TYからGSX250Eに乗り換えて
族車ベースとなるバイクではあったけど
パラレルツインのいいとこなんかを
噛み締めながら日々を過ごしていた。
そんなところでこのストーリー。
【vs プレリュード】
この頃おれは、ガソリンスタンドでバイトしてた。
田舎の小さなスタンドで、19:00までで閉まる。
平日は学校終わってから、閉店まで
休みの日は、朝から閉店までのバイト。
その日もバイトで、確か土曜日だったかな?
いつも通りに19:00にスタンドのライトを落として
つり下げ式の給油ノズルを上げる。
入り口にチェーンを張って
その日のバイトも終わった。
家までは10㎞無いくらい。
とばさなくてもすぐ着く距離だ。
バイト先の先輩方に挨拶をして
バイクに跨がり帰路に就く。
気付くと前に一台の車。
ケツが丸くて、ロングノーズの
プレリュードだった。
色は確か、ワインレッド。
車間を詰めたつもりもない。
ハイビームで後ろに着いたわけでもない。
そんな状況で始まった。
まずはブレーキ。
明らかな嫌がらせだ。
おれ何かしたか?と思いながら
ここはこらえて後ろを走り続ける。
そこから蛇行を始めるプレリュード。
一カ所、道端にある商店の駐車場で
思いっ切り道路を外れた。
その隙に前にでる。
慌てて追走してくるプレリュード。
煽りのモードに入っていた。
たまらず、左によってブレーキング。
プレリュードを前に出す。
また前で蛇行し始める。
頭に来たおれは
中学校の頃に読んだ暴走族マンガばりに
ローリングしながら、コールを切って煽る。
蛇行はピタリと止んで
何もなかったように走り出す二台。
途中の橋を渡り切ったところで
おれは右に曲がる予定。
後ろで前のプレリュードの様子をうかがう。
ウィンカーを点けない。
プレリュードが直進だと踏んで
おくれ気味にウィンカーを出して右折。
これで、終わった。
…
と思った途端、
サイドを引いて、けたたましいスキール音と共に
向きを変えてくるプレリュード!
来やがった…!
ここまで来ると、おれでも走り方が変わった。
可能な限り速度を乗せる。
シフトアップもレッドゾーンギリギリまで引っ張って
尚且つスムーズなシフトチェンジを心がける。
シフトアップでクラッチは握らない。
いくら可能な限り速度を乗せると言っても
250ccのパラレルツインの限界は
たかが知れていて、せいぜい直線で140㎞/h。
でも、そんなに引っ張った状態は初めてだった。
加速では軽い分有利だが
最高速では及ばない。
細かい切り返しが多い道なら
もしかしたら、振り切る可能性はあったかも知れない。
いや、無かったかな…。
おれが選んだ道は直線が長く、コーナーも高速コーナーがほとんど
引き離せる訳がなかった。
途中一カ所だけある信号。
運が悪く赤。
停止する。
後ろで何かを叫ぶ声がする。
おれが悪いのか…?
すぐに青に変わる信号。
スタートダッシュはこちらが有利。
ここからの道は前半にコーナーが集中して
その先はほぼ直線。
死に物狂いで走った。
途中、ちょっと曲がり込んだ右コーナー
速度を殺せず、そのまま入る。
ここで、偏摩耗したリアタイヤがアウトに流れる。
でもそれは、徐々にというか、
少しずつ、クックッと逃げるような感覚。
探るように可能な限り速度を落とさず逃げる。
前半のコーナーは終わった。
あとはほぼ直線。
ある程度マージンを取っていたつもりでも
あっという間に詰まる車間。
このまま死ぬまで追われるんだろか?
そんな思いが頭をよぎる。
家はもうすぐそこなのに
家を覚えられては大変だと
いつもは曲がる交差点を直進する。
ほとんど絶望していた。
そんなときあることを思い出した。
まず、このバイクのフロントブレーキが
握ってもランプがつかなくなってしまっていること。
そして、この先に、友達の家に続く脇道があること。
さらに、車とバイクの重量差。
迷ってる暇は無かった。
出来るだけ左に寄って、
フロントのみのフルブレーキングを敢行する。
車速は確実に落ちてくれた。
ロックもしなかった。
急ブレーキに追従出来なかったプレリュードは
おれを避けて、大分前方で止まる。
すぐに友達のうちにつながる脇道へ入り
ライトを消して走った。
また脇道で友達の家に向かう。
物陰に隠れて様子を窺う。
プレリュードは登ってきたが
見つけられずに登ったり下ったり。
そのうち諦めて帰って行った。
あの感覚は今でも忘れない。
そして、意味もなく煽る車が大嫌いで、プレリュードは最高に嫌い。
とは言え、今となっては笑い話なんだけど(^。^;)
今でもたまに一人で走っていると
バイクに対する身勝手な嫌悪感を抱いているであろう車に会うことがある。
2輪と4輪。
ここにある蟠りを初めて経験した夜だった。