花粉症と遺伝
 
花粉症をはじめとするアレルギー疾患は、遺伝要因と環境要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。
また複数の花粉症の人がいる家庭は意外と多く、花粉症の多発家系があることは事実です。

「アレルギー体質」というのは遺伝的に決まっていて、遺伝するアレルギー体質を「アトピー」と呼びます。
連想するのはアトピー性皮膚炎で、その症状は例のカサつく皮膚です。
それに喘息・鼻炎・花粉症などを伴います。
そしてアトピーの患者さんは血液中のIgE抗体値が高いのが特徴です。

ということは、アトピー性皮膚炎や喘息などの疾患がある人は、体質的に花粉症になる可能性が高いということなので注意が必要です。

しかし、花粉症になるには様々な原因が考えられるので、家族に花粉症の人が多いから自分もとか、自分はアトピー性皮膚炎だから今年こそは花粉症になるのではといったことを気にしていても何もなりません。
それよりも予防策をしっかりと考えることが大切なのです。

日照量と花粉の量
 
高さ10mの開花直前のスギの木をビニール袋で被って花粉を全部採集したところ、その重さは2kgにもなったそうです。
この計算から、高さ15mのスギの木からは3kgの花粉が取れることになります。

また、スギの花1個の中に13,200個の花粉があるといいます。
そして枝1本に75,000個以上の花がつくといいます。
つまり枝1本に9億9千万個の花粉があるということで、ゾッとしてしまいます。

スギ花粉の量は前年の7~8月の日照量によって推定予測されます。
どの植物も光合成をして生きているので、最も日照量の多いこの季節に、曇りの日や気温の低い日が多ければ、花粉の量も少なくなります。
世界最初の花粉症
 
斉藤洋三先生が1963年に日本で初めて花粉症患者を発見しましたが、戦前はその存在さえ知られていませんでした。
花粉症関連の著書を著している耳鼻咽喉科の三好彰(みよしあきら)先生の研究グループが疫学調査のデータを核にして、様々な文献から花粉症のルーツに迫りました。
すると、日本人の国民病ともいわれる花粉症のそもそものルーツがイギリスにあることが分かりました。

19世紀始め、イギリスの農民が牧草を刈り取り、乾燥させるためにサイロに放り込むのですが、その際に目・鼻・喉にかけて強烈な痛みや痒み、涙、くしゃみ、鼻水、咳などが止まらなくなるという症状がありました。
これらの症状に熱が伴ったことから「枯草熱(hey fever)」と呼ばれました。

これを初めて医学的に報告したのはイギリスの学者J・ボストクという人です。
そして同国の医師C・H・ブラックレイは、枯草熱はイネ科植物の花粉が原因だということを突き止めました。
そしてこのときから枯草熱は花粉症と呼ばれるようになりました。
その後、花粉症は花粉がアレルゲンであることが判明しますが、当時はまだアレルギーという概念がなかったため、そのメカニズムが明らかになるまでにはまだ時間が必要でした。

しかし実は、人類は古代から花粉症と思われる症状に苦しんでいたことが古い記録に多く残っています。
世界で最も古い記録は、何と紀元前1800年のバビロニアのシュメール人の呪文に記された鼻アレルギーです。

そして紀元前460年頃の古代ギリシアの医師、ヒポクラテスが花粉症と思われる病気について記録しており、体質と季節と風が関係していると述べています。

また紀元前100年頃の古代中国にも、春になると鼻水や鼻詰まり、くしゃみなどの症状がよく発症するとの記録があり、花粉症の歴史は非常に長いことが窺えます。

花粉症によくないもの
 
鼻粘膜を刺激するものは控えた方がいいでしょう。
鼻の粘膜を刺激するものといえばタバコです。
タバコの害はそれこをあちこちで言われており、「百害あって一利なし」です。
タバコの煙は花粉症で敏感になっている鼻の粘膜を更に刺激し、症状を悪化させる原因になります。

刺激性の強い香辛料(唐辛子、コショウ、ワサビなど)も鼻の粘膜を刺激するので、できるだけ控えましょう。

アルコールはどうでしょうか。
少量のアルコールは食欲を増進する効果がありますが、摂り過ぎると良いことはありません。

アルコールは鼻に充血を起こすため、鼻詰まりの症状が酷くなってしまいます。
また、抗ヒスタミン薬を服用してからアルコールを摂ると吸収が速くなり、眠気の副作用が強く出ることがあるので注意しましょう。
風邪と花粉症の違い
 
風邪の場合のくしゃみ・鼻詰まりが続く期間は、せいぜい1週間といったところ。
1日しっかり休養を取れば治ることもあります。
しかし花粉症のそれは2~3ヶ月にもなります。
また、風邪の場合の鼻水は最初は水のようですが、段々と粘りが出てきて膿の様になってきます。

