「日経メディカル」からの情報シェア 子宮癌に対するワクチン接種、正確には「子宮頸癌を引き起こすHPV(ヒトパピローマウイルス)に対する予防接種」の後に、重篤な神経障害が残る有害事象が副反応として報告され、予防接種が停止になったのは記憶に新しいと思います。 我々、免疫学領域を研究してきた臨床医は、きっとそれは『ADEM』(急性散在性脳脊髄炎)という自己免疫性の脳脊髄炎が起きたのだろうと考えました。
新たに開発されたワクチンですから、未知の免疫反応が起きて、ADEMのような特殊で稀な自己免疫性の脳神経障害が発生しても矛盾しないと考えたわけです。
あるいは、風邪を引いた後に立てなくなる『ギラン・バレー症候群』が発生しても不思議ではありません。 ところが、厚生労働省からも、各学会からも一向に『ADEM』も『ギラン・バレー症候群』が発生したという報告もなく、副反応そのものを認定する通達すらないまま今日まで至りました。 予防接種の対象が、自我が未熟な思春期から青年期にかけての少女だったことからも、最終的にサイコソーシャル(社会心理学的)な背景からの心身症であろうということで、医学界のコンセンサスが取れている状態です。
(さすがに「日経メディカル」の記者にはそこまで言及できていませんがw) つまり、子宮頸癌ワクチンの予防接種と、少女達に発生した神経障害とは全く因果関係がなく、マスコミが煽ることによって、固定観念的に因果関係がイメージづけられてしまった。
これによって、諸外国では既に「子宮頸癌ワクチン」が普及して、有意に予防効果を発揮しているのに、我が国は遙かに後れを取ってしまった、というのがここで提起されている問題点です。 僕は、2009年に最初のワクチンが発売された直後に、3回にわたってうちの愛❤ムスメに予防接種を行いました。 筋肉内に薬液を注入する瞬間は、「押されるような感じ」がしたと当時まだ中学生だったムスメが言っていました。
そしてもちろん、今日まで何も問題なく、医学徒として日々の研鑽に励んでいます。 こうした現状について、実際に子宮頸癌と悪戦苦闘している産婦人科医は危機感を抱いていますが、本当のところが分からないので、予防接種を再開して良いものかどうか判断がついていない、というのが本音の部分です。 子宮頸癌予防接種による有害事象を被った被害者団体まで出来ていますから、政府・厚生労働省も、各学会も大っぴらに「予防接種と神経障害との因果関係はありませんでした」と言いにくいというのが実際のところでしょう。 この論文は、マスコミの功罪を研究論文として国際社会に問題提起をしたという意味で、大変意義深いものと国内外から高く評価されています。 原因不明の神経障害に現在も苦しむ患者さんには本当にお気の毒ですが、 ここまで明確に「ワクチンと健康被害の因果関係が証明された例はない」と言い切られたケースも珍しい程です。 厚生労働省には「予防接種健康被害救済制度」があります(下記リンク参照)。
患者さんの補償の問題とは別に、子宮頸癌を明確に予防できる安全な予防接種があるのですから、その部分の啓蒙も厚生労働省や医療機関が積極的に取り組んでいかないと、数年後には、日本は子宮頸癌死亡率が世界でワーストいくつ… などという誹りを受けることにもなりかねません。
=== 以下記事抜粋引用 ===
【日経メディカル】 Clinical Infectious Disease誌から
新聞のネガティブ報道は健康政策に影響する ≪ 1本の記事がHPVワクチン定期接種中止のきっかけに ≫
日本におけるHPVワクチンに関する新聞報道の変化について分析した「帝京大学ちば総合医療センター」の津田健司氏らは、接種後に健康を害した1人の患者を紹介したセンセーショナルな1本の記事が、その後のネガティブな報道の基調を形成し、ワクチンと健康被害の因果関係が証明された例はないとする政府の発表後もその傾向は変化しなかったと報告した。詳細はClinical Infectious Disease誌電子版に2016年9月22日に掲載された。
日本では「Cervarix」と「Gardasil」という2種類のHPVワクチンがそれぞれ2009年と2011年に承認されており、2013年4月に、思春期の少女に対する定期接種が始まった。しかし2013年3月に、朝日新聞が、HPVワクチン接種後に歩行と計算が困難になった1人の女子中学生に関する記事を掲載して以来、同様の症例の報道が相次いだ。接種から症状発現までの時間はさまざまで、ワクチンとの因果関係は明らかではなかったが、ワクチンの安全性に対する国民の懸念は高まり、日本政府は2013年6月に、HPV ワクチンに関する積極的な接種勧奨を一時的に差し控えることにした。
