2015熊川哲也Kカンパニー「カルメン」
10/9,10の二日間だけ渋谷・オーチャードホールで行われた熊川哲也主演「カルメン」を両日観てきました。もう43歳のクマテツさん 後進の育成に力を注ぐことが多く自身が躍ることは少なくなりました。昨年 全国ツアーでこのカルメンを観たのが初めてでした。名声はもちろん存じ上げていましたし、いつかは観たいと思っていてなかなか機会がなかったのですが昨年念願叶って「熊川哲也が跳ぶ姿」を目にすることができたのです。昨年の驚愕。最初はただただその跳躍のすごさ空中での長い滞空時間に驚きました。そしてその良い意味でのショックが落ち着いてから彼の隅々まで神経が行き届いた動きのすべてに魅了されました。決して肉体のバランスに恵まれているわけでもなくいえ、むしろ海外のバレエダンサーと比べれば頭も大きく、脚も長くありません。Kカンパニーの看板である宮尾俊太郎さんは逆に長身で手足の長い王子様ですが・・・不思議とクマテツさんの動きがエレガントで宮尾さんの方が大柄な分 かえって俊敏さに欠けるようにみえるほどです。着地の時に音があまりしないのもクマテツさんの特徴あれは優雅に水面を進む白鳥が水の下では必死で足を動かしているのと同じで 筋肉の鍛錬が尋常ではないので柔らかく着地できるのでしょう。背景の努力や鍛錬が透けてみえる「頑張っています」というような押し付けがましさがない優雅で力強いクマテツ世界。今年は二日間の両方を満喫できて感無量です。感心したのは初日に空中で回転してお姫様に膝まづくような形で脚を曲げて着地するときにコンマ何秒という程度でほんの少しだけ鈍い瞬間があったのです。しかし翌日はそこはむしろ俊敏でナイフのような切れ味でピタっと着地おそらく自身でもそこを完璧にしなくてはと意識されたのでしょう。厳しく自分を律し、常に完璧な演技を目指す姿勢が伝わってきました。一流の人は皆そうですが「好きだからこそ努力する」んでしょう。ジャンルは違いますが私は体操の内村航平選手が大好きです。彼は常に「楽しい体操」を心掛けているとのこと。自分が好きだから、だから努力して完璧をめざし、常に上の目標を掲げる。好きだから、自分が楽しんでいるから、傍目には血のにじむような努力も自らの内側から湧き出る力、意志で乗り越え、観ているものに「負担」を与えない。こういう人を一流だと私は考えます。名声欲や競争意識だけで上位に立つものは観る者に負担を与えるように思います。どんなに世間で評価を得ていても見ていて気持ちが良くないなと感じる選手や舞台人は少なからずいるものです。ジャンルは違えども 私には熊川哲也 内村航平 霧矢大夢は同じなんです。競争相手は常に内なる自分です。外部の評価など彼らにはあまり大きなことではないかもしれません。バレエの好きな友人によればクマテツさんは指導者としてもとても優れていると。これからを担う若いバレエダンサーが「自分の心の上昇を目指して精進する」そんな意識をもって世界の舞台へ羽ばたいていってほしいと思います。贅沢ですがオペラの影ソロでバレエの舞台という総合的な試みがもっとあれば嬉しいですね。指揮者の西本智実さんはオーケストラのバックで数人のバレエダンサーが踊ったり、オペラの舞台とオーケストラのより一体化した舞台を試みでなさっていますが そのようなジャンルを超えた舞台は今よりももっと可能性が拡がるように思います。来週はようやく帝国劇場でのラマンチャの男観劇です。