ピンクのハート
ことしも、小径においてきた
お城のまわりの桜んぽのあとは
お堀端をくるっとまわって
ピクニックの公園をとおって
↑初夏にはいつも、ここでピクニック
さくらの小径へ
ちいさかった若木たちも
もう、すっかり一人前
時‥は
ほんとうに、はやくはやく
ながれてゆく
この小径を、さいごに車椅子を押して歩いてから
もう、九年
ふたりの桜んぽも
九回めの花
ことしも
桜のした
ふたり歩いた
日々おなじ道を
おなじ景色のなかを
歩いた
それでも、この時季とくに
日々、みあげる景色は
おなじ、ということは、まるきりなく
訪れつつある春をうけとめ
去りゆく花をおくった
日々の予定のまえにすこしでも‥花に逢いたくて
毎朝四時起き
日にあたって歩くせいか
日が暮れると、睡魔でふらふら
桜のした
ふたり歩いた
日々おなじ道を
おなじ景色のなかを
歩いた
それでも、この時季とくに
日々、みあげる景色は
おなじ、ということは、まるきりなく
訪れつつある春をうけとめ
去りゆく花をおくった
日々の予定のまえにすこしでも‥花に逢いたくて
毎朝四時起き
日にあたって歩くせいか
日が暮れると、睡魔でふらふら
それでも
あけがた、花に呼ばれるようなきがして目がさめる
そうして‥ことしも
毎朝、花とあいさつをかわしつづけていた
あけがた、花に呼ばれるようなきがして目がさめる
そうして‥ことしも
毎朝、花とあいさつをかわしつづけていた
ことしの花のはじめ
出逢った光景
ふと、おもった
母がいたら
元気で歩ける母がいたら
あんなふうに、ふたりで、まかろんをお散歩させていたのだろうか
と
母と娘とまかろんと
花のしたを歩いていく
あったかもしれないそんな時間
それでも、いまも
さんにん、ともに歩いているつもり
あの年
桜の散りぎわの黄昏どき
ふと、なぜか
唐突におもいたって
「桜に逢いにいこーよっ」
空模様もあやしいのに
ベッドの母を、車椅子へ移動
機械を使っての移乗はそれほど負担ではないけれど
途中の道は〜ふだん歩いていても気にもならない〜そんな段差もスロープも‥そして、点字のブツブツも‥
車椅子にはとてもタイヘン
当時、すこし心臓の調子がよくない娘、ヘルパーさんがいない移動とお散歩は、避けていた
それでも、なぜか
あのとき!いましかない!と
いつもの車椅子の樹からお城をみて
ほんとうは、大手門から母の樹やまかろんの樹
さっちゃんの樹、に逢いたかったけれど
時間切れのお天気切れ
そそくさと足早に、さくらの小径へ
もう、ことしのお花もおわりだね
また、来年だね
きっとね!
そんなこと話しながら
そうして
千姫の小径にさしかかったとき
パラパラ降ってきた
ねえねは濡れてもかまわない
しいていえば、母のお膝のまかろんも、濡れてもいいのかもしれない
それでも
母を濡らすわけにはいかない
雨具の用意もなく
「走るよーっ!しっかりつかまって!!」
母の片手は、車椅子の手すりをしっかり
娘の両手は、車椅子の押し手をしっかり
まかろんは、母の片手にしっかりつかまれて
娘の足は走った
ひたすら走った
そのとき、なんとなく、おもった
ああ、わたしの足は、母の足なんだ
そんなこと
それは、あのオペの翌朝に決めたこと
還ってきてくれた母をむかえたときに、自然と決まったこと
あの日の想いが、よみがえった
本降りになりかけた雨のなか
我が家にたどりついて
母をタオルでゴシゴシした
まかろんもゴシゴシした
桜んぽのつづきは、また来年ね
それが
さんにんいっしょのさいごのお花見
「来年」は、なかった
そのまえ数年、あれほど大好きだった‥
なにより愛していた‥
桜んぽも、全国めぐる桜旅も
母が倒れてから、ふしぎなくらい
桜の散りぎわの黄昏どき
ふと、なぜか
唐突におもいたって
「桜に逢いにいこーよっ」
空模様もあやしいのに
ベッドの母を、車椅子へ移動
機械を使っての移乗はそれほど負担ではないけれど
途中の道は〜ふだん歩いていても気にもならない〜そんな段差もスロープも‥そして、点字のブツブツも‥
車椅子にはとてもタイヘン
当時、すこし心臓の調子がよくない娘、ヘルパーさんがいない移動とお散歩は、避けていた
それでも、なぜか
あのとき!いましかない!と
いつもの車椅子の樹からお城をみて
ほんとうは、大手門から母の樹やまかろんの樹
さっちゃんの樹、に逢いたかったけれど
時間切れのお天気切れ
そそくさと足早に、さくらの小径へ
もう、ことしのお花もおわりだね
また、来年だね
きっとね!
