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 53歳から始めた英語の勉強のことや、旅先での人々との触れ合いや身の回りのこまごましたことが書かれている。高齢の女性が読むにはいい本だろう。外も中も綺麗にできているから、自分もこんな旅の記録を残しておきたいと思う人には参考になるかもしれない。2006年3月初版。

 

 

【ポケットにジョークを】
 ひとり旅は切符を買うことからして大変である。
 シングル(片道)かリターン(往復)のどちらが得か、窓口で駅員さんに尋ねる。
「ひとりで来たんだけど、助けてくださる?」
「金貸す以外はね」
 目配せして答える駅員さん。きっとこれは、昔からの常套句的ジョークなのだろうが、日本のJRの窓口がそんなことを言ったらどんなことになるだろう。(p.59)
 日本の駅員さんには、とてもこんなジョークは言えないだろう。なんたって、日本は馬鹿にウルトラがつくほど真面目な国ですからね。つまりウンチ真面目。でも、関西なら居そうな気がする。
 下記は、著者が日本で英語を習っているときのこと。
 私が数十年にわたって英語を習ったG先生は、独身のイギリス紳士である。また、イギリス紳士がしばしばそうであるように、かなりの毒舌家でもあり、お得意の苦みの聞いたイングリッシュ・ジョークで、私をやりこめることもしばしばであった。
「エルサ、鞭を持っといで」
 先生は、ときどきそう言った。エルサというのは、先生の愛する雌猫の名である。彼女は、いつもレッスン中、空いた椅子にすわって、聴講していた。・・・中略・・・。
「ポケットにジョークを」とはイギリス紳士のたしなみというが、先生もかなりなものである。(p.82-83)
 面白いジョークというよりは、イケズ的なジョークが英国の本質なのだろう。
    《参照》   『イケズの構造』 入江敦彦 (新潮社)
              【英国人(シェイクスピア)と京都人】

 

 

【木の花の名前にくわしいこと】
 イギリスの人たちは、ほんとうに木の花の名前にくわしい。なんでも、イギリス紳士の条件のひとつに、花の名前を知っているというもあるらしい。(p.66)
    《参照》   『バトル・アビー こころの教育』 西浦みどり 廣済堂出版
              【花の名前を学ぶ】

 

 

【ノー・エクスキュース】
 この言葉には甘えを拒絶した響きがある。きびしい個人主義の国の匂いもある。
 しかしこの言葉で、私はサボるための弁解は決してしないと心に命じた。それが英語学習を長続きさせる、ひとつのコツとなっていった。(p.89)
 武士道的な生き方に馴染んでいる日本人なら言い訳などしない。騎士道的な文化に馴染んでいる英国人にとっても同様なのだろう。
 同じ日本人女性でも、ビジネスの世界できちんと学んできた人なら言い訳などしない。ところが、言い訳ばっかりしている人って、普通の女性の中には多いように思う。「言い訳=何も学んでいない証拠」である。
    《参照》   『ギブ&ギブンの発想』 佐々木かをり (ジャストシステム) 《前編》
              【言い訳】
    《参照》   『トヨタ流英語上達術』  スティーブ・モリヤマ (ソフトバンクパブリッシング) 《前編》<br>
              【謝る=言い訳する】

 

 

【ほめ上手、感謝上手】
 イギリスの人たちは、とにかくほめ上手、感謝上手である。びっくりするほど「サンキュウ」をよく使うのもそのひとつ。(p.94)
 この記述に次いで、その具体例が書かれているのだけれど、人に対するほめ上手、感謝上手は、確かにその場を心地よいものにするけれど、周りに誰もいなくたって、自分自身に向かってほめたりあらゆる物事に対して感謝する意識の使い方って、冴えた世界をつくるのに結構いい方法である。
    《参照》   『幸福論』 須藤元気 (ネコ・パブリッシング)
              【ありがとう】

 

 

【清川旅行社】
 2005年に入り、さすがに、すこしは自分の年齢を意識するようになった。
 私も84歳。今年行けば13回目のイギリスひとり旅、・・・中略・・・。
 しかし、一年休むと、自信も少し萎えてくる。・・・中略・・・。だいぶ錆びついてくる。私は6月から、三たび英語の個人レッスンを取った。先生は若きイギリス人女性だ。最初のレッスンの日、彼女は言った。
「だいぶ錆びついていますから、オイルが要ると思います」
「1カンもってきてくださいね」
 とにかく今年、イギリスに行こう。私は10月敢行と決め、例年のごとく、社長、社員は私ひとりの“清川旅行社”をゆっくりと始動した。(p.163-164)
 先に敢行することを決めてしまって、それに合わせて頑張る。これは人生を輝かせて生きる人の方法。頑張ってみてメドが立ったらスルというのは平凡すぎるし、大抵実現しない。
 著者のもっと凄い処は、出版社企画の旅以外は、みんな清川旅行社がスケジュールからホテルの予約まで全てを担当したらしいこと。  まだ今ほど、インターネットが活用されていない頃の事ですから、これって、ウルトラ凄いことです。
 ここまで自立して、ひとり旅をしてきたのは、何故だったのだろう。

 

 

【確信】
 旅を重ね、年齢を重ね、ひとつの旅にそれぞれ一冊の旅ノートも、いつかうず高く重なっていました。それを読み返しているうちに、ひとつの祝福すべき確信を、私は持ちました。
 私の人生は、イギリスひとり旅というすばらしい核を得て、育っていったという確信です。(p.206)
 イギリスひとり旅が、自分の人生を育てる“核”になっていたと言っている。
 何の目的も持たず、ただ日々を過ごしているだけの人は、著者のような、「敢行(観光ではない)すべきひとり旅」を「核」として、敢えて負荷が大きいが故にこそ、"魂がシャカリキに励起せざるをえない" ような人生を生きてみればいいのかもしれない。平凡な日々が続くと、本当に魂が萎えてしまう。

    《参照》   『賢者たちのメッセージ』 光田秀編著 (PHP) 《前編》
              【平穏な人生は、成長のない人生】

 

<了>