左のチャベスは何故、英雄になれなかったのか? | リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

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親友、同郷、同門・・・かってある時期を共通した事柄で共有した者同士の対決は観る者の情感を熱く揺さぶります。その対決は時に激しく、時に呆気なく、または噛み合わずに終わることもありますがリング外のサイド・ストーリーまで込みで考えるといろんな意味で印象に残る対決になります。
舞台が大きくなれば尚の事。
例えばカルロス・サラテとアルフォンソ・サモラのZボーイズ対決、バディ・マクガートとモーリス・ブロッカー、古くはモハメッド・アリとジミー・エリスもそうですね。そんななかでもフリオ・セサール・チャベスと対決したホセ・ルイス・ラミレスもまた忘れられなかったりします。
直接対決はWBAとWBCの統一戦として行われ、チャベスが11Rに負傷判定で勝利したのですがかっては同門だった両者のギクシャクした関係は修復されなかったと記憶してます。ノー・サイドとは行かなかったのは両者のその後の歩みで差が出てしまったこともあるでしょうか。




チャベスが後にメキシコの英雄足り得たのは試合におけるマチズモや圧倒的な強さの印象も去ることながら、基本的に取りこぼしが(ウィテカー戦まで:実質負けという意味で)無かったからでしょう。記憶に残る試合を続けながら圧倒的な戦績(対戦相手の質も含め)がファンの信頼感に繋がり、カリスマとして昇華したのではないかと思います。鉄の顎と言われた打たれ強さも去ることながら、独特のジグザグなステップで決して相手の正面に立たず、接近戦での細かいウィービングやブロッキングなどの防御も巧みでした。
他方、ラミレスはどうか?試合のエキサイティングさという点では劣らないものの、やや身体が堅く、打たれ強いもののダウンもたまには奪われたりします。右フック→左ストレートのコンビネーションは鉄板の強みはあったものの柔軟性に欠いてる感じを持ちました。
ウィテカーやカマチョなどのスピード・スターには相性も良くなかったものの、敗れたとはいえアルゲリョやオリバレス相手にはダウンを奪うなど健闘し、ロサリオ2などはダウンを挽回しての逆転KO劇。良くも悪くもムラがあったかなあと思います。そういえばコッジに負けた試合もコッジがアウト・ボクシングに徹していましたね。
とはいえ102勝(82KO)9敗というのは近代ボクシングにおいては驚異的な戦績。目立って派手な印象を残してませんが、実情を知れば凄い実績を残した選手です。もっと評価されてもいいのですが、同年代にチャベスが放っていた強烈な存在感に陰に追いやられてしまった感は拭えません。