そんなこと話しながら
そうして
千姫の小径にさしかかったとき
パラパラ降ってきた
ねえねは濡れてもかまわない
しいていえば、母のお膝のまかろんも、濡れてもいいのかもしれない
それでも
母を濡らすわけにはいかない
雨具の用意もなく
「走るよーっ!しっかりつかまって!!」
母の片手は、車椅子の手すりをしっかり
娘の両手は、車椅子の押し手をしっかり
まかろんは、母の片手にしっかりつかまれて
娘の足は走った
ひたすら走った
そのとき、なんとなく、おもった
ああ、わたしの足は、母の足なんだ
そんなこと
それは、あのオペの翌朝に決めたこと
還ってきてくれた母をむかえたときに、自然と決まったこと
あの日の想いが、よみがえった
本降りになりかけた雨のなか
我が家にたどりついて
母をタオルでゴシゴシした
まかろんもゴシゴシした
桜んぽのつづきは、また来年ね
それが
さんにんいっしょのさいごのお花見
「来年」は、なかった
そのまえ数年、あれほど大好きだった‥
なにより愛していた‥
桜んぽも、全国めぐる桜旅も
母が倒れてから、ふしぎなくらい
まったく興味をなくしていたのだけれど
母がいない、はじめての春から
まかろんとふたりの桜んぽが
はじまった
それは
それまでのような、北海道から九州まであちこちの桜を訪ね歩くわけではなく
ただ毎日、ひたすら、お城の桜に逢う
それだけの桜んぽ
母がいない、はじめての春から
まかろんとふたりの桜んぽが
はじまった
それは
それまでのような、北海道から九州まであちこちの桜を訪ね歩くわけではなく
ただ毎日、ひたすら、お城の桜に逢う
それだけの桜んぽ
母と笑った、タオルゴシゴシのあの時間
つづきは、また来年ね
きっとね
つづきを、歩いているのかもしれません
坊やとふたり
つづきは、また来年ね
きっとね
つづきを、歩いているのかもしれません
坊やとふたり
ことしも‥
ボクをお膝にのせて、桜んぽしてくれるママ
どこいっちゃったのかなあ
どこいっちゃったのかなあ
ボク、あれからずっと、車椅子みるたんび
追いかけてた
九年たったいまも、ふと、追いかけそうになるよ
そして、いまは、お膝にのせてくれる、やさしい手がみえなくなったから
自分のあんよ、で、とっとこ、します
この冬のあいだ、ちっとも歩けなくて‥ボクのあんよはストライキ‥
ねえねとふたり、いろいろがんばりつづけたけれど‥
春になって、桜のしたを、歩けるようになった
ママからの贈り物なのかな
ママの声がきこえた‥ような‥
ママはもう、あなたをお膝にのせてあげられないの
だからね
あなたは、しっかり、自分のあんよで、歩いてね
ねえねのそばで、しっかり歩いてね
ねえねから、はなれないようにね
くっついて寄り添って歩いてね
ママのぶんもね
ママの声がきこえた‥ような‥
ママはもう、あなたをお膝にのせてあげられないの
だからね
あなたは、しっかり、自分のあんよで、歩いてね
ねえねのそばで、しっかり歩いてね
ねえねから、はなれないようにね
くっついて寄り添って歩いてね
ママのぶんもね
ねえねにくっついて寄り添って歩きます
きょうもあすもあさっても
ことしもらいねんも
いつも、いつまでも
まかろんのお城の桜だより
・・・fin・・・
no.17
八重桜の小径、に続きます






























