「4月1日から東京がロックダウンされる」――。3月下旬からSNS上で、新型コロナウイルスに関する偽ニュースがまことしやかに拡散した。
出所も真偽も不明なまま爆発的に広がり、実体経済に混乱をもたらすケースもあった。
日本は法治国家ですから、都市を封鎖するにしても根拠となる法律が必要なはずです。3月14日に施行された「新型コロナウイルス対策特別措置法」をもとに、何ができるのかを厚生労働省と内閣官房の担当者に聞いた。
Q)ロックダウンは法律で定義されているか?
A)特措法には、「ロックダウン」という言葉はどこにも書かれていない。ロックダウンは抽象的な概念で、明確な定義はない。ロックダウン的なことをするにしても、まずは政府が「緊急事態宣言」を出すことが前提になる。
Q)緊急事態宣言が出たら、外出禁止は強制できるか?
A)特措法では外出禁止は強制はできない。45条では、外出自粛を要請できると書かれている。あくまで要請です。
【第45条】「都道府県知事は、(略)生活の維持に必要な場合を除き、みだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないこと、その他の感染の防止に必要な協力を要請することができる」
Q)フランス、イタリア、イギリスなどでは法律で厳しい外出禁止の措置をとり、違反者には罰金が科される。日本での、外出した際の罰則は?
A)守らなくても罰則はない。
Q)外出自粛と、緊急事態宣言後の外出自粛はどう違うか?
A)どちらも要請で、差異はない。先週末の自粛要請は東京都が運用でやっているだけ。法律に基づくものではない。ただ、宣言後は法律に基づく要請になるので「守らないとまずいかな」と国民の意識が変わるかもしれない。政府が宣言することで、いわば箔がつくということ。
Q)では、イベントは強制的に中止できるか?
3月22日、さいたまスーパーアリーナでの「K-1」イベント。埼玉県知事が要請したにもかかわらず開かれました。
A)イベントについては、45条2項で対応。知事がまず「要請」し、それでも応じない場合は「指示」ができる。指示には罰則はないが、公権力を背景とした指示は事実上の強制力を持つと考えられる。さらに指示を行ったら、事業者名などを知事がホームページなどに「公表」することになる。
Q)学校の休校は?
A)これも45条2項が根拠で、休校を要請または指示できるようになる。県立高校は県が所管しているので知事の判断で休校できる。私立学校や市町村立の中学校は、知事が休校を要請し応じない場合には指示できるが、罰則規定はない。
Q)店舗を閉めてもらうことは出来るか?
A)45条2項では「多数の者が利用する施設」は使用制限や停止を要請できる。「多数の者が利用する施設」は政令で定められ、主なものは以下の通り。
劇場、映画館、演芸場、展示場、百貨店、スーパーマーケット、ホテル、旅館、体育館、ボーリング場、博物館、美術館、図書館、キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホール、理髪店、質屋、自動車教習所、学習塾など。
ただし、スーパーマーケットのうち、食品、医薬品、衛生用品、燃料など生活必需品の売り場は営業を続けることができる。
Q)民間企業を強制的に休業させることはできるか?
A)直接的な規定はまい。民間の経済活動を止めることは法律のどこにも書かれていない。根拠になるとすれば、45条の外出自粛要請。外に出られない以上、出勤できず休みにする企業もある一方、テレワークはまったく問題がない。
Q)企業の活動休止や、イベント中止の場合の損失補償は?
A)特措法には直接の規定はない。そもそも強制的に店舗を閉めたり、イベント中止を命じることができない。(治療に当たった医師などが死亡した場合、遺族に損害を補償する)
中小・小規模事業者は「補償がなければ、休みには踏み切れない。死活問題だ」と補償を求める声が上がっている。政府は「損失を税金で補填するのは難しい」として直接補償には慎重なスタンス。
ただ追加の経済対策として、売り上げが大幅に減少し事業継続・存続の危機に直面している中小企業などに対し、新たな助成金制度を設けることを検討している。
Q)東京と行き来する鉄道やバスなど公共交通機関を止めることはできるか?
A)都市封鎖するために公共交通機関を止めることは法律に書かれていない。20条と24条には、総理大臣や都道府県知事は、鉄道会社などの「指定公共機関」と総合調整を行うことができると書かれている。これはストップさせるというよりも逆で、感染が拡大した際でも公共機関の職員は働かなければいけないので、最低限は交通機関を動かしてくださいというもの。鉄道などを止めることは想定していない。
Q)道路は封鎖できるのか?
A)特措法では道路封鎖の規定はない。一般論として、都道府県知事が管理する県道などを規制することは可能だが、特措法に基づき封鎖する権限はない。
一方感染症法33条では、感染した場所が十分に消毒できていない場合、そこに人が集まらないよう72時間以内で局所的に閉鎖したり、そこに向かう交通手段を遮断したりできる。ただし、それは消毒のためで、広域的に人の動きを止めるために使える条文ではない。
Q)ほかにも、緊急事態宣言が出ると行政が強制的に出来ることはあるか?
A)都道府県知事は、臨時の医療施設をつくるために必要がある場合は、土地や建物を所有者の同意を得ないで使用できる(49条2項)。これは「即時強制」といって強制力がある。
「断れない…」効果
仮に緊急事態宣言が出ても、外出自粛は「要請」ベースで強制力はなく、これまでの自粛要請とほとんど変わらない。
また、特措法だけでは交通機関は止められず、企業活動も制限できない。休校やイベント自粛、施設の使用制限も基本は「要請」と「指示」で、街に出歩いても罰則を科すことはできない。
つまり今の特措法では、海外のような「ロックダウン」はできない。
仕事に飽きた夢太郎