著者らは、HPVワクチンに関する新聞記事の特徴を分析するために、国内の主要な5紙(朝日、毎日、読売、産経、日経)の記事を対象とする文献調査を行った。具体的には、日本最大の新聞記事データベースである日経テレコン21に登録されていた、2011年1月から2015年12月までに発表された「HPVワクチン」または「子宮頸癌ワクチン」に関する記事を選出し、内容について検討した
(統計学的な分析結果は割愛)
現時点では、国内の専門家のほとんどが、HPVワクチンの接種と、問題とされている有害事象の間に因果関係があることを示す証拠はないと結論している。しかし、一部の医師や研究者、被害者の家族などは、HPVワクチンが有害事象の原因であると非難している。
2016年3月、信州大学の池田修一氏は厚生労働科学研究の発表会で「子宮頸癌ワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究」と題された発表を行った。この研究は、マウスを用いた基礎研究や少数の臨床データから、ワクチン接種と脳損傷の関係を論じており、ピアレビューを受けたものではなかったにもかかわらず、ワクチンと有害事象の関係を示唆したとして、メディアは発表の内容を広く報道した。こうした否定的な報道は世論に影響を与えやすい。
過去の同様の事例として、Lancet誌の論文でMMRワクチンと自閉症の因果関係が疑われたことがある。英国ではサウスウェールズ・イブニングポスト誌の報道後に、ウェールズでのMMR接種率が減少した。しかし、現在ではMMRと自閉症の因果関係はないとされている(訳注:わが国ではMMRの接種率が減少した世代で、逆に自閉症の発生率が増加していた)。
世界の保健当局は、繰り返しHPVワクチンの安全性を主張している。また、16年4月には、日本小児科学会、日本産科婦人科学会、日本感染症学会、日本耳鼻科学会など、予防接種に関わりのある15の学術団体で構成される「予防接種推進専門協議会」が、HPVワクチンの接種勧奨の速やかな再開を求めた。しかし、こうした動きにメディアが注目することはほとんどない。
今回の分析は、センセーショナルな症例報告がその後の報道トーンを形成し得ること、当局が科学的な声明を出しても状況は変わらない可能性があることを明らかにした。著者らはワクチンの信用を取り戻すためには、政府が情報発信のイニシアチブを取り、学術団体が信頼の回復に努め、無過失責任の予防接種による健康被害補償制度を作り上げることが必要ではないかと提案している。 〔記事・出典〕
新聞のネガティブ報道は健康政策に影響する:日経メディカル
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201611/549007.html?n_cid=nbpnmo_twbn
#日経メディカル 〔原著・出典〕
Stanley A. Plotkin, Section Editor Kenji Tsuda, Kana Yamamoto, Claire Leppold, Tetsuya Tanimoto, Eiji Kusumi, Tsunehiko Komatsu, and Masahiro Kami. Trends of media coverage on human papillomavirus vaccination in Japanese newspapers. Clinical Infectious Disease, ePub 2016 Sep. 22
http://cid.oxfordjournals.org/content/early/2016/10/16/cid.ciw647 〔ADEMについて〕
国立感染症研究所のホームページより
http://www0.nih.go.jp/vir1/NVL/WhatADEM.htm 〔予防接種健康被害救済制度〕
厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou20/kenkouhigai_kyusai/