VARモデル | 秋山のブログ

秋山のブログ

ブログの説明を入力します。

マクロ経済モデルの現状から。

DSGEモデルに対して、計量経済学のVARモデルが紹介されている。提唱者のシムズの主張をとりあげてみよう。引用する。
『シムズの計量経済モデルへの批判は、各方程式の説明変数の決定方法が恣意的であることに向けられている。例えば、食肉への需要は、食肉価格だけではなく他の商品の価格によっても決定されるであろう。だが、計量経済モデルの慣行では、食肉の需要方程式を作成する際に、右辺(説明変数)から食肉以外の商品の価格は省略される。そうした部分均衡の方程式を集めてモデルを構築しても、悪しきモデルになるだけである、というのがシムズの論点である。シムズに言わせれば、モデルのある推計式の右辺に現われた説明変数は、他のすべての推計式の右辺に現われるべきである。実際の計量経済モデルがそうなっていないのは、モデル構築者が直観に基づいて説明変数を取捨選択しているからにすぎず、その前提は「信じ難い(incredible)」、とシムズは言う。それに対し、シムズが提示したVARモデルでは、すべてのモデル変数(被説明変数を含む)のラグ変数が各推計式の説明変数となる。そのため、計量経済モデルのように外生変数と内生変数を区別する必要はなく、すべての変数が内生変数となる。』

部分均衡の方程式を集めることの問題点の指摘には、一理ある。相互関係を無視してモデル化してもおかしな結論しかでないであろう。これをやらかしている例は、初期に紹介した(紹介された)UFJのレポートが典型だ。
しかし決定方法が恣意的であることがおかしいという話には賛同できない。極論を言えば、全く関係ないパラメーターを入れないことだって恣意的な選別だ。
『人間の主観が入り込む余地をなくす、という方向性である。これは、経済学を科学たらしめたい、という経済学者の強い欲 求の表れ』とあるが、本当の科学は、実証を繰り返して主観をいかに客観的なものにしていくかという作業だろう。

VARモデルの分かりやすい解説のページをあげておこう。そこには、サンマとプランクトンの例が上がっている。引用しよう。
『今年のサンマ   = 去年のサンマ×傾きA + 去年のプランクトン×傾きB   +切片C
今年のプランクトン= 去年のプランクトン×傾きD + 去年のサンマ×傾きE   +切片F』
これは分かりやすくするために変数は2つだけだが、多数あるのがVARモデルだ。多くの変数を導入、大量のデータを使えば、正しいモデルを作れると思われるかもしれない。ただそれはあまりにも単純な考えだ。例えば、このサンマとプランクトンだって、現実には赤潮のようにプランクトンが増えるとサンマが増えるだけでなくて、減る場合もあるといった状況がある。そうなると、このモデルはほとんど役に立たないことになるだろう。単純な傾きで表せるという仮定には、何の根拠もない。仮に単純な傾きで表せる場合であっても、それは実証により確認されるべきもので、確認されて初めて正当性を主張できるものであろう。
データと理論から、数式に取り入れるべき変数と数式の構造も判断し、数式を作る。数式を作ったら、経済学では実験で確かめるのは困難なので、後向きで証拠として弱い分、多くの例で検証を繰り返す。そういう方法論が経済学に必要なことであろう。