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 女性SE(システム・エンジニア)特有の記述がモットあるのかと思ったら、殆ど想像できる範囲内のことばかりだった。著者は正社員として働いていた方なので、現在IT系のプロジェクトで働いている女性契約社員さんたちは、必ずしも同じようには感じていないだろう。著者の年齢は書かれていないけれど、多分、現在45歳くらいの方。大卒後からエンジニア生活を始めた12年間の経験が元になっているらしい。2004年8月初版。

 

 

【報告書は結論が先】
 システムの開発の仕事にも、いろいろ文章を書く機会があります。
「初めに、結論」
 これは新人のころに、よく注意されました。(p.46)
 英語表現のように結論が先にあった方が分かりやすく、仕事はサクサク進む。システム開発は、曖昧さが許容できない仕事だから、文学小説のように比喩的であるとか含蓄を含むとか複雑な言い回しとかいった表現はあり得ない。IT業界には、読書好きな人が少なくないけれど、好みと仕事は別。
 IT系の思考法に馴染んでしまうと、打ち合わせの場でユーザー(顧客)から要件を聞き取る時に、結構イライラするようになってしまう。普通の日本人(日本語)って、本当に寄り道が得意である。

 

 

【勉強会】
 E主任。フレッシュな気分で彼が提案したことは、グループの勉強会。・・・中略・・・。しかし、・・・中略・・・私には、準備が大変で正直負担だった。一生懸命やったところで、なかなか活発な質疑応答にならないので、やる気も失せる。
 グループのみんなも同じ思いだったようで、そのうち集まりが悪くなり、有名無実化していった。
 ところが少しして、今度は、「勉強会をどうするか」を話し合う会なるものが設けられるという。・・・中略・・・。
 最終的に「勉強会について話し合う会」でわかったことは
「勉強は、個人でやったほうがいい」
ということだった。  (p.89)
 これって、どこでも経験しているだろうし、同じ結論に達しているだろう。
 わざわざ勉強会のために割く時間があるなら、同じ時間を個人学習に当てた方が数倍効率よく学べる。
 新しいテクニックがあったら、実装されたソースコードのその部分をメールでメンバー全員に流せばそれで済むことである。
 勉強会なんて、公務員のようにすることがない暇な人々や、開発現場を離れた管理者側の人々が発想することである。

 

 

【「変化に強くなろう」】
 「来月からAプロジェクトを担当してもらいます」
と配置異動を言い渡され、準備を始めていたら、
「Aプロジェクトは予算が縮小されたので、Bプロジェクトに行ってください」
とアッサリ変更されたことがある。
 このときばかりは、納得できず、思わず
「結局、私らは、どうでもいいんですか? 人数合わせなんですか? ただの駒ってことですか?」
と食いついた。
「変化に強くなろう」 (p.108-109)
 「変化に強くなろう」は、技術的な進化が非常に速いIT業界では、言わずもがなのセンテンスであるけれど、人事に関して有無を言わさぬ管理者側の “決めゼリフ” としても使える。
 ブンブン息巻いて怒る私を見据えて、上司が言う。
「オマエ、つくづく文句が多くなったなぁ」
「変化に強くなろう」 (p.110)
 返す刀としても使える。
 (派遣社員や契約社員がこんなこと言ったら、次回の契約更新はなくなる・・・かも)

 

 

【エンジニア=PCの達人?】
 「エンジニア=PCの達人」という感覚の人からすると、まずワード、エクセルの基本ソフトがあって、そのあと興味を持った人がマニアックなコンピュータの裏方に、と段階的に学んでいくものだということらしい。
 しかし今でこそワード、エクセルは標準的ツールになったが、ウインドウズが導入されたのだって、私がエンジニアになってからのことだ。
 だからろくに集中して学んだこともないまま、不自由せずにここまで来てしまった。
 ワードは書類を作るための文書作成の機能しか使わないし、エクセルなんて業務の進捗とバグの発生を表とグラフにまとめられれば、それで足りてしまう。
 毎日仕事でデータの管理やら集計やらをやっている事務のOLさんのほうが絶対に高度な機能を使いこなしていると思う。
 こういうことは同年代のエンジニアには珍しいことではない。だから私だけではないのだ。(p.138)
 チャンちゃんも、ユーザーさんがエクセルで作ってくれた業務内容の資料に、マクロがふんだんに使われていて面食らったことがある。思わず「こんなに、凝ったことをされても・・・」という感じだった。
 システム開発の最終成果物であるコーディングは、即ち単文化みたいなものだから、中間成果物で用いられるワードやエクセルで複雑なテクニックを駆使する必要などないのである。だからたいして出来ない。それが普通。

 

 

【IT業界は男女平等か】
 SE、プログラマ、エンジニア。この手の職業には、本人の実力次第でバリバリと活躍できるというイメージがある。だから、女性にもどんどん大きな仕事を任せますよ、というわけだ。
 私もそう思っていた。だからこの世界に入った。
 実際に業界に入って数年働いてみたくらいで、なんかおかしい・・・、とうすうす気がつきはじめた。(p.187)

 IT業界といえど、まだまだ男女平等ではない。
 というか、IT業界全体が女性の活躍を妨げなかったとしても、直属の上司がこういう女性観を持っていたとするならば、私のキャリアプランは「全部パア」ではないか。(p.188)
 「女性は愛嬌」と思っている男性は今でも多いだろう。
 このような平均的な男性が上司であったり、会社の経営陣のほとんどであるなら、
 愛嬌、癒しのプロとして「いかに周りの人を和ませたか」を評価基準に、職能給にも反映させてほしい。もちろん昇進のラインにもだ。
 スマイルを一回いくらでカウントして換算してもらっても構わない。
 ちなみに肩書は「円滑事業部長」だ。
 男女で待遇が違うなら、はじめからそういう職種で募集しろー!!

 IT業界は「言(I)ったことと、ち(T)がうじゃん」の略ではありません (p.189)
 今時、正社員女性でこんなふうに思っている、日本文化オンチ人間は意外に多いらしい。
 どの業界にだって、男女平等に関する意識の壁は存在している。
 純然たる能力評価基準でキャリアを活かしたいなら、外資系企業に就職すればいいのである。日本IBMとか。
 日系企業に就職していながらブツクサ言っても無駄。
 愛嬌ひとつで幸せに生きている女性を「羨ましい」と思っている“男ども”は沢山いるのである。

 

 

    《参照》   『成功は一日で捨て去れ』 柳井正 (新潮社) 《後編》
              【日本人女性独特の就業観】
    《参照》   日本文化に関する疑問と回答
              【日本人女性の生き方に関する疑問】
    《参照》   『神の仕組みから宇宙の仕組みへ』 佐田靖治 (光泉堂)
              【仕組みを成就する女の課題】

 

 

                                   <了>