脚本の長崎です。
今回は短編作品【名誉奉仕市民制度】について触れていきたいと思います。
私たちには人権があります。人権は人間の当然の権利だと思って私たちは生きています。私もそうですし、みなさんもそうですよね。人間は尊い。それは暗黙の了解として暮らしています。
この作品は、今の日本とは少し違う世界での物語です。
この作品の社会背景は現在の日本とそう変わりはありません。ただ、政府の力が少し強くて、【名誉奉仕市民制度】という法律が施行されているのです。
【名誉奉仕市民制度】とは、毎年、各都道府県から一人、【奉仕市民】を選出される制度のことです。抽選は完全にランダムで選ばれ、選ばれた候補者たちは指定された場所に集められ、候補者の中から名誉ある【奉仕市民】を選出します。
一言で言ってしまえば、【生贄】を選ぶ制度です。【奉仕市民】に選ばれた市民は人権を剥奪され、人体実験を主とした各種様々な奉仕を強いられるのです。
【名誉】も【奉仕】も綺麗な言葉です。ですが、選ばれた人の立場として考えると、【名誉】なんて関係ありませんよね。自分の人間としての尊厳が奪われるわけですから。
ひょっとしたら、自発的な志望者なら、誇りをもって最期の時まで、【名誉奉仕市民】としていられるのかもしれません。
しかし、ここにいる彼らは【名誉奉仕市民】になんてなりたくないのです。当然ですよね。だって、この記事を読んでいるあなたは【名誉奉仕市民】になりたいなんて……思いますか?
しかし、この【名誉奉仕市民制度】は一概に悪と言えるのでしょうか?
この制度によって、多くの新薬が生まれ、多くの人の命が実際に助かっています。【生贄】という文化は確かに野蛮的です。しかし、生贄を神に捧げることによって、共同体が一丸となり、困難に立ち向かった歴史は確かにあります。
近代においても【特攻隊】という存在があります。彼らは軍人なので、志願者ではありますが、その胸中を察すると、いろいろと考えられる話です。彼らはお国の為に命を捧げたのです。私たちは【特攻隊】を一言で悪いことだったと切り捨てる資格はあるのでしょうか?
私たちは過去の多くの犠牲者がいるから、今の文明の恩恵を受けている側面もあるのです。
肉を食べるには、動物を殺さないといけない世界に私たちは生きています。
【人の命の重さ】も社会背景によって変わってきます。
死ねと命じられたら、罪がなくても死ななければいけなかった国や時代が現実にあったのです。
私の友達の弁護士がこういうことを言っていました。
【人の命は重い、だから、死刑制度は考えないといけない。国家が国民の命を奪っていいわけなどないから】
しかし、今現在、日本は死刑を続けています。死刑だけではありません。政治とはある一定の層を切り捨てて、見捨てなければいけないのです。それはどの国でも変わりません。大統領選挙のアメリカ国民の反応を見ると、そのことがよくわかると思います。
私たちは多くの犠牲の上に成り立っている。
犠牲になった人たちは何を考えていたのだろう。
そういうことにも、世界中の人がちょっとだけでも思いを馳せられると、世界は今より少しだけ優しい形になるのかもしれませんね。
2016/08/21 に公開
「名誉奉仕市民制度」短編ドラマ(サスペンスドラマ・ショートフィルム・短編映画)視聴サイト【チャンネルガレージ】公開作品 / 公式サイトhttp://www.changare.com / 監督 中村英児 / 脚本 長崎邦彦 / 出演 : 中尾謙吾 / 荒井陽一 / 白石英和 / 岩本美智代 / 向 彩香 / 向 麻菜美 / 堀川早紀
企画・制作 / 映像演技ワークショップ アクトガレージ http://www.act-garage.com/
製作 / 映像制作ガレージ
http://www.garage-web.net/