お茶の世界では、5月は「初風炉」(しょぶろ)と言って、「炉」(ろ)から「風炉」(ふろ)に変わる、季節の大きな転換期になります。
そんな初風炉を代表するお菓子、今日は「唐衣(からごろも)」についてご紹介します。
(これまで何度も取り上げているので、一部内容が重複します)
「唐衣 着つつなれにし 妻しあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ」
か らごろも
き つつなれにし
つ ましあれば
は るばるきぬる
た びをしぞおもふ
それぞれの句頭に「か・き・つ・ば・た」の五文字を折り込んだこの有名な和歌は、彼が都に残してきた妻をしのび、杜若(かきつばた)が咲き匂う三河国八橋(現在の愛知県知立市八橋町の辺り)で詠んだといわれています。
このお菓子は、ただ5月の美しい杜若(カキツバタ)を表現しているだけでなく、歌の冒頭の唐衣のイメージを重ね合わせ、そこから「伊勢物語」(東下り)の世界へと導いてくれる、両方の意味を併せ持ったお菓子です。
(~以下、ネットから拝借した解説文~)
歌の意味は、「着慣れた唐衣(中国・唐風の衣服)のように、長年連れ添った妻が(都に)いるが、私はこんな遠く(東国)まで旅に来てしまった」といった内容。
伊勢物語の中では、あくまでも主人公を「昔男」としているが、在原業平とおぼしき人物とされています。
昭和50(1975)年5月、エリザベス女王が訪日した際に、桂離宮で茶席のもてなしがありました。そのときに供されたのが、「末富」(京都の有名な菓子屋)の「唐衣」だったそうです。
茶席菓子には、珠玉の物語があります。わかりやすい事ばかりが求められる現代において、菓子職人たちは「見た目だけじゃないですよ。造形や銘の背景には深い物語があります。気付いてください。見つけてください」というメッセージを込めています。
↓) こちらは「一日一菓」(木村宗慎先生)の図鑑から。
京都「末富」の「唐衣」です。注釈にはもちろん、先ほどの在原業平の歌が紹介されています。
葛飾北斎が全国の特徴のある橋を描いた11図からなるシリーズ「諸国名橋奇覧」のうちの一枚。本図は「伊勢物語」に杜若(かきつばた)の名所として詠まれた、三河の八つ橋を題材に取った作です。当時、八つ橋はすでに存在せず、この図は想像で描かれました。今でも、杜若(かきつばた)と八つ橋のイメージはよく知られています。
燕子花図屏風(かきつばたず)は、尾形光琳による18世紀(江戸時代)の屏風。光琳の代表作である。国宝に指定されており、日本の絵画史上でも特に有名な作品の一つである。伊勢物語の第9段の東下り、燕子花の名所・八つ橋では、「から衣きつつなれにし妻しあれば はるばる来ぬる旅をしぞおもふ」との記述があり、これは本作品の背景とされる。
この作品を保存している根津美術館では、毎年、年に1ヶ月だけこの屏風を見られる「燕子花図屏風展」が開催されている。
(↑画像はネットからお借りしました)(↓)なお、十数年後に描かれた、同じく光琳の作品である「八ッ橋図屏風」(メトロポリタン美術館蔵)は、燕子花図(かきつばたず)と同様に金地に燕子花が描かれているが、橋がジグザグに描かれている。題材は同じ「伊勢物語」である。
◆◆◆ ========================
《 シュミネ 茶道教室 》
~大阪・心斎橋~
(裏千家: 西田 宗佳)
【URL】 http://cheminee-club.com
【TEL】 06-6252-0560
=========================◆◆◆