それから一時間後、私はとある居酒屋に来ていた。



本当に来るのか?という疑問を抱きつつ、

明日のお弁当は何にしようか、

なんていう事を考えるほど冷静だった。



「こんばんは。」



聞き慣れた声に振り向くと、立っていたのは、

私服姿の店長だった。



「すいません、お待たせして。中、入りましょう。」



「あ、うん・・・。」



席に座るや否や、私は先に断りを入れた。



「すいません、もう私、飲んでるんです。」



「みたいですね。全然構いませんから。えっと・・・。」



「愛子だよ。佐久間愛子。」



「愛子さん。」



「やめてー気持ち悪い!」



「じゃ、愛ちゃんで。俺は正人。竹内正人。」



「ついでに、その敬語も気持ち悪い。」



「じゃ、敬語やめるね。」



そう言った店長、いや、正人は、

子供のような笑顔で話を続けつつ、店員さんに、

適当に注文をした。



「こんな時間で出てきて、大丈夫?

あ、真奈ちゃんはもう寝てる時間だね。」



「うん、もう朝まで起きないよ。

っていうかさ、何で来たの?」



「・・・何でって?」



「彼女いるって言ってなかったっけ?」




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「もういいよ、わかった。おやすみ。」



佐久間さんはそう言うと、寝室に消えた。



いつも、こういった争いは翌朝には綺麗になくなっている。



佐久間さんは本当に心が広い。



私は超わがままだけど、昔から、それを責める事はなかった。



しっかし、私は気分悪い。



この、夜お酒を飲む時間が、

どれだけ一日の中の楽しみになっている事か、

それをこんな気分で過ごすなんて。



何気なく携帯を取り出し、昼のメールを思い出した。



私は何も考えず、「今、暇だよ。」と入力し、

店長へと返信をした。



酔っぱらってるからなぁー、

何も考えられない。



するとすぐに返信が来た。



じゃあ、今からいっていいですか?



「・・・まじ?」



時間は10時、ちょっと危ない時間だけど・・・。



いいよ、飲みにいこうよ。



とりあえず返事をし、軽く化粧をし、

出かける準備をした。



あ、今日どんな下着だっけ。



・・・って、何考えてんだ私・・・。




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文面を読み、私は慌てて携帯をしまいこんだ。



こんにちは。

返事が遅くなって、すいません。

コンビニで貴方にアドレスを頂いた者です。

覚えていますか?

時間、いつなら空いていますか?



さて、困ったものだ・・・。



れなちゃんと別れてからも、

暫く思考回路が停止していた。



やばいなーこれは。



ついに私も年下の男と関係を持つのか。



年はとりたくない。



・・・じゃなくて!やばい・・・。



その夜、私は佐久間さんと喧嘩をした。



「何であのワイン、開けたの?」



「何が?」



「何が?じゃないよ、あれは今度の結婚記念日にって、

旅行の時に買ったワインだろ?」



「・・・そうだっけ?」



「ふざけんなよ、どういう感覚してんだよ。」



「そんな攻めなくてもいいじゃん!」



実は私、昔からかなりの酒好きで、

この手の喧嘩はしょっちゅう起こる。




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「愛ちゃん、それ言うの何回目?」



「・・・数え切れない。」



「そういう事。あんたら二人を見て、

そうなの?って言う人は少ないと思うけど。」



「んー・・・。」



確かに、傍から見れば仲のいい夫婦に見えるかも

しれないんだけど・・・。



もともとれなちゃんは、佐久間さんの同級生という事で、

私の友達、というわけではなかった。



佐久間さんは、どこに行くにも、私を連れて回った。



だから、佐久間さんの知り合いで私を知らない人は、

ほとんどいない。



いい奥さんに見られようという気持ちがあったのかな、

結婚当初は好きだったのかな、

みんな、私の言う事を信じてくれなかった。



「ピロリンピロリン」



「なになに、噂をすれば旦那からの愛のメール?

今お昼休みだよー愛ちゃん、みたいな?」



「そんなの、もらった試しないって。」



・・・知らないアドレス。



誰かアドレス変えたのかな。




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「・・・そりゃ無理だ。」



「でしょ?」



「うそーでも信じられない・・・。

愛ちゃん、正直いくつくらいに見えた?」



そう言われ、顔を思い出してみた。



確かに、若いとは思うんだけど、

落ち着いて見えるせいなのか、

正直年上と思っていた。



「・・・27、か8くらい。」



「だよねだよね!?

あーショックだなぁ・・・。

若いのは無理だ。」



「またすぐ見つかるって。

れなちゃんかわいいもん。」



「・・・嫌味じゃないでしょうね?」



「違う違う!笑」



事実、れなちゃんはすごく可愛かった。



結婚もだけど、彼氏がいない事すら、不思議だった。



「ならいいんだけどさぁー。」



いつの間にか届けられたランチを口に運びながら、

まだ疑いの目で私を見るれなちゃん。



「大体愛ちゃんはいいよねぇ。

結婚して、子供もいて。」



「良くないよー私、佐久間さん好きじゃないの。」



「・・・はいはい。」



「本当だってばー。」



もうすっかり呆れ顔になったれなちゃんに慌てて弁解する。



私は、佐久間さんが好きではなかった。




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