュータ」ならぬ「動かないHV Junk BESS」が今後増えそうな予感がある。それはそれでJunk BESSのリパワリング商売が増えるかもしれない。

系統用蓄電池の接続検討申込がポスト野立て太陽光として2025年は急増している。

猫も杓子も接続検討申込をしているのだ。

 

接続検討結果に事業性ありと判断されれば、本申込を行い連系承諾済まで進めたいのだがそうは問屋が卸さない。

先般の「連系承諾 とは」でも述べたが、本申込で受付され、5%の連系保証金を支払えば一安心とは言えないのだ。同じ系統において先行事業者が連系承諾に進んだステージで再接続検討申込に戻されることが多発している。

 

再接続検討申込が必要なステージになったとき、送配電会社はOCCTOの送配電等業務指針第89条を持ち出してくる。

送配電等業務指針(接続検討の申込みを行っていない場合等の取扱い)
第89条 前条第1項にかかわらず、一般送配電事業者は、第79条第1項に掲げる場合において、次の各号に掲げるときは、発電設備等に関する契約申込みを受け付けず、接続検討の申込みを行うよう求めるものとする。

(一と二は略)

三  接続検討の回答後、他の系統連系希望者に対して送電系統の容量を確保したことによって送電系統の状況が変化した場合等、接続検討の前提となる事実関係に変動がある場合

 

太陽光発電の場合、潮流が2MWの枠に達するのはそうそうないが、ニッパチ高圧系統用蓄電池は案件1件が2MWだ。配電用変電所は到底無視できない。

田舎の配電用変電所は空き容量一桁台がほとんどで、1件連系承諾枠取りがされると再接続検討の憂き目に遭う。

 

本申込で不備なく受付完了後に再度接続検討される。この時に配変やローカル系統の送電系統容量が先行業者に連系承諾されるとバンク逆潮流不足となり、グレートリセットに等しい再接続検討申込からスタートとなる。接続検討回答日から1年以内であれば、接続検討料22万円は不要だが、経過していると22万円が求められる。
再接続検討申込は1億円を超える高額な負担金が予想されるのでオワコンだ。なお、送配電会社から再接続検討申込のオファーの時点で続行を辞退すれば5%の連系保証金は返却される。

 

なお、東京電力管内においては2025/11時点で千葉の松戸発電所や我孫子変電所の高圧フィーダに上位逆潮流可能な空容量があるようだが、この場所は市街地かつ土地の価格がとても高いし、騒音苦情も予見されるので、系統用蓄電池の開発が簡単に進められない事情がある。猫も杓子も価格の安い遊休地でやろうとするので。

 

 

 


 

特別高圧受電の系統用蓄電池の場合、受変電設備はコンパクトスペースのガス絶縁開閉装置が採用される。

GISはGas Insulated Switchgearの略。

GISの仲間にキュービクル形ガス絶縁開閉装置(C-GIS: Cubicle-type Gas Insulated Switchgear)もある。

 

GISは避雷器(LA)、接地開閉器(ES)、断路器(DS)、遮断器(GCB)、接地形計器用変圧器(EVT)、送配電会社手配の計器用変圧変流器(VCT)で構成され、SF6ガスに封入されている。


50MVAクラスGISのVCTは丸いコブが3つあり、1つはVT、残り2つはCTである。

なお、系統側に設備される保護リレー用CT(PoC計測も兼ねる)はGISに含まれず、外部ブッシング受けである。

 

高圧の受変電設備は日本ではキュービクルと呼ぶが、特別高圧はスイッチギアだ。

 

略称遊びをする。

キュービクル:QB

 キューピーマヨネーズを連想し、キューピクルQPという人も結構いる。

 本当はCB(Cubicle)なのだが、CBはサーキットブレーカと混同するからあえてQBと呼称しているのだろう。

スイッチギア:SWGR

 SGは略しすぎか。でも工場にスイッチギア部があればSGブと略しそうだ。

 

 