目の痒みは花粉症特有の症状であり、風邪にはありません。

熱はどうでしょうか。

風邪の場合は40℃を出すこともあるし、比較的高熱を発しますが、花粉症の場合は微熱程度です。
また風邪は熱に下痢の症状を伴うことがありますが、花粉症の症状は首から上に集中します。

風邪の症状はその日の天気に左右されることはありませんが、花粉症の症状は晴天で風邪の強い日は特に悪化し、雨の日や夜間は比較的治まります。
こうした症状の違いに注目すれば風邪か花粉症かの見当はつきますが、最終的には医師の診断を仰ぐべきでしょう。


普通は風邪の場合は内科、花粉症の場合は耳鼻咽喉科へ行きますが、科に関係なくアレルギーの知識はすべての医師に普及しているので、よりきめ細やかな対応をしてくれる医師を選びましょう。

大気汚染と花粉症
 
戦後の復興のために大量のスギが植樹されたのは、前回の記事『花粉症患者が増えているのはなぜ?』で説明しましたが、発症者増加の原因は実はそれだけではありません。

これも戦後の復興に関連していますが、高度成長期に代表される大気汚染です。
特にディーゼル車の排気粒子の主成分を常時吸い込んでいると鼻の粘膜が傷つきやすくなり、IgE抗体の生産を増加することが証明されています。

また、アスファルト上に舞う花粉が土に還れずにビル風や車に何度も巻き上げられ、私たちがその花粉を何度も吸い込むことになり、悪循環に陥っています。
花粉症とアレルギー
 
花粉症だけに注目しがちですが、それ以外の病気も深刻であり、花粉症はそれらの中に相対的に存在する一つの病気だということを認識することも必要です。
主な症状として、連発するくしゃみ、多量の鼻水・鼻詰まり、目の痒み・充血・流涙などがあり、日常生活に支障を来すほどに症状が酷いケースも稀ではありません。
「くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・目の痒み」は花粉症の4大症状といわれます。

かふん-しょう【花粉症】ある種の花粉を吸入するためにおきるアレルギー性炎症。
鼻炎・くしゃみ・喘息(ぜんそく)・結膜炎などを伴う。
原因として春のスギ・ヒノキ、初夏のオオアワガエリ、秋のブタクサ・ヨモギなどの花粉が知られている。
枯草熱。
アレルギー性鼻炎。

アレルギー性鼻炎は季節性と通年性に分けられ、季節性のものを花粉症といいます。
花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)のアレルゲンはスギ、ヒノキ、ブタクサ、ヨモギ、シラカバなどです。
これらの花粉は1年中ないので季節性といいます。

一方、通年性は慢性鼻炎と呼ばれ、アレルゲンは季節とは関係のないダニ、ハウスダスト、動物などが挙げられます。
他にはペットの毛やカビの胞子など、多種に及びます。
花粉は日本だけではない
 
花粉症は万国共通です。
スギ花粉症は日本だけのものでしたが、最近では中国でもスギ花粉症患者が発見されました。
また、花粉症の原因となる植物は国や地域によって違います。

花粉症が花粉症として認知されたのは1800年代のはじめのイギリスです。
牧草にするために枯れ草を扱う農夫の間で、くしゃみ、鼻水、発熱などの症状が頻発し、これを総称して「hey fefer=枯草熱」と呼ばれ、草に付いた花粉が原因だということが分かりました。

そしてそのイギリスをはじめヨーロッパ各地、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド・・・各国で花粉症患者が急増しており、イギリスでは国民の10%が、アメリカでは10~20%が花粉症といわれています。

花粉症患者が増える訳
原因は大きく分けて2つあります。

1.戦後の復興のために成長の早いスギが全国各地で植樹されたことスギが伐採されて木材として使われていたときは良いのですが、その後、安価な輸入木材に押されて国内のスギが流通しなくなっていきました。
その結果スギ林が放ったらかしになり、花粉をつけてどんどん成長していきました。

2.大気汚染特にディーゼルエンジンから排気される粒子が、花粉症を発症する原因になることが分かっています。
ですから交通量の多い都心部に住む人は注意が必要です。
花粉症のためだけでなく、私たちは真剣に大気/環境汚染について考えていくことが必要です。
タバコの危険性

がんは、正常な細胞が何かのきっかけでがん細胞に変化し、それが異常増殖して起こる
病気です。
最近の遺伝子の研究から、人間はがん化させるがん遺伝子と、それを抑制する
がん抑制遺伝子をもっていることがわかってきました。

