前回書いた、朝と夜に少しずつやるために作った問題。

 

その中で私は、
間違いが少ない問題、つまり「できる問題」をあえて少し多めに入れていた。
 

普通に考えたら、苦手なところをたくさんやるよね。

できないところを見つけて、そこを何度も練習して、できるようにする。
 

苦手をいっぱいやらなければいけないことは当然
わかってた。
 

でも、この頃の息子を見ていて、私はそれより
先にどうにかしたいことがあった。
 

第二話でも書いたけど、息子は少し難しそうな問題を見ると、

「わからない」

で止まってしまう。
 

考えてみたけどわからない、じゃなくて

考える前に「わからない」。
 

「もう少し考えてみたら?」

「…………。」

「じゃあ、どこがわからない?」

「…………。」
 

このやり取りを何度したことか。

これがまあ、当時の私は本当にイライラした。

 

いや、まだ何も考えてないじゃん。
 

問題を読んで、考えて、それでもわからなかったなら全然いい。

でも、そこまでいかない。
 

最初から「できない」と決めてしまっているように見えた。
 

だったら、苦手な問題をたくさん並べて「さあやろうか」とやるよりも、
まずは

考えたらちゃんと解ける経験を増やした方がいいんじゃないか

と思った。

どうにかして、自信をつけさせたい。

 

そこで、毎日の問題には難しいものや新しい分野は少し、
息子が一度できている問題や、
少し考えれば解けそうな問題を多めに入れるようにした。
 

すると「できた」が増えてきた。

昨日もできた。

今日もできた。

前にやった問題も覚えてた。

 

もちろん、その中には間違える問題もある。

でも、全部が「わからない」ではない。
 

自分で考えれば解ける問題がちゃんとある。
 

まずは、それを本人に感じてもらいたかった。
 

別に「すごい!天才!」と褒めまくりたかったわけじゃなくて

私が欲しかったのは、

「これならできるかも」

と思って、問題に向かうこと。
 

息子の場合、
「わからない」と言って思考を止めてしまうところから始まっている。

 

だったらまず、

考える → 解ける → できた

この経験を積ませる。
 

それを繰り返していけば、
「とりあえず考えてみるか」になっていくんじゃないかと思った。


 

だから茶トラ家では、できない問題をひたすら潰すより、
あえて「できる問題」をたくさん解かせることにした。
 

成功体験を積ませて、まずは考えることをやめないようにする。

これが、第四話で書いた「少ない問題を毎日やる」ことの、
もうひとつの狙いだった。

 

そしてこの頃から、私は少しずつ、

「何を勉強させるか」だけじゃなく、「どうしたらこの子が考えられるか」

を考えるようになっていった。

 

前回、
5項目くらい進んだところで最初に戻ってみたら、
見事に忘れていた息子。
 

ここでようやく、
一周目を全部終わらせてから二周目に戻るんじゃ遅いことに気づいた。
 

じゃあ、どうする?

新しいところは進めたい。

でも、前にやったところにも戻りたい。

ただでさえ時間がないのに、
毎日がっつり復習までしていたら、それこそ先に進まない。
 

そこで考えたのが、

「先に進ませることより、忘れないための工夫」
ということだった。


 

とりあえず、気づいた時点で1項目目から5項目目まで進んでいたので、
その中から一番難易度の低い問題を1問ずつやらせてみることにした。

 

計算なら計算を1問。
分数をやったなら分数を1問。
割合をやったなら割合を1問。
 

そして、間違いが少なかったものは、あえて少し多めに入れた。
 

茶トラ家の場合は、苦手なところをたくさんやらせるのではなくて逆。

できる問題を少し多めにした。
 

これには、忘れさせないこととは別に、もうひとつ理由があった。
 

一度にたくさんやるのではなく、
前にやったことを毎日少しずつ解いていく方向にシフトチェンジ。
 

でもね、毎回テキストを開いて
「今日はどこをやらせよう」と問題を探すのも面倒くさい。
 

そこで使い始めたのが、

AI。ChatGPT。

 

その時までに勉強した範囲を画像で取り込んで、
「この範囲から問題を作って」
とお願いして、毎日やるための問題を作ってもらうことにした。
 

実際に使っていたのが、こんな感じ。


 

これを朝と夜、毎回ChatGPTに作ってもらってやらせることにした。
 

最初はとにかく少量から。
がっつり勉強するわけではなく、時間にしたら15〜20分くらい。
 

そして定着してきたかなと思うタイミングで
夜は新しい単元を進めつつ、それまでにやった範囲も必ず少し入れる。

少しずーーーつ増やしていく。
 

こうすると、新しい単元を止めなくても、前にやったことに毎日触れられる。


 

この頃から私の中で、勉強の進め方に対する考え方が少し変わった。
 

それまでは、テキストが何ページ進んだとか、
何項目終わったとか、どうしても
「どこまで進んだか」ばかりを気にしていた。

 

でも、いくら先へ進んでも忘れてしまったら、また最初からやり直しになる。
 

だったら、やみくもに進めるだけじゃなくて、
「忘れさせない」ことが最も重要。

 

一回にやる量は少なくても、毎日触れる。

たくさんやることよりも、覚えたことをちゃんと残していくこと。

 

こうして我が家では、先へ進む勉強とは別に、
朝と夜に少しだけ前の範囲に戻るやり方が始まった。

 

そして、この「少ない量を毎日やる」という方法。

実は、忘れさせないこと以外にも、息子にはもうひとつ大きな意味があった。


 


