天才肌 高井息吹 | チャーリーのファボミュー

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このブログはチャーリーが聴いた音楽の中で「これは良い!」と思った作品やアーティストを書き留めています。勢いのある旬な音楽を好むため自ずと若手中心になっています。たまに映画についても書いています。

ぽっかりと時間が空いた5月4日、何かやってないかな?と探していてMusiclogist 2018を見つけて行ってきた。



東京都福生市の多摩川中央公園の河川敷広場で開催される恒例イベント。
長く東京に住んでいたが青梅線に乗ってもせいぜい昭島くらいまでしか行ったことがなく福生には用事も生まれて来ない。
近隣在住でなければ都心から見て福生は相当奥に感じられるので奥多摩散策などピクニック気分でもない限りわざわざ出向く場所ではない。
そんな福生の地元に根ざした極々ローカルなイベントだったが、これに足を向けさせたのはライブステージに高井息吹さんの名前を見つけたから。

なかなか観たいライブにスケジュールを合わせられない境遇ゆえ “どんな形でも気になるアーティストの演奏が聴けるのならいい” という藁をも掴む気持ちで赴いた、ちょっとオーバーかな(笑)





高井息吹
93年生まれ国立音大卒のピアノ弾き語りSSW。
2015年、Eveとして「yoru wo koeru」でデビュー、その後高井息吹に改名、ポカリスエットゼリー、マイナビ、東京建物、トヨタL&FなどのCM曲や映画挿入歌に抜擢、2016年夏にはバックバンド “眠る星座” を引き連れてサマソニ出演、2017年12月に2ndアルバム「世界の秘密」をリリース。




アンニュイなロリータヴォイスが特徴的だが、確かなピアノプレイもさることながら、クラシックを素養にジャズ・ロック・エレクトロ・ヒーリングなどを取り入れた高い音楽性と、声のイメージとはかけ離れた激しいヴォーカルパフォーマンスが異彩を放っている。


で、Musiclogist


ウィングカーの荷台とスタンドスピーカー4発だけの小規模なステージに電子ピアノを置いただけの弾き語りスタイル。
面白いことに電源がプリウスからの供給、何ともエコなイベントだこと。
ゲリラ豪雨の天気予報もあったが何とか雨は耐え忍び、雲行きが怪しくなりながら暮れなずむ19時前にライブスタートした。



“ワン・ツー・スリー、ワン・ツー・スリー” と左足で大きくカウントを入れて始まる「雨雫のワルツ」から、風が吹いて肌寒い野外にまるでオレンジ色のナトリウム灯が照らし出したような包み込む暖かさを感じた。そんなリラックスしたムードのまま「honey」へと続き、大空に向かって歌いたいと「青い夢」〜「ハローグッバイ」を披露、最後は福生に愛を込めてと言って「フィナーレ」で締めくくった。

息吹さんの演奏はピアノのミスタッチも多く歌の音程も不安定に揺らいでいるけれど、それらを凌駕してエモーショナルに迫ってくる凄みがあり、歌の揺らぎも独特な個性になっている。
ジャズ界の孤僧セロニアス・モンクは奇天烈なピアノが類を見ない強烈な個性となり天才と呼ばれたが、息吹さんも同様に天才的なアーティスト性を存分に発揮していると思う。
そして、作り出すメロディの美しさ、深い余韻を残す言葉などが、時に楽しく時に切なく胸に迫ってくる。
ラストに演奏された「フィナーレ」には胸の奥深くまで突き刺さってくるものがあり、知らず知らずのうちに涙が出るほど感動した。

たった26分間のステージだったが味わい深い内容に大変満足できた。
今度はどこかの箱で観たいものだ。


息吹さんの前には2年振りの “しなまゆ” も観ることができ、ちょっと遠かったけど観覧無料でゆったり観れたので得した気分で帰路に着けた。