がん抑制遺伝子が欠損すると細胞のがん化が始まり、がん細胞の増殖に歯止めがきかなくなります。

肺がんもほかの多くのがんと同じように、さまざまな因子が関係して発症すると考えられています。
そのなかでも最も危険なのが呼吸に関する要因です。

まず私たちが日常吸っている空気には、自動車の排ガス、工場の煤煙などから排出される大気汚染物質が含まれています。
なかでもダイオキシンは最近話題になっている発がん物質です。

汚れた空気を長期間吸いつづけることは、がん発症のリスクを高めることになります。

同様にアスベストなどの有害な粉塵がでる作業に従事することも、発症の危険を高めます。

しかし、何と言っても一番の危険因子はタバコです。
タバコの煙の中には、20種類以上もの発がん物質が含まれているといわれています。
そのなかでも最も危険なのが、タバコのタールに含まれているベンツピレンとよばれている物質です。
これらの危険な物質を
日常的に体内に取り込んでいる喫煙者の肺がん発症率は、非喫煙者の4,5倍に上るといわれています。

男性のがんによる死亡者数が女性の約3倍にもなっているのは、男性に喫煙者が多いためです。

肺がんのなかでも、肺門部にがんが発生する人のほとんどがヘビースモーカーといわれる
喫煙指数が400を超える人たちです。
喫煙指数は、1日の平均的な喫煙本数と年数を
掛けることで算出します。

タバコとの密接な関連が明らかになっているのは、扁平上皮がんと小細胞がんです。

喫煙者は非喫煙者に比べ5~10倍もがんになりやすいという報告もあるほどです。

また、食生活とのかかわりも指摘されています。
動物性脂肪、加工食品、塩分の多い食品、焦げた肉や魚などは、発がんを促す食品として知られています。

さらに、家族が肺がんにかかったことのある人に発がんの危険性は高いとされています。
かぜに似た症状に注意

肺がんは早期発見すれば高い確率で治るがんであるにもかかわらず、治りにくいがんの
代表のようにいわれています。
それは、肺がんのなかでも約半分を占める腺がんには、ほとんど自覚症状がないため、早期発見が難しいからです。

一方、肺門部は非常に敏感なところで、ここにがんが発症すると、小さなものでも血痰やしつこい咳が出ます。
かぜの症状と似ているため、肺がんとは思わず、発見が遅れるケースが多くあるようです。
肺がん予備軍ともいえるヘビースモーカーの人たちは、慢性気管支炎であることが少なくありません。
そのため、咳や痰といった症状に日ごろから慣れていることも、発見を遅らせている原因の一つとなっています。

肺がんが進行すると、胸や背中の痛み、呼吸困難、発熱、しわがれ声などの症状が
出るようになります。
それは、がんがある程度大きくなると、肺門部や肺を破って肋骨まで広がって行くからです。
肺がんのほかの症状としては、関節痛、吐気、めまい、頭痛、
脱力感などがあります。

末期の肺がん患者にみられる症状で、がんが脳などに転移していることが原因といわれています。

また、首や腕の血管が浮き出るようになることもあります。
上大静脈閉塞症状といって、
静脈が気管周辺の腫瘍やリンパ節転移などで圧迫されるからです。

肺がんによってホルモンのバランスが崩れると、男性の胸が膨らんできたり、首の付け根のリンパ節が腫れ、指の先が太鼓のバチのように膨らむなどの症状が現れるケースもあります。

もし、かぜのような症状が1ヶ月以上も続くようなら、精密検査を受けましょう。

これらの症状が出てから検査を受けても中心型肺がんであれば早期に発見できますが、末梢型肺がんではすでに進行して手術できる状態ではないことが大半です。


ですから症状がなくても1年に1~2回定期的に検診を受けることが早期発見につながります。
煙を吸う機会も減らす
配偶者からの受動喫煙でたばこを吸わない女性の肺がん(腺がん)リスクが上昇するというものです。
また、配偶者の喫煙本数が20本以上の場合には、20本以下と比べて肺腺がんの発症リスクが高いこともわかりました。
さらに、たばこを吸わない女性の肺腺がんのうち、37%は配偶者からの受動喫煙がなければかからずにすんだということになります。
これらのことをふまえて、今回の報告では、「現時点で肺がんの予防に最も有効なのは喫煙をしないことですが、他人のたばこの煙を吸う機会もできるだけ避けるのが望ましい」と結論づけています。
紙巻きタバコには、吸い口にはフィルターがついていますが、喫煙者は、そのフィルターを介してタバコの煙を吸います。
タバコの吸い殻を見ると、フィルターの真ん中は茶色く変色していますが、色々な物質がそこでトラップされているわけです。
しかし、タバコの先から立ち上る煙は、それらも一切合切含んでいます。
喫煙者がタバコを吸った後、それらを自分から少し遠いところにおくことは、無意識のうちにそういった危険性を含んでいることを感じているからかもしれません。
「タバコは肺がんの原因になる」という注意書きが、タバコのパッケージにも書かれるようになってきました。
しかし、肺がんだけではありません。
意外に知られていないのですが、タバコは、その他色々ながんの原因になるのです。
がんになる患者さんが年々増えている日本は、残念ながら、先進諸国の中でも比較的喫煙率が高い国です。
多くの喫煙者にとって、禁煙はがん予防の第一歩になるとも言えるのです。
肺がんの化学療法
抗がん剤は一般的には手術や放射線療法と併用されます。
しかし、転移が早く手術による治療効果があまり望めない小細胞がんには、積極的に用いられます。

