M.U.P 第2話 | BIGBANG ジヨン中心の何でもありの妄想日記*..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .

BIGBANG ジヨン中心の何でもありの妄想日記*..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .

妄想小説あり、イラストあり、日常あり、ダイエットありの、何でもありの何でも日記っ♪(´ε` )

楽しみましょう*\(^o^)/*

おそらく、ほぼ小説w








あの日、俺は自分の足下にある道がどこに続いているのか、俺の足は今どこに向かって歩いているのか初めて解らなくなっていた。
今までデビューという同じ目標に向かって一緒に歩いてきた仲間とそのデビューを賭けて争うことになるなんて、夢にも思っていなかった。
だけど、それは現実以外の何物でもなくてリーダーの俺は同じチームのみんなを引き連れて走らなければならなかった。
争う事へのプレッシャーと苦しさが俺の胸の中でどんどん大きく膨れ上がっていった。
だけどそんな苦しさを周りに悟られてはいけないと、あの時の俺は必死に虚勢を張り続けていた。
本当は自分でも、もうどうすれば良いのか何が正解なのか解らなくなっていたんだ。
そんな時だった。
彼女が俺の隣に座って話しかけてきた。
初めは少し驚いたけど、人懐っこく質問をして来るヌナを見てると思わず聞いて見たくなった。
『俺は何を見てると思いますか?』
我ながらおかしな質問をしてしまったと思ったけど、彼女は笑うでも馬鹿にするでもなく、俺のおかしな質問に真剣に答えてくれた。
彼女が言った【遠い未来】
それを聞いた時、俺の心の中は霧で見えなくなっていた視界がスッと晴れて遠くの奥の方まで続く道がはっきりと見えてきたような気がした。
近くの未来じゃない。
遠くの未来。
俺はただ俺が出来ることを全力でやって楽しめばいいんだ。
未来はずっと遠くまで続いているのだから。
そう思うとすっと心が軽くなるのを感じた。

それから何度か会って話をしているうちに純粋にもっとこの人のことを知りたいと思った。
彼女と過ごす時間だけが、練習生の俺でもカメラの前に立つ俺でもなく、ただのキムハンビンでいられるような…そんな気がしていた。


* * * *


「ハンビン、疲れてない?」
いつものように公園のベンチに並んで座り過ごしているとヌナが心配そうにそう言って俺の顔を覗き込んできた。

「ん?そう見える?」
「見える」
俺がはぐらかすように笑って答えるとヌナはそれを一掃するように真剣な表情を浮かべていた。

「誤魔化したら嫌だよ」
そう言ったヌナは本気で俺の事を心配してくれているみたいで、何だか俺はそれが無性に嬉しくてニヤける口元を誤魔化すように唇を噛んだ。

「ヌナはさ俺達が今出てるサバイバル番組、観てくれたって言ってたよね」
そう俺が尋ねるとヌナはコクリと小さく頷いた。

「もうすぐ終わるんだよ。だからさ…今やれるだけの事やり切りたい、じゃないと後悔が残るし…少しぐらい無理しないと…ね?」
そう言って首をかしげるとヌナは少し唇を尖らせてじっと俺の方を見つめていた。

「それは、わかる。だから、こんな遅い時間にわざわざここに来なくてもいいんだよ」
俺は内心“そっちか”と思い大きく息を吐きながら天を見上げた。

「いいの、俺が来たくて来てるんだから」
そう言ったはいいものの何だか無性に恥ずかしくなり首の後ろに自分の手を持っていくと俺は俯き横目でヌナの方を見つめた。
ヌナはその柔らかな瞳を俺に向けてふっと笑うとその白い腕を伸ばし俺の頭をグシャと撫でて「お疲れさま」と言って俺を見つめていた。
ヌナはよく俺の事を触る。
頭とか、肩とか、腕とか。
俺はまだ子供でそういった事にあまり免疫がないからヌナに触られると煩いくらいに心臓の音が早くなって、落ち着かなくる。
それと同時にきっと彼女は俺の事を男としては見ていないんだ、と実感して悲しさと悔しさで心の中がざわついていくのを感じていた。


{68359243-06D9-4C4B-A210-E6B2807441AE}



「だけど、無茶はしないで。お願いだよ?」
そう言うヌナに俺は笑顔を向けると「わかった」と小さく呟いた。



* * * * 



その日から暫くヌナには会えない日々が続いた。
正直なところ、このサバイバルが終わりに向かうにつれ、俺自身、体力的にも精神的にも限界が近づいているのを感じていた。だからヌナに会えたところで逆に彼女に心配をかけてしまうんじゃないかとも思い、会えないこの現状を無理矢理、俺自身の中で納得させていた。
けれど、そう思う一方で曲を作っている時も、振り付けを考えている時も、スタジオにいる時も、宿舎にいる時も、いつどこで何をしていても頭に浮かんでくるのは、俺に向けて微笑んでくれる柔らかなヌナの笑顔だった。
そんなヌナにどうしようもなく会いたい。
だけど今の状態で会うことなんて出来ないは解ってる。
だから俺は瞳を閉じて何度も何度も、彼女の姿を思い描いていた。