連系承諾とは送配電会社への発電設備の系統連系が承諾されること。
本承諾をもって、電力広域的運営推進機関の送配電等業務指針第97条に基づき、系統連系希望者のために確保していた送電系統の容量が確定される。
この後、残りの工事費負担金95%の支払いを求められる。また、工事費負担金額がおおむね1億円を超える場合は、分割払いのための工事費負担金契約が締結される。 

連系承諾以降の当該発電設備に関する接続検討申込は、軽微な変更と判断されれば要否確認依頼の取り扱いとなる。 
連系承諾の名称は送配電会社によって異なる。こちらが参考になるだろう。

fip_setsuzokudoui.pdf

案件販売(ID取引)をする場合、連系承諾済の案件でないと安心できない。
知らない関係者がとても多いのだが、接続検討申込回答のみで、本申込していない案件は何の価値も生まない。
なにしろ、同じ地点の接続検討申込は複数業者が同時にできるからだ。実際、それを利用した詐欺が存在する。
 

なお、本申込(発調、接続供給、系統連系)したとしても、本申込時に再度接続検討されるので、上記の送電系統容量が他社に確定されるとバンク逆潮流不足となり、グレートリセットに等しい再接続検討申込からスタートとなるので注意が必要だ。
再接続検討申込は1億円を超える高額な負担金が予想されるのでオワコンとなる。

 

 


 

接続検討申込書の様式2に以下の記載がある。

 

(1)アクセス設備の運用開始希望日(一般送配電等側設備への接続希望日) 
(2)発電設備等の連系開始希望日(試運転)
(3)発電設備等の連系開始希望日(営業運転開始日)

 

ここで用語の定義をする。

系統連系とは「発電設備などが商用電力系統へ電気的に接続されること。発電設備が逆潮流するかしないかを問わない」

PAS,VCB(GCB),VCT,計量器が送配電会社TSOの管理下となる日でもあり、運用申合せ開始日だ。

なので、発電設備として接続検討申込をしたのであれば、(1)は系統連系希望日であり、受電日ではない

 

(2)連系開始希望日(試運転):これは系統への逆潮流(逆潮流をしない場合、発電設備が所内で発電自家消費する日)をする日だ。

 

なぜ、(1)を受電日といいたくなるのは、(2)で発電設備をスウィッチ・オンヌして、系統に逆潮流するから系統連系希望日と思いたくなるからであり、これと区別して、(1)を受電日と定義した。それは間違いなのだがそのように錯誤する業者がほとんどである。

 

(3)営業運転開始日:Commetial Operating Date(略称COD)とも呼ばれる。

 FIT/FIPの太陽光発電設備であれば、買取期間開始予定日(受給開始予定日)

 系統用蓄電池であれば、アグリゲータに運用管理を引き渡す予定日

 

なお、希望日はすべて月の始めにする。正確に言うと暦の上での営業日だが、1日にしている。

アグリゲーターは(1)の系統連系日を電気の供給開始日とする。月単位の管理なので、月末日を指定すると1か月分費用が無駄になる。

 

 


 

系統用蓄電池がホットになっている理由として、需給調整市場の一次調整力(FCR)のΔkW入札上限価格が19.51円/ΔkW・30min ということが挙げられる。各TSOであんまり参加しておらず未達なのでこの上限価格で応札できる現状がある。

 

ところが、衝撃的な記事が飛び込んできた。

2026年度から7.21円/ΔkW・30minに下げる提案が委員会でなされたのだ。多分そうなるだろう。

これは日本の系統用蓄電池マーケットがレッドオーシャン化することを意味する。

単純に一次調整力の応札しか考えていない零細業者もあるようだから。フルマーチャントでやらないと無理。

 

 

需給調整市場について 2025年10月29日 資源エネルギー庁

系統用蓄電池のバッテリーは低価格の中国製リチウムイオン電池(LiFePo4)が主流だ。

他に、NAS電池やレドックスフロー電池がある。これらはメイドインジャパンだ。

しかし、2025年10月31日に日本ガイシのNAS電池が事業撤退するニュースが飛び込んできた。

となると住友電気工業のレドックスフロー電池も採算面で事業撤退が予想される。

 

