翌朝、普段通りの朝がやってきた。



実は、お互い夜中に友達と飲みに行く、

という事は時折あったので、

昨夜の外出の事も佐久間さんには何も

言われなかった。



どうやら喧嘩の事も何にも思っていないみたい。



誰もいなくなった部屋の掃除をしていると、

玄関のインターホンが私を呼んだ。



「おはよう、愛ちゃん。」



「あーっ、あかねちゃん!」



立っていたのは、あかねちゃん。



私が一番最初に、佐久間さん経由以外で友達になり、

私の一番仲のいい友達だった。



あかねちゃんは、訪問販売のパートさんで、

私はあかねちゃんから定期的にトマトジュースを

購入していた。



このトマトジュースが、無添加で貴重なもので、

毎年、生産量が変わるものだった。



「愛ちゃん、最近何かあった?」



「えー何で何で?」



「最近、あんまり遊びに来ないから。」



「あ、寂しかった?あかねちゃん寂しかった?」



「んーん、ぜーんぜん。」



「もー、あかねちゃーん。もう超癒される!」



「何それ?」



二人とも笑った。



あかねちゃんの笑顔に、私はいつも救われる。



本当に元気になれる。




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「ねぇ、また誘ってくれる?」



「・・・だから、私が軽い女みたいな言い方はしないで。」



「ほかに言葉がないから。」



「・・・時間が合えば、ね。

正人は仕事忙しいし、私には家庭があるから。」



「分かった、じゃまた連絡するね!」



最後まで屈託の無い笑みで、私に別れを告げ、

正人の車は走り去っていった。



正直、驚いていた。



同時に、少し、屈辱ではないが、不思議な気持ちにもなった。



自慢じゃないけれど、私は可愛い部類に入る人間・・・だと思う。



言い寄ってくる男なんて腐るほど居た、特に若い頃は。



それが・・・何もなく真っ直ぐ帰宅?



こんな夜中にわざわざ来ておいて?



今までにない扱いをされ、私は戸惑っていた。



家に戻ると、時計はすでに一時近くになっていた。



さっさと寝なきゃ、お肌にも悪い。



あんまり深く考えず、私はさっさと寝床に就いた。



外はすっかり寒いのに、私はアルコールで体が熱くなっていた。




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「じゃ、送ってくね。」



「・・・は?」



正人の言葉に、私は言葉を失った。



「私、結婚してるの。」



「・・・知ってるけど?」



「旦那にバレたら困るの。」



「・・・まぁ、分かるけど。家の近くまでなら大丈夫でしょ?」



駄目だ、会話中に気付いたが、何か所々天然な部分がある。



「・・・じゃ、途中までお願い。」



「分かりました、お嬢様!」



お嬢様って・・・私、25ですよ。



正人の車は、素人が見ても分かるくらい、

スポーツカーみたいに改造してあった。



目立つなー、これは尚の事やばい。



「車、好きなの?」



運転中の正人に聞いてみた。



「車しか趣味ないからね。」



「違うでしょ、車くらいしか趣味になるものが無いんでしょ、

こんな田舎町じゃ。」



「まぁね。えらく地元を馬鹿にするよねー愛ちゃんて。

嫌いなの?ここ。」



「・・・大嫌い。」



「へぇー、珍しいね。普通、みんな地元好きなのに。

特にこういう田舎だとさ。」



「そうかな。」



私には、この町が嫌いな理由がちゃんとあった。




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「ね、あんまりモテなかった?何人と付き合ったの?」



「・・・9人かな。」



「えぇー、本当に?

それにしては慣れてない感じするね?」



「そ、そんな事ないけど・・・。」



更に慌てる正人。



なるほど、奥手なのかな、こりゃ。



それから、暫くは私が質問し続けた。



仕事の事や彼女の事、生い立ちなど。



正人は、こんな私によくそこまで話せるものだと

思うほど、何も隠す様子もなく会話を続けた。



時々正人が質問を返そうとしても、

「質問していいのは私だけなの!」

と、また滅茶苦茶な事を言って制した。



正人は、隣町に住んでいるらしい。

もともと別の店でアルバイトをしていて、

今の店に引き抜かれて店長になったんだとか。



今は、仕事が楽しくて仕方なく、

また全国にある数千店舗の中で、

トップになりたいとすら言った。



こんな田舎町で?という回答にも、

こんな田舎町だからだよ、と笑って答えた。



本当に、仕事が好きなんだと、私でも解かった。



彼女とはもう三年近く付き合っていて、

結婚も考えたりする事もあるらしい。



きっと可愛いんだろうなぁ、なんて考えたりもした。



二時間ほど滞在し、私と正人は店を出た。



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「・・・いるけど?」



「・・・じゃ、来たら彼女怒るんじゃないの?」



「まぁ、言えば怒るかもしれないけど。」



「うわっ、浮気じゃん。」



「・・・人の事、言えないでしょ。」



「私はいいの。結婚してるから!」



「なんだそりゃ・・・。」



うん、無茶苦茶勝手な私。



「愛ちゃんこそ、何で俺を誘ったの?」



「ちょっとー誘ったって言い方やめてよー。

私、何か軽い女みたいじゃん。」



「あ、ごめん、そんなつもりないから。」



「友達が欲しかったの。自分でもよくもまぁ言ったもんだって、

後から後悔したんだから。」



「えー俺は嬉しかったのに。

こんな可愛い人に遊ぼうなんて言われてさ。」



「・・・人妻口説いてどうしたいわけ?」



「そういうのじゃないですってば!」



「男なんて、みんな軽いのよ。

すぐに変な事ばっか考えちゃって。」



「友達だからそういうの、無いでしょ。」



慌てながら返す顔は、誰が見ても分かるほど

真っ赤になっていた。



可愛いやつ。



あんまり、女の子慣れしていないのかな。




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