[私の修業時代⑤スペイン料理店でバイト編]
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『お願いしま〜す!』とホールスタッフが洗い場に声をかけながら食器を置いていきます。
私も『ハイ〜!』と言いながらテキパキと洗い物を受け取り食器洗いに励みます。
洗い場の横に、厨房とお店の出入り口があり通路になっていて、コックさん達が出入りするんですが、
『頑張れよ〜!』と励ましてくれたり、
『先にこの食器から洗っちゃいな。』とアドバイスしてくれたり、少しづつ仕事の いろは をコックさん達が教えてくれるようになりました。
洗い場兼雑用係の見習いの身は忙しい!
調理師学校が終わったら夕方5時にスペイン料理店に出勤。
出勤したら先ずは倉庫に頼まれた食材を取りに行きます。ピーマンや玉葱、ニンニク、海老やタコの冷凍の塊やムール貝。米や小麦粉、赤ピーマンの缶詰、その日によって量や種類が多岐に渡ります。
倉庫から厨房に運んだ食材はぞれ適切に処理していきます。ニンニクや玉葱はポリ容器に入れて水に浸けて皮を剥く準備をし、、タコやイカ、有頭エビや芝海老は凍っているので流水に当てたり、、。
そこまでの下ごしらえの準備をすると、横浜駅の地下街に食材の買い出しに出発!
ディナーに使うフランスパンを今日は10本!いや昨日は足りなくなったから12本な!とか、
『おい!魚屋で鱈子も買って来てくれ!!』と頼まれ、夕方の地下街へ早足に向かいます。
買い出しから帰ると、先程段取りしてた玉葱やニンニクの皮を剥いたり、海老やイカの皮を剥いたり、
ムール貝の掃除、レタス剥いて冷水に浸けたり、、先輩コックの指定された方法で下ごしらえします。
そして少しづつレストランのテーブルがお客様で埋まっていき、夕方7時過ぎか8時くらいには、
『ウェーティング始まりました!!』とレストランスタッフが厨房へ大声で知らせてくれます。満席になりウェイティング開始です。
その頃には厨房も大忙し!
『3番テーブル パエリヤ マリスコス上がり!』とか、
『12番 メインお願いしまーす、、』や、
『西山! ◯番のサラダまだかよ〜!』などオーダーや催促、料理の進行状況が伝えられ、、
正に厨房は戦場と化すのです!
そして、
厨房のコックさんからは、洗い場の小僧の私にも、
『マサル! ライス皿足りねぇぞ、3枚!!』と催促されたり、
ホールスタッフから
『シルバーお願いしまーす!!』と、こっちも催促。
さっき洗った食器やシルバーを急いでタオルで拭き上げ渡すのです!!
そのシルバーをホールスタッフがテーブルにセッティングし、料理をやっと運べるのです。
私も洗い場をしながら、ライス皿にライスをよそって出したり、フランスパンをコース料理の数に合わせてカットしてオーブンに渡したり、、
忙しさもピークに達するのですが、この緊張感と連帯感が堪らなく心地良く、レストランや料理人の仕事に魅了されていくのです。
数年後にバルセロナオリンピックを控え、スペインブームに沸いていた老舗のスペイン料理店は、飛ぶ鳥を落とす勢いの連日の忙しさでした。。