アマゾンのポイントが貯まっていたので、思い切って前立腺癌診療ガイドラインを購入してみました。

 

 

総論の疫学の中に、前立腺癌の予防が2ページほど記載されています。前回のガイドラインと異なり、今回のガイドラインでは、前立腺癌の予防に関する熱意が乏しいと感じました。引用されている文献は古く、新しい文献の引用が少ないです。化学的(薬剤による)前立腺癌の予防の記載は、ありませんでした。

 

1 大豆イソフラボン

大豆イソフラボンの誘導体にダイゼンがある。ダイゼンの代謝産物であるエコールは、エストロゲン受容体との結合能が高く(つまり、エストロゲン作用する)、抗酸化活性が強い。ジヒドロテストロン(DHT)に特異的に結合し、DHTのアンドロゲン受容体への結合を阻害する。

ダイゼンをエコールに代謝できるエコール産生者と非産生者に分けると、前者では前立腺癌発症が優位に低かった。エコール産生に関連した腸内細菌も同定されている。

前立腺生検陰性者を、イソフラボン投与とプラセボ投与に分けて、ランダム化二重盲検試験が行われた。エコール産生者では、イソフラボン投与によって、血中のエコール濃度が上昇した。65歳以上では、イソフラボン投与群で、有意に前立腺癌の検出率が低かった。

 

いぜん、自身がまとめたブログを示します。

発酵大豆食品とがんとの関係です。

 

 

2 緑茶

日本で行われた大規模前向きコホート研究では、40〜69歳の男性を追跡し、緑茶飲用と前立腺癌発症との関係を調査した。1日5杯以上緑茶を飲用する群では、1日1杯未満の群と比べて、進行性前立腺癌の発症が有意に低かった。

高度前立腺管内上皮過形成患者(PIN、前立腺癌の前癌状態)に、緑茶サプリとプラセボ投与に分けた研究では、1年後の前立腺生検で、前者では前立腺癌の発症が抑制された。

 

3 その他

セレニウム、ビタミンE、リコピン、ビタミンDの記載がありますが、前立腺癌の予防効果に議論がある、反対の結果がある、効果がっても弱いとのことです。食事に関する因子の検討では、民族による食習慣の違いを考慮する必要があります。日本人と欧米人では、食生活と代謝が異なっており、欧米人での結果を、即日本人に適応するには問題があります。

 

以前、ブログで紹介したことです。

癌の予防対策には、根拠があるものが示されていますが、癌にかかった後、癌の再発を防ぐ予防対策には、根拠があるものが、極めて少ないです。

 

 

今回の診療ガイドラインでは、臨床的な疑問(Clinical Question)に対する患者側の意見の記載があります。医学的妥当性(エビデンス)に対する患者側の意見は重要であると思いますが、別途患者側に特化した診療ガイドラインが出来ると書かれているので、今回のガイドラインへの患者側の記載は要らないのではないかと思います。

癌にかかった後、癌の再発を防ぐ予防対策のガイドラインができれば、生活の質を落とすことなく、患者は日常生活の中で、自身の癌再発を防ぐことができるようになります。

しかしながら、その様なガイドラインは無い?と思います。