コロナ禍での自粛要請があった頃を思い出す。
あの頃は人々が自宅から出ないようになり、普段の町中には誰も歩いていない。閑散としてしまい「みんなどこへ行ったんだろうか?」というくらいだった。
これが自分にはたまらなく心地良かった。
誰もいない。
世界はこんなに静謐に満ちていたんだ。
ひきこもり気質の自分が社会的に認められた気分になった。
ただ小さい町の自営業者たちが次々に潰れていく姿には心を痛めたことを除いては。
あの頃は外出しちゃいけない空気があり、人との繋がりに飢えて孤独感に陥った人たちが次々に自◯した報道まであったが、自分には信じられないことだった。
「自◯してしまった人たちはこの世界が辛かったんだなぁ。自分はこんな世界がデフォルトになればいいと思っているのに。」
人は人それぞれだから仕方ない。
確かにコロナは終わりが見えなかったし、こんな世界がいつまで続くのか分からないと辛いかもしれない。
医療従事者に対しての差別だとか、小さいお子さんを抱えている親御さんへの差別もあったしな。
あぁ、そういえばリモートワークも上手くいきだして「実はそんなに出社しなくて良くね?」が正当化されたなぁ。オンライン飲み会も流行ったよな。あんまり上手くいかなかったところもあったみたいだけど、そこそこオンラインでやれちゃいますってところも分かったみたいだし良かったのかもしれない。
あれから数年が経ち、人類はコロナ前のライフスタイルに戻っているけど、一部はコロナ禍の名残もある。
医療機関では患者さんたちがマスクをつける姿が目につきがちだし、飲食店の入口には消毒用アルコールが慎ましく設置してある。
完全にコロナ前の世界に戻ると、ひきこもり気質の自分には生きづらい。コロナ禍の世界をもう一度欲しがっているが、戻れない。
なんとなく、マクドナルドに設置してある消毒用アルコールを眺めては過去の世界観に思いを馳せる。
また生きづらい世界に身を置くのは気持ちが悪い気もするが、大多数の選択した世界には逆らえないものだ。