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 木造家屋に特化した 『TM3の思想』 実現書籍。 家屋内空間を、部屋ごとに固定的な壁で仕切るのではなく、家族構成が変わっても末永く有効活用できる大空間の家を選びましょう、という内容の書籍である。

 

 

【「壁量規定」という木造住宅ルール】
 大空間の家を作りたくても、現在は、家の大きさ(総床面積)に対して「壁をたくさん作らないといけない」というルールがあるらしい。
 大正12年の関東大震災以降、日本の住宅は大きな地震が来るたびに壁の量を増やし続けてきました。そして、壁の量が多い家ほど地震に強く安心できるという考え方に縛られてしまったのです。(p.4)
 この考え方に縛られている限り、広いフロアーの木造住宅は作れないことになる。
 日本の住宅に三角屋根の屋根裏部屋がないのも、このルール(壁量規定)に関わっているという。つまり、屋根裏部屋を居住空間にすると、その重さを支えるためにさらに壁を増やさなければならない。

 

 

【「壁量規定」は、「構造計算」によって導きだされたものではない】
 大学で教えなくても、難しい強度計算が分からなくても、誰でも造れるということで、木造住宅は壁の枚数で構造強度が決められてきたわけです。この「壁量規定」を「構造計算」と勘違いして、説明している住宅会社が多いのです。(p.19)
 大工さんの経験知によって作られていた段階では、「構造力学」や「材料力学」が未発達であり、材質によって強度が異なる木材による住宅の耐震性を詳細に評価することはできなかった。故に、「構造計算」によらない「壁量規定」が作られていたということらしい。

 

 

【「構造計算」が可能な、新しい木の家づくり】
 現在は技術が進歩したことによって、木造でも構造計算が可能になっているという。
 それを可能にしたのが、2つの技術革新。
 木は、その強度が曖昧のままに使われていたのです。これを解決したのが強度を一定の数値に規定できる「集成材」だったのです。・・・中略・・・。このように、構造に使う材料、すなわち木の強度が数値化できるようになった「集成材」の進歩が1つ目の革新でした。
 2つ目は材料をつなぎ合わせる技術の革新です。・・・中略・・・。第2の革新は、断面欠損の少ない材料を、同じ接合方法によって接合できる「金物」が開発されたことです。(p.42-43)
 均一強度の製品として作成可能な「集成材」によって、構造計算がしやすくなった。
 また、従来の接合は、接合部を削って組み合わせていたけれど、この方法では断面を削る部分(断面欠損)が大きくなり、材料の強度低下を引き起こしていた。しかし、接合金物の開発により、木材の強度を維持した状態での接合が可能になった。
 この2つの革新によって、経験や勘にたよることなく、科学的な構造計算による木造住宅建設が可能になったということ。
 長野オリンピック記念会場としてスケート会場になった「エムウェイブ」が、大断面木造建築物の代表的な建物です。(p.42)
 木造住宅であっても「構造計算書」を提出すれば、「壁量規定」に外れていても、お役所は認可するようになっているということらしい。
 つまり、一般木造住宅でも、壁に仕切られることなく、大空間の住居が実現できる。
 間口も広く、天井も高く、空間も広い木造住宅の建築は可能なのだということ。
 このような住宅であれば、居住する人数(家族構成)によって、キャスター付きの可動壁を移動させるなどして、最適な空間利用が可能になる。また、これゆえに資産価値も下がることはないのだから、従来の「壁量規定」に則した住宅よりはるかに好まれるだろう。

 

 

<了>

 

 

  《住宅関連・参照》