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 古書買い置きの書架から、この薄っぺらな本を取り出して読んでみた。下記リンクのなかに、「人類は本来、地球の“庭師”としてやって来た」という記述があったから、この本が目にとまったのだろう。
    《参照》   『宇宙の羅針盤 (上)』 辻麻里子 (ナテュラルスピリット) 《後編》
              【裸足と履物】

 この小説は、ノンフィクション(実話)ではないらしいけれど、そんなことはどうでもいい。「明日地球が終わるとしたらどうするか?」と問われたら、「それでも、私は、木を植える」と答えるのは、地球人として正しい生き方である。

 

 

【風の音】
 その日は明るい陽光が降り注ぐ6月の晴れた日でしたが、このさえぎるもの一つない土地の上空には、風が耐え難いほどに吹き荒れていました。家々の残骸を吹き過ぎる風の音は、あたかも食事の邪魔をされたライオンの唸り声のように聞こえました。(p.15)
 樹木がなくなり人家もなくなった荒んだ土地に吹き荒れる風の様子を記述したものだけれど、その音を喩えるのに「ライオンの唸り声」と表現されているのが印象に残ったので書き出しておいた。
 小説に現れる比喩は、作者が住む地域の生活環境から生れ出るものだけれど、作者の出身地であるフランス、プロバンス地方にライオンがいたのだろうか。そうでないなら、フランスの植民地であったアフリカの様子を伝えた書物などを読んでいたことで、このような比喩を思いついたのだろう。

 

 

【木を植えた男】
 聞くと、55歳だと彼はいいました。エルゼアール・ブッフィエという名前でした。かつては平野部に農場を持って生活していたのですが、一人息子を失い、続いて奥さんも亡くして、この誰もいない土地に引きこもって羊と犬を相手に気ままな暮らしをすることにしたのだそうです。この土地は木がないために死にかかっている、と彼は考えました。そこで自分はとくに急いでやらねばならない仕事も無いので、この困った状態をなんとか修復してみようと決心したのだといいました。(p.39)
 小屋から12キロほど離れた地点にブナの木を植えようとしているところでした。75歳になっていた彼は、その場所まで通う手間を省くために、植樹の予定地に石小屋を建てることを計画し、翌年完成しました。(p.59)
 日本には禿山の高地なんてないけど、こんな土地があるなら、この老人のような暮らしをしてみたいと思っている人は決して少なくないだろう。
 のどかで規則的な労働、生気に満ちた高地の空気、質素な暮らし、そして何よりも魂の平安が、この老人に、彼を知る人に畏敬の念を抱かせるほどの健康を恵んだのです。彼は神の遣わした選手の一人でした。(p.65)

 

 

【樫・ブナ・樺】
 男はそこで鉄棒で地面に穴を開け始めました。その穴にどんぐりを一つ一つ埋め込んでは、また土をかぶせます。樫の木を植えていたのです。そこは彼の所有地なのかと尋ねましたが、答えは否でした。誰の土地かと言うことさえ、彼は知らなかったのです。(p.35)
 彼は樫の木を育てることだけでなく、今ではブナの木立を再生しようと研究していて、自分の住む小屋の近くに実生のブナの苗床をこしらえてありました。苗木はとても美しく、羊たちが食べてしまわないように針金の柵で囲われていました、彼はさらに、谷間にカバの木を植えることも考えていました。彼の言うところによると、その谷間には地表から数メートルほど下にいくらか水分があるのだそうです。(p.41)
 樫の木は、ウイスキーなどの樽材として oak(オーク)と耳にすることはあるから知っていたけれど、ブナや樺って英語で何というのか知らなかった。ブナは、beech (ビーチ)。樺の木は 、birch(バーチ) 。
 だったら、ブーチやボーチってあるかとタコで暇人のチャンちゃんは思って調べたけれど、なかった。

 

 

【再び、風の音】
 空気までもが違いました。絶えず私に吹き付けていたとげとげしい乾いた風に代わって、芳香に満ちた柔らかいそよ風が吹いていました。山並みから水音のような響きが聞こえてきました。林を吹き抜ける風の音でした。(p.75)
 植樹前の風の音を「食事の邪魔をされたライオンの唸り声」と例えるなら、植樹後の風の音を、何かいかした喩えで表現すればいいのに、こんな記述どまり。
 まあ、「満腹のライオンの寝息のような風」と表現するわけにもいかないだろうし・・・。

 

 

【『木を植えた男』の動画】
 YouTubeに対訳の動画がある。
 英語版にもいくつかあるらしい。この本の底本は、アメリカの非営利団体 Friends of Nature 版となっているけれど、動画の英語は違っている。
   《参照》   【字幕:対訳】 木を植えた男 【1/3】   【2/3】    【3/3】

 

 

【解説に書かれていること】
 今地球の未来に向けて自然の生態系保存の重要性が強く叫ばれていますが、彼は自身の生活体験を通して動植物と人間との豊かな共存の必要、即ち地球が元気を回復し人や動物を生き生きとさせるためには、森林の再生が不可欠であることを実感し、そしてそれを成し遂げられるのは、神によって力を与えられた人間の手のみであると考えていたのだと思われます。 (p.89)
 ごもっともな記述であるけれど、この本が書かれたのはおよそ1世紀前で、まだ木炭が主要なエネルギー源だった時代である。
 現在の地球人は、未だに建材として木材を乱伐しているけれど、環境問題としては、もう10年以上前から、惑星地球としてのバランスを完全に失ってしまっている。
    《参照》   『ついに実現した地下存在との対話』 ダイアン・ロビンス (徳間書店) 《中編》
              【木材の使用】  【環境テロ】
              【再定義も崩壊している地球の自己調整システム】

 日本のメディは、現在の世界中の異常気象のほんの一部しか伝えていないけれど、インターネットでは、いろんな人々が、それらの実態を伝えてくれている。例えば、浅川嘉富さんの HP(最下部に掲載されている「真相追及レポート」) などがそれである。
 どれほど暗澹としてしまう状況であっても、基調としては、地球は光の側に向かっているのだということを理解しておきましょう。
 地球温暖化その他の真相については、バカバカしいと思うことなく、下記リンクの内容を必ず全部読んでおきましょう。氷に覆われている南極大陸は、いずれ、その大地の全貌を陽に晒すようになるのです。
    《参照》   アシュター・・・2014年5月28日 ETが地球に来てから既に長い時間が経過している


 

 <了>