お勧め度
1960年代のニューヨーク、ブロンクスにあるカトリック学校セント・ニコラス・スクール。
校長のシスター・アロイシスは、厳格な指導を信条に日々職務を遂行していた。
一方で、生徒達に人気があるフリン神父は、進歩的で開かれた教会を目指していた。
二人の間には、考え方に開きがあったのだ。
そんなある日、唯一の黒人生徒ドナルドと、神父の間に疑惑が持ち上がる!
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トニー賞とピュリッツァー賞に輝く舞台劇を映画化したものです。
人は確信が持てないときどうするか・・・ という主題に対して、
メリル・ストリープを初めとする出演者が見事に心の変化、葛藤を表現しています。
人間の本質の一つを見事についた脚本と、素晴らしい演技。
非常に重厚な作品です。 映画好きの方、是非、ご覧ください。
人間が生きてゆく中で、必ず感じる 疑惑 という感情。
確信をもてるだけの証拠はないが、疑惑という闇は、心の中で広がってきます。
そして、自分の中で広がり続けた疑惑は、いつの間にか間違った行動へと繋がる・・・
こんなことって、人間としていきている以上、いろいろあると思います。
この作品では、カトリック学校の校長が、まさに、その疑惑の闇に翻弄されます。
崇高な人であるはずの校長でさえ、人間なんです。
疑惑の闇に犯されてしまったら、自分自身を止めることはできません。
まさに、人間の本質的な部分といえると思います。
先日紹介した書籍 「悩む力 」 の中に、今の人間は、自由を与えられているが上に、
逆に、悩みが多くなってしまっている、という記述がありました。
宗教や慣習に縛られていれば、物事の判断は、宗教や慣習の判断に頼ればいいからです。
判断することを全て自分でしなければならないから、今の人間は悩むんですよね。
この作品に出てくる校長は、自分の宗教観と異なる神父に悩みます。
なぜならば、神父が与えてくれる宗教観への判断を要求されるからです。
そして、彼女は、宗教観への判断ではなく、悩み自体を無くす方向へと動き始めます。
疑惑という闇に、自分の悩みの解決策を求め、間違った方向に進む・・・
この時点で、聖職者ではなく、ただの人間なんですよね。
この映画、人間の心理を見事に捕らえていると思います。
また、校長役のメリル・ストリープ、神父のフィリップ・シーモア・ホフマン、
新米教師のエイミー・アダムス、そして、黒人生徒の母親ヴィオラ・デイヴィスらの
名演技がさらに、映画のスケールを大きくします。
校長と神父のシーン、校長と母親のシーンなど、素晴らしいですよ!
映画 『ダウト/あるカトリック学校で』 のサイトは、こちら
監督 : ジョン・パトリック・シャンリー
脚本 : ジョン・パトリック・シャンリー
出演 : メリル・ストリープ / フィリップ・シーモア・ホフマン / エイミー・アダムス
/ ヴィオラ・デイヴィス