とても怖い先生がいた
部活の顧問でもあったが
当時は30歳そこそこだったと思うが
体格もよく声も大きくて
怒ると
睨みつけるような目で声が低くなるので
わたしは震えるような恐怖を感じていた

あるとき
体育祭の出場種目を決める際
クラスの運動神経のいい男の子何人かが
理由は忘れたが
みんなが期待していたリレーには出ないと
かたくなに言い
(タイムで選ぶのではなく立候補制だった)
彼らは普通の50m走を選んだ
そのときはわたしも含め
クラスのみんなもそれなりに
がっかりしたと思うが
何を選んでもそれぞれの自由だし
思春期の男の子だし
張り切ったら恥ずかしいとか
だりぃ、と斜に構えるのがかっこいいとか
今思えば彼らなりの
先生へのささやかな反抗だったのかもしれないが
それが先生の逆鱗に触れた





足が速いから
そっちに出ればリレーで上位が狙えるのに
何で50m走なんだ



みたいに口火を切り
(その時点でわたしは



な





心境だった
)

さらに静まり返った教室で
先生は彼らに向かって
『お前ら、オレににらまれたらこの中学で
やっていけないからな!!
覚えておけよ!!
』


とトドメの一言を残して
教室を出て行った…
(いや今なら考えられない爆弾発言なんだけど
25年前はさほど問題にもならず
)

わたしはこのとき間違いなく
背筋が凍った



今なら
「あ?
寝言は寝て言えジジィ
」と笑えるくらいの案件だが


当時純粋で
イタイケな女子中学生だったわたしには
ヘタに自分を出して大人に逆らうと
途方もなく怖い目に合う
と刻み込まれた

これは当時から
私に重くのしかかっていた実母の存在とも相まって
わりと最近まで尾を引いていたなぁ
偏った状況で
頭に血が昇った大人がたまたま発した言葉を
いつまでも握りしめていた

私を守ってくれていた価値観だけど
広くて優しい世界を知った今は
もういらないね

こんな
冷静に考えたら
「うっそーん
」となるような価値観を

まだ握りしめているかもしれない

顔を出すたびに
それってほんと??って疑ってみるのも
大事だね
