エレベーターを待ってると声をかけられた・・・振り返ると副社長だった・・・
「美夏さん良いのですか?」
「副社長・・・この会社・・・よろしくお願いします」
「本当に良いのですか?美夏さん・・・あなたが社長でも誰も文句は言いませんよ?」
「いいえ私なんかじゃダメなんです・・・私は人の上にたてる人ではない・・・全社員の生活を背負うのは荷が重すぎます・・・だから副社長を推薦したんです・・・副社長なら社員の信頼も厚い・・・安心して任せられます・・・だからどうかお願いします」
「・・・分かりました・・・美夏さん一つ聞いても良いですか?」
「何でしょうか?」
「告発したのはあなたですか?」
「・・・はい」
「そうですか・・・すみません」
副社長は何十歳も下の私に深々と頭を下げて謝った・・・
「顔あげて下さい」
「そんな事させてしまって申し訳ない・・・私がちゃんとしていれば・・・」
「気付いてたんですか?」
「はい・・・でもどうすることも出来ませんでした・・・それにあなたの結婚の事も・・・川田は業界でも評判の悪い男でした・・・それを止める事も出来なかった・・・本当に申し訳ありませんでした」
そう言ってまた頭を下げる副社長の肩を掴んで
「良いんですよ・・・その変わり・・・じゃないですけど・・・この会社の事よろしくお願いします・・・何百人もの社員を路頭に迷わせないで下さい」
「はい」
「絶対に建て直して下さいね・・・信用を取り戻すのは大変です・・・どうかお願いします」
「分かりました!必ず何とかします・・・その時は必ず戻って来て下さい」
「・・・いえ・・・私はもう戻りません・・・ですから陰で応援しています・・・お元気で」
「・・・美夏さんもどうかお元気で」
「ありがとう・・・」
そう言って私は会社を後にした・・・タクシーでホテルまで戻りスーツを脱ぎ熱いシャワーを頭から浴びた・・・何故か流れ出る涙を止められなかった・・・
何が悲しいのか自分でも分からない・・・だけど次から次へと溢れ出る涙をどうする事も出来なかった・・・バスルームを出てワインを飲み続けた・・・その間美月から連絡が何回かあったけど・・・出る気にもなれなかった・・・
ごめん美月・・・今日は何も話したくないよ・・・明日電話するからもう少しだけそっとしておいて・・・明日になれば必ず元気になるから・・・お願い・・・
後は野田さんの取材だけだ・・・でも・・・とにかく今は休みたい・・・ゆっくり何も考えず眠りたい・・・疲れたよ・・・
数日後野田さんからの取材を受け全てを話した・・・これでやっと終わり・・・長かった・・・彼と別れて半年・・・逃亡者のような生活を送り・・・この騒動もこれで終わる・・・
野田さんの書いた記事はほとんどの事がカットされていて・・・私にとって良いように書かれていた・・・野田さんに電話をすると・・・私の事を考えたら全てを書けなかったって記者としてまだまだだねって言って笑ってた・・・
ありがとう野田さんこの御恩は一生忘れません・・・今度お逢いする時は胸を張って逢える自分でいたい・・・心の底から感謝した・・・
こうやって周りに助けられて一人では何も出来ない・・・今の私に誰かを助ける事なんて出来ないと思う・・・だけどせめて誰かの役には立てたら・・・そう願わずにはいられなかった・・・
続く・・・