マイフェアレディ初日
霧矢大夢さんの主演する「マイフェアレディ」の3年振りの再演。初日の観劇にいってきました。まずは霧矢ファン目線として・・・あ~可愛い。3年経っても全然魅力が衰えない、どころかご自身も女優業がだんだん板についてきたのか余裕も出てきて表情も柔らかく、それでいて凛としていてさらに霧イライザに磨きがかかっていました。そして懸念していた「高音域」の歌。努力なさいました。もうお客様からチケット代をとっても文句はでないでしょう。やや不安定だったり身構えて声を出そうとする硬さがチラリと垣間見えるけれども それはファンとして異常なほど彼女に注目しているからであって 演目を楽しみに来ている方にとっては気にならない程度ではないかと思いました。高い音域のときに「正しい姿勢、正しい口の開け方」でレッスンを重ねたのか 見事にお口をあんぐりと縦長にあけて目を大きくさせて歌っているお顔が愛おしいったらありません。もう私が彼女を生徒として「よくやった」とギューっと抱きしめたいくらい。とにかく「可愛い」 霧矢さんに対する’可愛い’はありとあらゆる称賛と尊敬とを含んでいるのです。単に容姿や演技という表層的なものではありません。イライザに関してはこの言葉が第一幕目で何十回も私の頭の中にポコポコとわいてくるのです。それは劇場でお会いしたファンの方 間違いなく全員そうだと思いますよ!!さて、演目としてなるべくニュートラルな目線で意識して思い出してみます。この演目について前回も思いましたのは「マイフェアレディ」といえば映画が有名です。私自身も映画を観て育ちましたし、イメージは「淡いロマンスが生まれる」という主演のO・ヘプバーンの魅力が何よりも強い印象の個性的な恋愛映画の一種でした。しかしこの舞台を霧矢さんが主演ということで初めて「内容に目を向けてじっくり観てみた」のですが・・・・私の第一印象は「英国階級社会への風刺」「当時の男と女の社会的地位の差への風刺」という二つの大きな対比だったのかということ。それに気づいてからコヴェントガーデンでの場面が非常に精彩を放ちはじめ、ヒギンズ教授の室内で表現される上流階級との対比に目が行くようになりました。風刺の一つは英国の階級社会の壁。ほんの数か月の言葉のレッスンやにわか仕込みの立ち振る舞いで乗り越えられるなんてことはまずありません。これは究極の理想像であり、二人の恋愛らしき関係への発展の示唆で終えるところも「だったらいいな」の世界です。恋愛というのは理屈ではありませんから、しばし奇跡的な化学反応ももたらします。そんな説明のつかない男女の感情がうまく作用して階級間に人間としてお互いを見る気持が少しでも生まれる土壌ができたら・・・と思わせるものでした。最後の最後まで「だったらいいな いいな いいな」が続き結論は観客次第。もう一つは当時の男女の社会的立場。女性は常に男性の傍らでお人形さんとして望まれる立ち振る舞うべきという感覚が強かった時代。自分の意思で考え反論して対等に渡り合うということは少数派だったでしょう。イライザを通して表現されているのは その日暮らしの貧困から抜け出すにまず自分を知る、そして社会で対等に扱ってもらうための道具(この場合は上流階級の言葉)を手に入れる、そしてその道具を自分で消化し使いこなし、表層的な外部だけではなく内部からその人を表現できるまでに高める。知識は得ただけはただの知識、自分の肉や骨として初めて教養となるとかつて恩師に言われたことがあります。その時の言葉をイライザの成長をみて思い出しました。ヒギンズ教授は自分が知識を与え、その成果が今まで自分の作品としてのお人形が自らの意思で動きだすことまでは想像できなかったのでしょう。動きだしたお人形によってヒギンズ教授もまた人間として成長させてもらったと思えます。対等な人間同士として向きあいイライザの魅力に気づく。最後のシーンは淡いロマンス仕立てですが・・・・そこは観客の想像しかありません。原作者のバーナード・ショーはミュージカル化に反対していたようですが確かに 表面は階級の差も乗り越えて恋愛関係に発展していくハッピーエンド風に娯楽作品として演出されているので原作とは別物と言ってもいいでしょうね。痛烈な風刺に満ちた一種の残酷な現実をちゃんと舞台として成立させるには出演者の圧倒的な魅力が必須条件です。その責務を我らがきりやんが担っている。ファンとしても背筋が伸びそうです・・・千秋楽まで気が抜けません。まだ感想は書いていきたいのですが実は 一番力を入れたいのは松尾貴史さん演じる「イライザの父」彼いなくしてこの舞台は成り立ちません、というくらい私はこの松尾パパを絶賛したい。イライザのパパが表現するものは「真っ当な感覚」人としてのバランス感覚を彼が一手に引き受けているとしか思えないほどマイフェアレディの登場人物たちは自分の目の前のことで手一杯ですから。ブラボー!Mr.ドゥーリトル と私は叫びたいくらいですよ。ではそれはまた今度