初めて会ったはずなのに、何故か知っていると思った。
既視感。
まさか、こんな場所で再会するはずが無いと思って、失礼と知りながらもう一度顔を見てしまう。
静かで涼しげな目元、すっきりと筋の通った鼻、淡く色付いた上品な口元。
白くてふんわりした頬には、ほとんど化粧気が無い。
それでも薄化粧をしているのは、鈍感な男の目でも分かる。
この化粧が取れたら、目の前の人は学生時代のあのときのまま、何一つ変わっていないのではないかと思う。
そのぐらい、当時から大人びた雰囲気を持つ綺麗な少女だった。
少なくとも、自分はそう思っていた。
小柄だけど胸を張って凛と立つ姿は、転校生としてセーラー服を着て現れた時から変わらない。
飾り気の無いシンプルなパンツスーツを着ていると、わずかばかり背が伸びたのかなと感じる。
いや、背が伸びたと思うのは錯覚で、ヒールを履いているからそう思うだけかもしれない。
何も言葉に出せずに見詰めてしまうと、視線に気付いた彼女に不審な目で見返された。
目が合った。
気まずさを覚えるより早く、学生時代に置き去りにしてきた感情が湧き上がる。
目の前の人は他人の空似で、学生時代に出会った少女のはずはない。
年齢も違えば立場も違う、手の届かない人。
曖昧な記憶の中で、ふと沸いた懐かしさが過去の少女と目の前の女性を無理矢理繋げようとしているに違いない。
勘違いだと、忘れようと、不自然な勢いで顔を背ける。
背後から、床を打つヒールの音が響いてくる。
緊張が高まった瞬間、彼女はすぐ側を通り過ぎていった。
静かな、物言わぬ背中。
どこか淋しさを漂わせる、華奢な背中。
あの日の少女のはずがない。
だけど。
あの日の少女と変わらない。
ずっと忘れていた。
胸の内を打ち明けても、困ったように笑って立ち去っていったあの日の背中。
まるで魔法にでもかけられたかのように忘れていたのに。
きっと繰り返す。
恋に落ちた、遠い日の続き。
~久し振りの、わかる人だけ分かればいいシリーズ。
今回は「déjà vu」パラレル。