同僚が点滴を詰めながら朝の回診前のナースステーションでお喋りしている。
葵は夜勤明けで、何となくぼーっとしながらそれを聞いていた。
もう15分もすると、澤田がやってくるに違いなかったけど、夜中忙しかった為、
カルテを修正する手を止めると、ぼ~っとしていまう。
-うんそうそう、で、週末だけ、来るらしいよ。
-何かねぇ、とても綺麗な人なんだってぇ...。
-へ~、だって、澤田先生って、もてそうだもんね。
-うん、あたしもさぁ、最初からいい男だって思ってたんだよぉ。
-でも、そんな綺麗な婚約者じゃぁ、勝ち目、ないね。
賑やかな笑い声がナースステーション全体に響いた。
-何でもね、中山美穂似で、しかも女医さんだから頭もいい!
葵は、中山美穂を想像しながら、何となく、沈んでいく自分の心が、
寝不足のせいなのか、何故なのだろう...と思いながらも、
澤田先生が私をスキーに誘ったのは、あくまでも社交辞令でしかなかったのだ、
と、首を振って、机の上に顔を伏せて溜息を吐いた。
お喋りが、トローリーの音と共に遠ざかっていくと
後ろから誰かに頭を突っつかれて、葵は素早く顔を上げた。
“眠っていたの?” 澤田だった。
そして、小さな紙切れを、葵の前で開いたままのカルテの上に置いた。