第2話で書いた通り、
この頃の私は「まずは受験に必要な範囲をとりあえず一周終わらせる」
ことを優先していた。

わからない問題は教えて、理解できたら次へ。
 

そんなやり方で5項目くらい進んだ頃、
ふと最初にやったところに戻ってみることにした。
 

「忘れてないか確認しとこうか。今日ここやってみて」
 

一度やってるし、全部できなくてもそこそこできるようになってるだろう

思っていたら、
 

あれ? 忘れてる。
 

本人も見覚えはある。 でも解き方が出てこない。
 

もしくは、前とまったく同じところで、まったく同じミス。
 

あーーーー。

また、すっかり忘れてるじゃん。
 

いや、当たり前なんだけどね。

人間なんだから、一回やったことを全部覚えていられるわけがない。

そんなことはもちろん知ってる。
 

でも当時の私は、「受験範囲をとりあえず早く終わらせなきゃ」
という気持ちが強すぎて、テキストを進めることばかり考えていた。

 

5項目進めば、
5項目分できることが増えているような気になっていた。


 

でも実際には、新しいことをどんどん入れている間にも、
最初にやったことは普通に抜けていく。
 

じゃあ、ひとつの単元を完璧にしてから次へ進めばいいのかというと、
それも現実的じゃない。

とにかく時間が足りない。
 

ただでさえスタートが遅いのに、
ひとつずつ完璧になるまで待っていたら、いつまでたっても先に進めない。
 

ここでまた新しい壁にぶつかってしまった…


 

進まなきゃいけない。 でも、戻らなきゃいけない。
 

ここでようやく、
私が思っていた「まず一周終わらせる」というやり方ではダメなんだと気づいた。
 

一周目を全部終えてから二周目に戻るんじゃ遅い。
 

先へ進みながら、前にやったところにも戻る必要がある。

まぁね、考えてみればものすごく当たり前のことなんだけど、
実際に息子が忘れているのを目の前にして、ようやくその意味がわかった。

 

さて次の問題は、

どうやって「進む」と「戻る」を両方やるか。

 

厳しすぎる現実、偏差値30。
それを受け入れた2026年4月。

さて、ここからどうする?

まずは勉強しなきゃ始まらない。
ということで、息子と一緒に問題に向き合う日々が始まった。
塾にも入り、受験対策用のテキストをもらって早速取りかかった。

そして、わりとすぐに気づいた。

なんかこの子、考えようとしてなくない?

少し難しそうな問題が出てくると「わからない」。
「もう少し考えてみたら?」と言っても、

「…………。」

じゃあ、どこがわからないの?

「…………。」

どこがわからないのかも、わからないらしい。
そもそも黙っちゃって答えない。
思考が止まってる感じ。

最初は、考えるのが面倒なだけなのかなと思った。

でも見ていると、どうもそれだけじゃない。
問題文の意味がわからないのか、解き方がわからないのか、
そもそも何を聞かれているのかわからないのか。

本人の中では、その全部がひっくるめて、
「わからない。」
になっているように見えた。

しかも、やっかいなのは最初からわからないと決めつけてる感じ。

考えてみたけどわからない、ではなくて、
考える前に「わからない」っていってる。

そこにかなりイライラする毎日。
早速大きな壁が立ちはだかりました。



………… 問題、山積み。


とはいえ、この時の私は、
「まずは受験に必要な範囲を終わらせなきゃ」
という焦りの方が大きかった。
 

5年生までほとんど勉強してこなかった分、やらなきゃいけないことはたくさんある。

時間もない。
 

だったら、とにかく進めるしかない。
 

わからなければ教える。 理解できたら次へ進む。

そんな感じで、塾のテキストを使いながら、
ひたすら問題を解いて先へ進む日々が続いた。
 

「考えようとしない」ことは、教えるたびに気になっていた。
 

でも、それをどうにかすることよりも、一問でも多く解いて、
少しでも先に進ませることを優先していた。
 

受験に必要な範囲を、とりあえず終わらせることが正しいと思ってた。
 

だってよく言うじゃん。

テキストは2周、3周した方がいいって。
 

だったら、まず1周目を終わらせなきゃ。

 

やればやっただけページは進む。

終わった単元も増えていく。
 

この時の私は
「進んでいる」ことで安心してた…



 


息子が「中学受験したい」と言い出したのは、5年生の終わりだった。

それまでの生活は、ほぼミニバス三昧の日々。
 

頭の中は、

バスケ。
バスケ。
バスケ。

とにかくバスケ。
 

じゃあ勉強は?というと。

問題を見て、ちょっと難しそうだと思った瞬間、
 

考えることをやめる。
 

分からない。
やりたくない。
できない。
わかろうとしない。
 

勉強のことになると、とにかく消極的になる子だった。
 

 

そんな息子がある日、言った。

「中学受験したい」
 

理由は、

強い中学でバスケがしたいから。
いきたい学校がある。

 

なるほど。

バスケか。

そこはブレないのね。

へぇ。

中学受験ね。

…………今から?



 

中学受験といえば、小3、小4くらいから塾に通って、何年もかけて準備するもの。

というのが、当時の私のイメージだった。
 

でも、本人がやりたいと言うなら、やってみよう。

そんな感じで、我が家の中学受験が始まった。

 

そして迎えた2026年4月の模試。

偏差値30。

 

うん。

知ってた。
 

だって今までちゃんと勉強してないもん。

もちろん分かってた。
 

最初からそんな簡単にいくわけないって。
 

でも、

「分かっている」のと
「数字で突きつけられる」のは、全然違った。



残高少ないの分かってるのに、
ATMで残高照会して改めて絶望する感じ。


偏差値30かーーーー
きっついなーーーー



こうして、
我が家の中学受験の火蓋は切って落とされた。


さて。

ここから、どうする?