こうも会話がないのに、なぜ飽きないのか。
私がそろそろ飽きていた。
「いい音楽には浸れるけど、家に着くと嫌な副作用があるし…」
何となく…毎日送ってもらっていたが
イマイチ不穏な空気をどこか残している彼に
ほんの少しだけ危険を感じ、いつもの昼休憩中の彼に
こう告げた。
「今日からはいいや。冷たい風に当たっても
一人で考え事しながら歩きたいし。」
表情一つ変えずに、彼は返事をした。
「ふーん。わかった。」
何だか肩が凝りそうな、腑に落ちない思いが残った。
でもこれで、やっと前みたいに自分のペースで帰ることができる。
仕事に専念した。
目の前で作業をするおばさんに言った。
「今日から一人で帰るの。」
おばさんはこう返事した。
「あんたが夜道一人で歩く方がよっぽど安心だわ(笑)」
好きな音楽をipodで聞きながら、こっそりと歌い出す。
寒さの厳しい2月の空の下、清々しい解放感が戻った。
変なテンションだった。
15分ほど歩いた頃、隣の道路が見えた。
彼の車が信号待ちをしていた。
知らないふりをした。
音楽の音量を上げた。
信号が青に変わると同時に
感情的なエンジン音が響いた。
「怒ってるのか??はぁ??まさかねぇ」
そんな気にさえなった。
始まる前に、
そのことを思い出すことができれば、
どんな妖しい空気に呑まれても、
あんな結末になることなんて容易に想像がついたのに…と
今更ながら思う。