机の上に置いていた携帯が小刻みに震え、作業に集中していた俺はその伝わって来た振動に肩を弾ませた。
スマートフォンの画面にはどうしようもなく会いたかった彼女の名前が映し出されていた。俺は勢いよく携帯に手を伸ばすとゆっくり息を吐き出してから通話ボタンを押した。

「…はい、もしもし」
『あ!ハンビン?』
ヌナだ。
ヌナの声だ。

『今、忙しい?』
久しぶりに聞くヌナの声は相変わらず心地良くて、自然と頬が緩んでしまう。

「大丈夫、どうしたの?」
俺がそう尋ねると、ヌナは少し間を空けて話し出した。

『…元気?』
「ん?俺?まぁ、元気だよ。…ヌナは?」
『うん、私も元気だよ』
「そっか…』
二人の間に沈黙が流れた。
その沈黙のせいか、何だか徐々に緊張してきた俺はテーブルの上にあったペンを手に取り無意味にクルクルとメモ紙の上で転がせていた。

ーせっかくヌナから連絡をくれたのに…何を話したらいいのか分からない。

何か話さなければと思えば思うほど、俺はどんどん言葉を失って、そんな自分の不甲斐なさに大きく溜息をついた。

『…ごめん、やっぱり忙しかったよね』
「…っ違う!そうじゃないよ!』
自分が思ってた以上の声が出て正直言って驚いた。

『ごめんね、何だかだめだね…緊張しちゃって』
「え?緊張?ヌナが?」
思わず食い気味で尋ねた俺にヌナは電話越しにクスッと笑ていた。そんなヌナに気づいた俺は何だか急に恥ずかしくなって、座っていた椅子の背もたれにに体を預け、この恥ずかしさが悟られぬように平静を装いゆっくりとした口調で尋ねた。

「…どうして、緊張するの?」
『そりゃ、緊張するよ。電話なんて滅多にした事ないのに…』
拗ねてるように話すヌナが無性に可愛くて、もっともっと…って俺の心は欲張りになっていく。

「電話だと緊張するんだ、なのにどうして電話くれたの?」
ヌナは少しの間を置いて答えた。

『…どうしてるのか気なったの…最近会えなかったからね』
そう言ったヌナは今どんな表情をしているのだろう。
どんな気持ちで俺の事を気になったって言っているのだろうか。
機械を通しての声だけじゃ何も分からなくて俺は焦れ焦れとするこの想いを、溜め息と共に体の外へと大きく吐き出した。

「…ヌナ…俺、会いたいよ」
今の俺の正直な気持ちだった。

『うん、会いたいね』
不意にヌナの口から放たれた“会いたい”の言葉に大きな心臓の動きが、俺の胸を下から大きく突き上げた。
今この時に、好きだ。と伝えてしまおうか。
これ程までの初めての熱情を…
俺の呼吸を止めてしまうほどのヌナへの想いを…
今この瞬間の勢いに任せて。
そうすればヌナは俺を男としてその澄んだ瞳に写してくれるだろうか。
それとも今、俺に向かって開かれているその扉さえも固く閉ざしてしまうだろうか。
そんな不安がよぎった瞬間に俺の口はまるで縫い付けられたようにギュッと結ばれて、全く開くことができなかった。

『…ハンビン?』
心配そうに俺の名前を呼ぶヌナの声が耳の中でこだまする。
この柔らかく優しく俺の名前を呼ぶこの声を、俺を見つめるその温かな眼差しを失いたくない。
俺はまだ子供で何もしてあげられない。自分の想いを伝える勇気すらも持ち合わせていない。だから、俺に今できる事…

「ヌナ、このサバイバルで俺らのチームが勝てたら…話したい事があるんだけど…聞いてくれる?」
俺の中のなけなしの勇気をかき集めて精一杯の気持ちを込めて伝えた言葉に、ヌナはいつもの柔らかい声で『いいよ、勝てたら聞いてあげる』と答えてくれた。ただそれだけの事なのに鼻の奥がツンとして泣きそうになっている俺はやっぱりまだ子供なんだと実感する。
そんな自分を悟られないように口早に挨拶をして電話を切った。

勝たなければならない理由が、また一つ増えた。

俺はスマホをテーブルの上に置くと、パソコンの電源を入れ編曲の作業に戻った。作業室の中には俺自身の息遣いと忙(せわ)しくキーボードを叩く音だけが響き渡っていた。 














M.U.P 第2話             fin...











※画像はおかりしました。