2025/10/5の深夜に発生した東急田園都市線 梶が谷駅の衝突脱線事故について考察する。

 

一部どこかのコピペを引用する。

鉄道の役割は安全・迅速・正確・快適に乗客を目的地に輸送すること。
安全輸送を担保する設備の一つが信号保安設備であり、以下4つで構成される。

  1. 列車運行管理装置(PRC・TTC・ITC)
  2. 自動列車制御装置(ATS・ATC)
  3. 踏切保安装置
  4. 連動装置

東急は古くから駅単独てこ扱い人員の省力化を目的に京三製作所製の列車運行管理装置を導入し、とある場所にある指令所から全線を監視制御している。

また、自動列車制御装置は地上信号機(Way Side Signal)でなく、CS-ATC(Cab Signal ATC)の導入に熱心で、最新型はATC-Pと名付けているようだ。

踏切保安装置は東急田園都市線にはない。

ポイント(転てつ器)のある駅には連動装置が設備されているが、ATCと親和性が高い電子連動装置にリプレースされている様子。

 

今回の脱線衝突事故の原因だが、信号保安の根幹をなす最後の砦、連動装置の設定ミスのようだ。

 

上り3番線から5番引上線に向かう入換信号機の進路鎖錠条件に抜けがあり、転線中にCS-ATCのOver Run Protectorが動作し、緊急停止した回送電車最後尾の軌道回路は連動装置が在線検知し、TTCにも送られ、回送列車・上り各駅停車列車ともに列車追跡機能は働いていた。しかし肝心かなめの入換信号機の鎖錠が解けたので、TTCの進路制御機能が上り3番線場内信号機を反位(進行現示)にできた。その進行現示は上り各駅停車列車のCS-ATCに伝えられ、事故につながったのだろう。

 回送電車末尾の軌道回路を引上線入換信号機の進路鎖錠にセットしておけば、TTCの進路制御機能は上り3番線場内信号機を反位(進行現示)にできないので今回の事故は起きなかった。つまり接触限界の微妙な位置に停止したことで引き起こされた事故のようだ。
 

2015年3月の線形改修時からそのミスに気付かなかったとのことであるが、電子連動装置には連動図表作成支援機能がなかったのだろうか? 

今回、設定ミスとされた進路鎖錠条件をセットしない場合、上り3番線から5番引上線へのギリギリ転線で上り3番線場内信号機を反位(進行現示)にできるのでダイヤ乱れをわずかながら回避できる。だが、上り3番線からの当該転線は、1日に1回でしかも深夜に限られるのでそこまでダイヤ乱れを気にすることはないと思うのだがどうだろうか。

系統用蓄電池の建設費用はエントリークラスの高圧のニッパチ(2MW/8MWh)であっても安くて3億円かかる。

IDホルダーが自社で建設工事するにしてもコーポレートファイナンスが通らず、調達費用の割合が半分を占める蓄電池の部材調達ができないのでFIT太陽光発電のように仕込み完成売りでの建設工事はできない。

 

また、工事請負するにしてもミニマムが3億円なので特定建設業許可業者しかできない。
(発注者から直接(元請負人として)請け負った工事について、5,000万円以上となる下請契約を締結する場合は特定建設業許可業者でないといけない。2025年2月1日に金額アップ)
建設産業・不動産業:建設業の許可とは - 国土交通省

ハードルが高いのが実情だ。

 

特別高圧の系統用蓄電池においては50MWスケール(50,000kW、5万キロワット)があります。

もちろん電圧降下率2%を維持したドループ制御にて50,000kWの充電を蓄電池にします。

系統連系後は使用前自主検査も課せられてますからフルパワーの充放電試験は必須です。

 

ですが、よく考えてみると送配電会社にとっては5万キロワットの充電はとても痛いことなのです。

いきなり5万キロワットの消費をされたら属地TSO管内のどっかで発電の穴埋めをしなければならないですよね。

 

系統用蓄電池の暗部を知った気がしました。