第2話で書いた通り、
この頃の私は「まずは受験に必要な範囲をとりあえず一周終わらせる」
ことを優先していた。

わからない問題は教えて、理解できたら次へ。
 

そんなやり方で5項目くらい進んだ頃、
ふと最初にやったところに戻ってみることにした。
 

「忘れてないか確認しとこうか。今日ここやってみて」
 

一度やってるし、全部できなくてもそこそこできるようになってるだろう

思っていたら、
 

あれ? 忘れてる。
 

本人も見覚えはある。 でも解き方が出てこない。
 

もしくは、前とまったく同じところで、まったく同じミス。
 

あーーーー。

また、すっかり忘れてるじゃん。
 

いや、当たり前なんだけどね。

人間なんだから、一回やったことを全部覚えていられるわけがない。

そんなことはもちろん知ってる。
 

でも当時の私は、「受験範囲をとりあえず早く終わらせなきゃ」
という気持ちが強すぎて、テキストを進めることばかり考えていた。

 

5項目進めば、
5項目分できることが増えているような気になっていた。


 

でも実際には、新しいことをどんどん入れている間にも、
最初にやったことは普通に抜けていく。
 

じゃあ、ひとつの単元を完璧にしてから次へ進めばいいのかというと、
それも現実的じゃない。

とにかく時間が足りない。
 

ただでさえスタートが遅いのに、
ひとつずつ完璧になるまで待っていたら、いつまでたっても先に進めない。
 

ここでまた新しい壁にぶつかってしまった…


 

進まなきゃいけない。 でも、戻らなきゃいけない。
 

ここでようやく、
私が思っていた「まず一周終わらせる」というやり方ではダメなんだと気づいた。
 

一周目を全部終えてから二周目に戻るんじゃ遅い。
 

先へ進みながら、前にやったところにも戻る必要がある。

まぁね、考えてみればものすごく当たり前のことなんだけど、
実際に息子が忘れているのを目の前にして、ようやくその意味がわかった。

 

さて次の問題は、

どうやって「進む」と「戻る」を両方やるか。

 

厳しすぎる現実、偏差値30。
それを受け入れた2026年4月。

さて、ここからどうする?

まずは勉強しなきゃ始まらない。
ということで、息子と一緒に問題に向き合う日々が始まった。
塾にも入り、受験対策用のテキストをもらって早速取りかかった。

そして、わりとすぐに気づいた。

なんかこの子、考えようとしてなくない?

少し難しそうな問題が出てくると「わからない」。
「もう少し考えてみたら?」と言っても、

「…………。」

じゃあ、どこがわからないの?

「…………。」

どこがわからないのかも、わからないらしい。
そもそも黙っちゃって答えない。
思考が止まってる感じ。

最初は、考えるのが面倒なだけなのかなと思った。

でも見ていると、どうもそれだけじゃない。
問題文の意味がわからないのか、解き方がわからないのか、
そもそも何を聞かれているのかわからないのか。

本人の中では、その全部がひっくるめて、
「わからない。」
になっているように見えた。

しかも、やっかいなのは最初からわからないと決めつけてる感じ。

考えてみたけどわからない、ではなくて、
考える前に「わからない」っていってる。

そこにかなりイライラする毎日。
早速大きな壁が立ちはだかりました。



………… 問題、山積み。


とはいえ、この時の私は、
「まずは受験に必要な範囲を終わらせなきゃ」
という焦りの方が大きかった。
 

5年生までほとんど勉強してこなかった分、やらなきゃいけないことはたくさんある。

時間もない。
 

だったら、とにかく進めるしかない。
 

わからなければ教える。 理解できたら次へ進む。

そんな感じで、塾のテキストを使いながら、
ひたすら問題を解いて先へ進む日々が続いた。
 

「考えようとしない」ことは、教えるたびに気になっていた。
 

でも、それをどうにかすることよりも、一問でも多く解いて、
少しでも先に進ませることを優先していた。
 

受験に必要な範囲を、とりあえず終わらせることが正しいと思ってた。
 

だってよく言うじゃん。

テキストは2周、3周した方がいいって。
 

だったら、まず1周目を終わらせなきゃ。

 

やればやっただけページは進む。

終わった単元も増えていく。
 

この時の私は
「進んでいる」ことで安心してた…



 


息子が「中学受験したい」と言い出したのは、5年生の終わりだった。

それまでの生活は、ほぼミニバス三昧の日々。
 

頭の中は、

バスケ。
バスケ。
バスケ。

とにかくバスケ。
 

じゃあ勉強は?というと。

問題を見て、ちょっと難しそうだと思った瞬間、
 

考えることをやめる。
 

分からない。
やりたくない。
できない。
わかろうとしない。
 

勉強のことになると、とにかく消極的になる子だった。
 

 

そんな息子がある日、言った。

「中学受験したい」
 

理由は、

強い中学でバスケがしたいから。
いきたい学校がある。

 

なるほど。

バスケか。

そこはブレないのね。

へぇ。

中学受験ね。

…………今から?



 

中学受験といえば、小3、小4くらいから塾に通って、何年もかけて準備するもの。

というのが、当時の私のイメージだった。
 

でも、本人がやりたいと言うなら、やってみよう。

そんな感じで、我が家の中学受験が始まった。

 

そして迎えた2026年4月の模試。

偏差値30。

 

うん。

知ってた。
 

だって今までちゃんと勉強してないもん。

もちろん分かってた。
 

最初からそんな簡単にいくわけないって。
 

でも、

「分かっている」のと
「数字で突きつけられる」のは、全然違った。



残高少ないの分かってるのに、
ATMで残高照会して改めて絶望する感じ。


偏差値30かーーーー
きっついなーーーー



こうして、
我が家の中学受験の火蓋は切って落とされた。


さて。

ここから、どうする?