現在、約70種類以上の抗がん剤が使われており、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質などに分類されます。

これらのなかから、がん細胞の増殖サイクルや薬理作用を考慮しながら、数種の抗がん剤を組み合わせて用いられます。

進行した肺がんの場合、前もって強力な化学療法を行い、がんを小さくしてから手術を行うこともよくあるそうです。

抗がん剤には副作用があることはよく知られています。
投与し始めると吐気や嘔吐が起こり、1週間くらいたつと白血球や赤血球、血小板の減少がみられます。
口内炎や脱毛などの症状が出ることもあります。
最近では、副作用を抑える薬が開発されており、
以前に比べて症状は軽くなっています。

免疫療法や温熱療法
体内のがんに対する抵抗力を高める治療法を免疫療法といいます。
最も多く用いられるのが、OK432というがんの成長を抑制する物質です。
免疫療法は、以前は手術や化学療法の補助的な手段でしかありませんでした。
しかし、最近はⅠ期のがんの手術後に投与すると再発率が下がるという効果が認められています。
ただし進行がんでは、それほど高い効果は期待できません。

がん細胞が熱に弱いという性質を利用した治療法です。
大別すると2種類があります。

一つはマイクロ波などの超音波で患部に直接加熱する局所温熱療法です。

もう一つは体外で加熱した血液を再びからだに戻す全身温熱療法です。

いずれにしても単独で用いられることはなく、化学療法や放射線療法と併用されるのが
一般的です。
肺がんの内視鏡
早期がんの治療として、内視鏡を使った手術も行われています。
この内視鏡を使った手術は、大きく二つに分けられています。
一つは、気管支の表層にできた厚さ2~3mmほどのがんに対して行われる気管支鏡による治療で、さらに三つの方法に分類できます。

第1がフォト・ダイナミック・セラピー(PDT)と呼ばれる方法です。
これはフォトフリン(ヘマトポルフィリン誘導体)という物質が光に対して敏感に反応する性質を応用したものです。

フォトフリンはがん細胞にとり込まれやすく、同時に外部からの光に反応して活性酸素を出し、細胞を殺す作用があります。
PDT治療では、まずフォトフリンを静脈注射します。

2~3日たってこの物質ががん細胞に集まったころに、気管支鏡からエキシマレーザーを
照射します。
するとフォトフリンはがん細胞の中で化学変化を起して、がん細胞を破壊します。

第2は、放射線腔内照射療法です。
これは気管支鏡を使って、イリジウムやコバルトなどの放射性物質を体内に送り、体内から直接がんに照射する方法です。
からだの表面から
放射線を当てると、皮膚から患部までの健康な組織にも放射線障害が起こる可能性があるので、この方法は障害を少なくするために有効です。

第3は、Nd-YAGレーザー照射法とよばれる高温レーザーで、がん組織を焼き切る治療法です。

この方法は、がんとその周囲の健康な組織との境目がはっきりしない早期がんでは、あまり用いられません。
内視鏡を使ったもう一つの治療法は、末梢型で直径1cm以下のがんに対して行われる
胸腔鏡による治療です。
肋骨と肋骨の間に1cmほどの穴を3~4ヶ所あけて、そこから内視鏡やメスを入れて、モニターテレビで患部を観察しながらがん組織を切除するのです。

通常の肺がんの手術では、胸を大きく切り開きますが、この方法なら、手術後の痛みも少なく、機能障害もほとんどありません。
そのため、肺の機能が衰えている人や、高齢者に効果的な治療法とされています。

以上は比較的早期がんに対して行われる療法ですが、がんが進行している場合は、内視鏡を使って気管や気管支をふさいだがんを破壊して呼吸しやすくする療法もとられます。

この治療の目的は患者の生活を改善したり、維持したりすることです。
再びがんが増殖して気管をふさぐおそれのあるときは、気管の内腔を広げるステントという器具を気管内に挿入したり、がん組織にエタノールを注入する療法をとる場合もあります。
がん組織はエタノールに触れると脱水症状を起して死滅します。