第5話 壁の向こうの町

 

 タクヤとマユカが乗る電車は駅へ着いた。

「ここが終点か。」

「また新しい壁がある。」

 電車からは、遠くに壁が見える。高さは高く、左右に長く伸びている。まっすぐに伸びている。電車の扉は開いた。2人は駅から歩く。

「まず、手前に壁があった。右にも壁があった。そして、どうやら奥にも壁があるみたい。」

「壁は3つあるのか。」

「多分この辺りの地域は、4つの壁で正方形に囲われている。」

「正方形って決まってるの?」

「その方が自然。」

「手前の壁は、左はどこまで続いてるかわからんし、奥の壁も、どこまで続いてるかわからん。だから、長方形に囲われてるかもわからんのちゃうん?」

「確かに。今までに見た3つの壁も、見た限りまっすぐに伸びていても、途中で曲がってるって可能性もあるし。」

「4つ目の壁があるかどうかもわからん。台形に囲われてるって可能性もあるし、もっといっぱい壁があるかもわからん。電車でも時間かかるって事は、壁の中の地域はかなり広いはず。」

 

 天では。コウスケはコウタに言った。

「地上では何があった?」

「ぼくらは有名人になるために天へ来た。でも多分、地上に住んでる人の中にも、それなりに有名人がいる。」

「コウタは地上で何を見たん?」

「映画を撮影するトコがあった。多分地上でも映画を撮影してる人がいてる。」

「地上にはいろんな人いるわ。天へ帰って来る直前辺り、壁の中の町を探検してる人も見た。」

「ぼくも見た。」

「コウタが天へ帰って来たんって、ついさっきじゃない?ぼくは天へ帰って来てしばらくたつけど。」

「それじゃぁぼくが見たんは別の人かな。ぼくは確かに、ついさっきまで地上にいたし。」

 コウタは部屋を出て、廊下を歩く。別の部屋に行くと、本棚がある。映画のパンフレットが並んでいる。1冊開いた。

「この役者、天に住んでる人かな、地上に住んでる人かな。映画つくった人も、天の人かな、地上の人かな。映画の上映は、天でも地上でもやってたし。」

 パンフレットの後ろのページを開いた。

「映画つくったトコの事務所はどこかって事、どこに書いてるかわからん。」

 コウタはパンフレットを本棚に戻した。部屋を出て再び廊下を歩く。元いた部屋からコウスケが出てきた。コウタはコウスケに言った。

「もう帰んの?」

「まだ何かあった?」

「今度地上へ行く時は、何について調べようかな。」

「天での生活ってどんなんだろうって考えてる人、地上にいた。」

「逆にぼくらは、地上の生活の事をどこまで知ってるんかな。」

「確かに。天で生活してるぼくらが想像してるのと、実際の地上での生活は、全然違うかもわからん。」

「今度地上へ行ったら、地上の人たちはどんな生活してるかって事、調べよかなって思う。」

 

 地上では。タクヤとマユカは、壁の中の町にいる。

「壁の中の町へ来て、けっこう時間たつけど、未だに謎が多い町。」

「長い間すごすのも楽な町って事はわかった。昔の地上だったら、ホテルの予約をとるんが苦労する事もあったし。」

 タクヤとマユカが今いる所には、ピアノが置かれている。向こうからコウタとコウスケが来た。コウスケはコウタに言った。

「ここのピアノ、弾いてる人しょっちゅういるんかな。」

「別にガラガラな町じゃないんやし。少なくとも時々はいるんじゃない?」

 コウスケはピアノを弾いた。それを聞いてマユカはタクヤに言った。

「この曲、昔の地上で、聞いた事あるかもわからん。似た別の曲かもわからんけど。」

 コウタとコウスケはピアノの場所を去って行く。タクヤはマユカに言った。

「さっきの2人、どこから来たんやろ。さっきの2人が来た方へ行ってみない?」

 コウタとコウスケが来た方向へ、タクヤとマユカは歩いた。

 

 壁の外の地域では。(もう1人の)タクヤがスーパーで買い物をしている。商品が並んでいる棚が並んでいて、そこを歩いている。そこにはコウタとコウスケがいた。

「コウスケ。」

「またバーベキューでもすんの?」

「別にそうでもない。天へ帰ってなかったん?」

「いったん天へ帰ったけど、また来た。」

「何買いに来たん?」

「ここへ来る前にピアノ弾いてたけど、楽譜ほしいって思って、ノートでも売ってないかなって思って来た。」

「持ってないん?」

「天から地上へ来る時、持って来んかったから。」

 

 壁の中の町では、タクヤとマユカは店にいる。食べ物が売られている。豆腐も売られている。普通の豆腐と比べて、形は少し独特である。次に2人は飲食店へ行った。料理が出てきた。おかずの中には豆腐があった。果実もある。

「この豆腐、さっきの店に売ってたのと形一緒。」

「この果実、どこで収穫してるんかな。」

 隣の席にいた人が言った。

「川の両側に木があって、そこに、これとおんなじ果実がある。」

「川ってどこの?」

「近くまで送る。果実は収穫しても、またすぐにできてる。しょっちゅうできてる。」

 タクヤとマユカは町を歩いている。飲食店で隣にいた人も一緒である。