私が4室持っている分譲マンションが、大きな駅のすぐそばと言う事もあり、賃料がリーズナブルと言う事もあり、いつもほぼ全員が生活保護受給者の入居者さんです。
このマンションの生活保護受給者の想い出は数知れず…
忘れられない生活保護入居者さん Aさん
75歳 男性
身よりなし
以前に脳梗塞を患っており、半身が不自由、杖歩行可能
生活保護受給者は、生活保護課の担当者から、付き合いのある賃貸仲介会社に連絡があり、入居になる事が多いです。
そして、ご存知の方も多いかと思いますが、賃料が相場よりも高く、その地域の管轄する役所が認めるMAXの賃料と、敷金・礼金が取れます。
今回の場合は、利回り25%となりました。
そして、家賃は税金から出ているので、もし滞納をした場合、貸主が役所に滞納している事実を報告し、また、実際に請求をしても滞納している状況が続けば、受給者は保護費の支給をストップされてしまいます。
ですので、保証会社にも入っている上に、滞納すると保護費が支給されない事から、言ってみれば優良入居者とも言える訳です。
Aさんは自分でATMで振込に行けないので、毎月集金に伺います。
お伺いすると、いつも壁を伝って歩いているのでしょう。壁紙は真っ黒。
悪臭がします。
でも、「まあ、上がっていってください」と言って下さいます^^;
顔は笑顔にしつつ、いえいえ玄関先で結構ですよ。と集金。
いつもしわくちゃになったお札を渡してくれます。
Aさんにとっては、本当に大切な貴重なお金。
ありがたい気持ちで受け取ります。
そんなAさん、入居時より仲介業者さんに食べ物をおねだりし、カップメンなどを差し入れてもらっていました。そして、断られると、私の方に電話をしてきます。
……朝の6時30分 家の電話が鳴ります
「あのあのあのあのあのあのあの Aですけどね…
〇〇会社の〇〇が困ったやつで…」
別の日は、又もや朝の6時30分
「あのあのあのあのあのね、Aですけどね。銭湯に行っていたら金を盗まれて、今日食べる飯もない 金をかしかしかし、貸してほしい」
呂律の回らない大きな声で訴えます。
この時は、役所の保護課と連絡を取りました
また別の日の決まって朝の6時30分^^;
「あのあのあの…夜中にピンポンを押して逃げるやつがいる!こんなの寝てられない」
このピンポンダッシュにはAさんも困っていた様で、私は管理会社と管理人に連絡。張り紙をしてもらうも効果なし。
結局、ドアの横のインターホンに、お弁当箱を加工して、誰も押せない様に、カバーを付けました。そして、ラミネートして、警告の用紙も貼りました
……どうやらピンポンダッシュもおさまった様です(^O^)
こんな困った(^_^;)やりとりが続き、私はいつしか集金の度に、手作りのお弁当を持っていく様になりました。
初めて持って行った時のAさんの嬉しそうな顔を言ったら、忘れられません。
その次に持って行った時は、少し目をうるませて、「おふくろの味を思い出した」と言ってくれました。
そんなAさんですが、隣都市に友人がおられるという事で、引っ越して行かれました。
退去後、部屋に行ってみると、インターホンに付けていたお弁当箱を加工したピンポンダッシュ用のカバーと注意書きが、部屋の中央に、それはそれは丁寧に並べられていました。
とても不器用な人だけど、室内はとても汚かったけど(原状回復費用も取れないけど)、私に感謝してくれている気持ちが、すごく伝わってきました。
そして、1か月後、このマンションの管理人さんから電話がかかってきました。
「〇〇号室のAさんですけどね、〇〇署から電話があって、交通事故にあって意識不明でもう亡くなりそうとの事ですわ。身よりの方とかご存知ないですか?」
引っ越しをしなければ、まだここに住んでいてくれたら、命を落とさずに済んだのに
とても切なくなりました
でも、Aさんのあのお弁当を受け取った時の嬉しそうな顔は忘れられず、今も時々思いだし、こうして書き出してみました
大家業は本当に人と人との関わり。
自主管理を通して、心を通い合わせる事が出来る、それは素敵な仕事だと思っています。