セイの法則と経済白書 | 秋山のブログ

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政府はH27年度版の経済白書をまとめたとのことだ。ところが紹介記事から判断する限り(本来は原文にあたるべきではある)、政府は、官僚は全く経済を正しく認識できていないし、どうすべきかも全く分っていない。

『日本経済は現在、回復基調』→単なるプロパガンダ。GDPの推移を見れば言うまでもないだろう。

『日本の労働生産性が米国など他の先進国に比べて低い』→広大な土地等を必要とする農産物等は別としていかなる製品においても、同じ物であれば日本人は世界中のいかなる国の人間より一人当り多く作れるし、個数を同じにすればもっとも優れたものを作れるであろう。すなわち本来生産性が低いなどと言われる筋合いはないはずなのだ。実際に低いというデータが出ている理由は、労働に対してその対価を適切にもらっていないということに他ならない。価格というのは、慣習や独占性など様々な条件によって決定されるもので、尺度として適正かどうかはかなり疑問があるものだ。

『生産性の高い企業に人材をシフト』→生産性が高い企業も多くの人間が移動することで生産性が低い企業に成りかねない。需要に限りがあるかもしれないということを考慮できていないのだろう。実に近視眼的である。所謂セイの法則を信じているということに他ならない。

『イノベーションが経済全体の生産性向上にあまり寄与していません』→高い利益は独占性の賜物である。イノベーションの成果は、発明者の地位を利用して初めて得られる類のものだ。それがしっかりしている米国と日本の差があるだろう。

『研究開発をオープン化し、幅広い知見を活用する努力』→社会のためにそれはよいことだが、利益という点に関してはこれは真逆だ。

数を多く、又は質のよいものを作れるように進歩しても、その分多く、その分高く買ってくれる消費者がいなければ、経済は成長しない。そしてそれは消費者の収入が上がらなくては実現しない。一時的に消費者が借金をしてより多く払い、その賃金が上昇するという循環もありえなくはないが、増えた収入は賃金にまわらず、金融資産に対する配当にまわったりしている(それが続いたために、最早それも困難である。消費マインドが原因であるというは、既に馬鹿げた意見と言っていいだろう)。もともとは企業が支出を増やして循環の中心的な役割をしていたのだが、銀行の機能不全も手伝って全くうまくいっていない。国が企業の代わりにそれをすることに関して、家計と国の会計を混同した財政均衡主義者という大馬鹿者が邪魔をしているのも問題である。

記事は、規制緩和で技術の進歩を促すべきといった話になっているが、日本の問題はそれではなくて前述のお金の循環が原因である。十分な技術の進歩は日々実現されているが、格差拡大に利用されているだけなのである。この現実を国を取り仕切っている官僚が理解できていないことが、一番の問題と言うべきかもしれない。