駐車場で澤田の車を降りる時、澤田が聞いた。
―明日の仕事は?
―明日は日勤です。
―じゃ、僕と一緒だね、
―あの、
―今日は楽しかったね、ありがとう。
―あ、あの、ありがとうございました。連れて行ってもらって。
澤田は、ふふっと笑うと、一瞬下を向き、顔を上げたのと同時に言った。
―葵ちゃん、うん、また、行こうっか?
葵は、思い切り笑顔を浮かべたが、自分でも驚くくらいの自然な笑顔だった。
―先生、また、行きたいです。
道には、もう数週間もこびりついた氷の上を薄っぺらく粉の雪が覆っている。
スタットレスを履いた澤田の車が、ゆっくり走り出すのを、葵はスキーを抱えて見ていた。
澤田の姿が四つ角に消えると同時に、職員駐車場に女性が2人入って来た。
遅日勤がおわったのだろう、看護婦に違いない。
スキー姿の葵を不思議そうに見ている。
葵の心がにわかに躍りだした。
秘密 という名の興奮を、初めてこの時感じてしまった。
